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愛媛新聞
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017200510203509.html
2005/10/20(木)付
共謀罪 乱用防止に欠かせぬ抜本修正
組織的な犯罪を実行しなくとも謀議に加わっただけで処罰できるのが「共謀罪」だ。政府はその新設を柱とする組織犯罪処罰法改正案を提出していたが、今国会中の成立を断念した。
与党と法案に反対する民主党との修正協議が難航したためだ。加えて、与党内にも「対象となる団体の定義があいまい」などと慎重論が根強かった。
政府・与党は継続審議として次の国会で成立をめざすという。だが、今回が三度目の国会提出でありながら、審議がほとんど深まっていないのは、あまりに問題点が多いことの証しだ。乱用による人権侵害の懸念もぬぐえず、このままの成立は絶対に認められない。
国連は二〇〇〇年に「国際組織犯罪防止条約」を採択、日本も署名している。批准するには国内法の整備が必要で、それに当たるのが共謀罪の新設だ。
国際テロや暴力団、マフィアグループなどの国際犯罪に対応できる法整備は確かに重要だ。容疑者引き渡しなどで各国と足並みをそろえる必要性も理解はできる。
とはいえ、法案にはテロや国際犯罪への対策に名を借りた治安立法の側面も見えてしまう。
たとえば、対象団体について法案には「犯罪行為を実行するための組織」といった表現しかない。法務省自身が「一般には非常にわかりにくいだろう」と認めるほどで、労働組合や市民団体が狙い撃ちされるのではと危惧(きぐ)するのも無理はない。
実際、当初は暴力団対策と説明された凶器準備集合罪が拡大適用された前例もある。
犯罪の種類も「四年以上の懲役・禁固」の罪に該当するもので、六百種を超える。道交法や公選法などテロとは無関係としか思えないものまで含まれる。
通報者の刑を減免する規定は密告の奨励につながり、団体の活動を委縮させかねない。一方で捜査側にすれば、組織の一員になりすまして謀議に加わったうえで自首し、罪を免れる「潜入捜査」も可能になる。
計画するだけの段階では物証が乏しいはずで、証拠収集のための盗聴拡大や自白偏重をもたらす心配もあろう。
日本の刑法は犯罪の実行行為があって初めて処罰するのが原則だ。それを根本的に転換させるといっていい。
話し合った段階で処罰できるものも確かにあるとはいえ、内乱など八種の犯罪に限定される。それだけ例外的な規定ということだ。「共謀共同正犯」にしても、別の共犯者が犯罪を実行することが要件だ。
自衛隊のイラク派遣に反対するビラを自衛隊官舎で配った市民運動家らが住居侵入罪で逮捕・起訴され、一審で無罪判決が出された東京の事件などを思い起こしたい。法の恣意(しい)的運用が内心の自由を脅かす事態が過去のものと言い切れるだろうか。
成立してしまえば乱用に歯止めをかけるのは難しい。政府・与党は懸念に向き合い、いったん撤回して抜本修正するべきだ。国会も時間をかけて慎重に論議する必要がある。
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