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核心
2005.10.22
元米政府高官 異例の批判
靖国参拝 ナイ教授に聞く
小泉純一郎首相の靖国神社参拝が、中国、韓国などとの東アジア外交に波紋を広げている。首相の参拝は日本の国益にどんな影響を与えるか。米国きっての東アジア政策通、前政権で国防次官補も務めたジョセフ・ナイ米ハーバード大教授は、同盟国の首相の行為を「思慮に欠ける」と、異例の厳しさで批判した。日本などに非軍事的な影響力を期待する「ソフトパワー」理論の提唱者に、「靖国」で日本が払う代償の大きさを聞いた。(聞き手=米マサチューセッツ州ケンブリッジ・池尾伸一)
――小泉首相の靖国参拝の影響をどうみる。
「国際社会での日本の発言力、影響力を損なうことになる。このところ漫画や映画など日本の文化が欧米やアジアで人気を集め、日本経済も回復基調で、日本の魅力、つまりソフトパワーは増していた。しかし、中国や韓国、シンガポールの人々は首相の靖国参拝を戦前や戦中の(アジア侵略の)歴史を否定する行為と受け止めている。首相には参拝せざるをえない内政上の理由があったのかもしれないが、国際的影響力に与えるマイナスを無視したのは思慮に欠ける行為だ」
「米国は国連の最終的同意を得ないままイラクに侵攻したため、政策の正当性がなくなり、国際テロ組織アルカイダにとってはテロリストを募りやすい状況をつくってしまった。同様に日本も首相参拝の代償を支払うことになるだろう」
――代償とは。
「日本は国連安全保障理事会の常任理事国になろうとしている。だが、過去を否定しようとする日本の行動にいら立ちを感じる国があるなら、総会で反対票を投じるだろう。特に中国との関係改善は極めて重要だったが、中国は拒否権を発動するだろう」
――北朝鮮に核放棄を求める六カ国協議や日本人拉致問題への影響は。
「この点ではあまり影響はない。北朝鮮から譲歩を引き出せるかは同国に経済援助している中国の圧力がカギ。中国は六カ国協議で仲介役を果たしているが、これは日本などに協力するというより『隣国の北朝鮮の核で中国自身の安全保障が脅かされる』との観点からだ。今回の靖国問題で北朝鮮に対する中国の行動が変わるとは思えない」
――今年は戦後六十年。同じく敗戦国となったドイツと日本で「戦後処理」にはどんな違いがあるか。
「ドイツは隣国を侵略した歴史を受け入れ、フランスやポーランドに謝罪し和解した。そして、欧州は欧州連合(EU)をつくることに成功し、ドイツもその中で大きな役割を果たしている」
「一方、日本も将来のためには本来、アジアの地域的枠組みを主導すべき立場にある。だが、政治家たちが戦争時代の過去と正面から向き合うことを避けているため、他のアジア各国と完全に和解し切れておらず、うまくいっていない。十二月に初めてマレーシアで開催される東アジア首脳会議(サミット)でも日本は今回の靖国参拝によって影響力を発揮できない恐れがある」
――小泉首相と日本に何かアドバイスを。
「最近の漫画や映画だけでなく、歴史を振り返っても日本は西洋文化に同化するのでなく、伝統文化を維持しながら、経済の近代化を成し遂げてきた。他の国には魅力的なモデルとなりうる国だ。国連の安保理常任理事国に入っても、軍事大国としてではなく、グローバルな文民国家として、影響を広げられる可能性がある。そうした潜在力を生かすためには、戦後処理は避けて通れない道だ。小泉首相は靖国への参拝をやめる方法を見つけ出すべきだ」
◆ジョセフ・ナイ氏 米国を代表する政治学者。前ハーバード大ケネディ行政大学院長。クリントン政権下で1994−95年、国防次官補として東アジア政策を主に担当。95年、冷戦後の同地域の安全保障を再定義した「東アジア戦略報告」(通称=ナイ・リポート)を作成した。68歳。
<メモ>
【ソフトパワー】 ある国が他国を動かすための原動力として、軍事や経済などの物質的な力(ハードパワー)ではなく、政策の正当性や文化、思想、宗教などで影響を及ぼす力。ナイ教授によると、情報がインターネットなどで世界の隅々まで同時に行き渡る現代の情報化社会では、軍事力、経済力だけでなく「どの国の主張が信用できるか」というソフトパワーが国際政治を動かす重要な要素になっている。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20051022/mng_____kakushin000.shtml
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