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(回答先: 『共謀罪』今国会も断念―「東京新聞」 投稿者 天木ファン 日時 2005 年 10 月 20 日 11:05:24)
共謀罪 三たび断念の背景
「日本の法体系になじまない」と批判されながら今回の特別国会で議論されてきた「共謀罪」。野党ばかりか与党からも内容に疑いの目が注がれ十九日、政府・与党は成立を断念した。犯罪を話し合っただけで摘発されるこの罪は実は企業も標的になるとの指摘が。政府が“ゴリ押し”した法案の背後にあるものは。 (市川隆太、<1>面参照)
二〇××年のある日、大手ゼネコンY社の会議室に経営陣が集まった。首都移転に伴う“新・首相官邸”建設工事の受注作戦が議題だ。
A会長 わが社の名誉に懸けて、官邸建設を受注したい。他社に獲得されたら、全員、切腹ものだぞ。
B社長 会長のおっしゃる通りだ。現場任せにせず、役員も死ぬ気でセールスしてくれ。
C副社長 ところで、ライバルのZ社は、既に政府に設計図を提出したといううわさです。
D専務 Z社の設計図を入手して対策を立てましょう。ただし、入手は難しそうですよ。
C副社長 何を甘いこと、言っている。Z社に忍び込んで、設計図を盗んでくるんだ。
B社長 D君。君の同級生がZ社の担当役員なのを忘れたのか。口実を作って彼の部屋に行き、すきを見て資料を盗むんだ。
D専務 犯罪に手を染めるのは不本意ですが、わが社の存亡の危機、そうも言っていられません。同級生に接触してみましょう。
A会長 バカなことはやめなさい。正攻法で堂々と勝負するんだ。
――瀬戸際で盗みを思いとどまったY社首脳陣だったが、半年後、「窃盗の共謀」の疑いで当局の家宅捜索を受け、C副社長、D専務が同容疑で逮捕、起訴された。盗みは実行されなかったが、共謀罪が適用されたのだ。
ところが、犯罪計画に極めて熱心だったB社長は、おとがめなし。いったい何があったのか。B社長の独白を聞こう。
B社長の独白 いやあ、命拾いした。みんなは窃盗にも共謀罪があるとは知らなかったらしいが、私は子飼いの法務部長から聞いていたからな。自分も共謀罪を適用されてしまうと知り、役員会の一部始終を録音したICレコーダーを捜査当局に持ち込んだのだ。自首した者は刑が減免されることになっており、私は逮捕を逃れた。CとDは社長の座を狙っていたから、一石二鳥だったな。
◇ ◇
以上は、近未来フィクションだが、共謀罪ができると、このゼネコンのように犯罪を思いとどまっても摘発され、自首した者への恩恵措置が「密告社会」「監視社会」を招く−と指摘されている。
日弁連で、この問題に取り組む弁護士からは「共謀罪ができたら、かなり多数の企業が脱税がらみで摘発される」との推測も出ている。
ある弁護士は「現在の法体系では、企業の経理部員たちが、経理操作して税金のがれを相談したとしても、話し合っていくうちに『やはり、きちんと納税すべきだ』とか『ばれたらイメージダウンになるから、ちゃんと納税しよう』と思い直せば、処罰されない。脱税しなかったのだから、当然ですよね。しかし、共謀罪ができると、たとえ、話し合い中に反省して脱税しなかった場合も摘発される。摘発企業は飛躍的に増えるはず」と強調する。
こうした「共謀罪」の新設が盛り込まれているのは二〇〇三年の通常国会以来、廃案や継続審議となっている「組織犯罪処罰法改正案」だ。
今月十四日の衆院法務委員会でも、弁護士の漆原良夫議員(公明)が「企業や市民団体が摘発対象になる危険はないのか」と追及した。法案を担当する法務省刑事局は「犯罪を目的とする団体以外は共謀罪の対象にならない」と理解を求めつつも「(まともな企業が)犯罪を目的とする集団に変わった場合は該当する」としたため、漆原氏は「そういう変質の有無を判断するために、捜査対象になるのではないか。最終的に共謀罪が成立しなくても、捜査されれば市民団体、労組、企業は打撃を受けてしまう」と突っ込んだ。法務省は「恣意(しい)的な捜査があってはならない」と“自戒”してみせたが、漆原氏の疑問を一掃できたとはいえない。
疑問の声は自民党からも。「国民の理解なしに制度改革はできない。国会は単に法務省を承認する機関ではない」と政府の独走にくぎを刺したのは東京弁護士会の副会長だった早川忠孝議員。やはり弁護士の稲田朋美議員も「最高で五年の有期刑を伴う法律をつくる事実を重く受け止めなければならない。刑法は実行行為に出て初めて処罰する原則で定められている。原則も踏まえて審議すべきだ」。
さすがに法律のプロが多い法務委らしく、犯行を思いとどまり、刑を減免される「中止犯」の扱いがあいまいになる、という専門的な批判も出た。
中止犯は刑法四三条で「自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、または免除する」と規定されている。犯罪を思いついたが、中止した者への刑は減軽か免除を「しなければならない」という「必要的減免」規定だ。
弁護士の柴山昌彦議員は「共謀してしまったら即、既遂なわけだから、共謀したけれども、後で『やめましょう』と言った場合にも共謀罪の適用があるということになる」と指摘。この指摘を認めた法務省に対し「実際に合意に至らなかったのか、合意したけれど撤回したのかの認定が微妙な部分となる。かなりあいまいではないか」とたたみかけた。
一方、刑事事件に詳しい弁護士らも「中止犯の規定には、刑の減免というニンジンをぶら下げて犯罪を食い止める大切な役割がある。共謀罪ができると『どうせ罰せられるなら実行してしまえ』という呼び水現象が起きないか、非常に心配だ」と危ぶむ。
「法案には、被告が不利になる証人買収罪の新設も盛り込まれている」と指摘するのは日弁連関係者だ。
「札幌地裁で公判中の被告のアリバイを証言してくれる人が沖縄にいるとします。弁護士としては、わずかでも交通費を出すのが礼儀だが、証人買収罪ができると、そんなことさえ罪になるのです。これでは満足な弁護活動ができない」
日弁連や野党関係者は異口同音にこう訴える。
「政府は国連に対し『共謀罪は日本の法体系になじまない』と主張してきたのに、いつの間にか変節した。しかも、その理由さえ明確に説明できないままだ。実は、一番矛盾を感じているのは法務省自身では」
■メモ
<共謀罪> マフィアなど国境を超えた犯罪集団の犯行を防ぐための国連「国際組織犯罪防止条約」が2003年に国会で承認された。政府は「条約に対応し国内法も改正したい」と共謀罪新設を盛り込んだ。4年以上の懲役・禁固刑がある罪に対し、犯罪実行のための組織が「共謀」するのを罰する。対象罪種は内乱、殺人、消費税法、道路交通法など619種類とされる。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20051020/mng_____tokuho__000.shtml
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