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深沢七郎が、三島の自殺騒動と、それに翻弄された文壇をぶった切っている。
深沢 (三島の割腹自殺)ああいうのは額面どおり受け取っていいんじゃないですか。ああいう人がありますよね、国防だと言って、そのために命を投げうつという…それを額面どおりに受け取っていいんじゃないですか。いろいろな人がいろんなことを言っているけれど、私はそんなに勘ぐらなくて、ただ国防を叫んで自殺したと受け取っていいんじゃないかと思いますよ。要するに自殺というのは自然淘汰だと思うんです。昆虫とか動物には、自殺はないでしょう。人間にあるというのは、人間にだけある自然淘汰ですよ。自殺は、誰でもそうです。ただ三島さんを自然淘汰に追い込んだのは、武ではなくて文で、現代文学の世界が彼を自然淘汰したのだと思いますが、つまり、早い話が日本の文壇が彼を自然淘汰したのだと思います。彼の作品なんてまったく、少年文学で私は贋物だと思います。それを三島さんは才能があるから気がついたのですねぇ。それで、全然別の道で自殺を選んだのです。文から追い出されたのです、―自分で出て行ったことにもなります。だから、額面どおり国防を叫んで割腹したのですよ。まったく、文の道はきびしく、正しく、おそろしいほどの力強いものだとつくづく私は文学世界に魅力を感じました。それ以上のことをいろいろ考えるのは、変ちくりんじゃないかなと思いますね。ただ三島さんみたいな本当にそのものいちずに思うという…そういう人がありますよね。そのために命を投げうって平気だという人。そういうことができたっていうんだから、純情と言えば純情なのか…少年的な純情さですね。
古山 そうですね。
深沢 古山さんが『群像』に書いていたのおもしろかった。「20世紀のサムライ」というやつ。
古山 私は三島だからといって、特別に考える気持ちは持てませんね。
深沢 なんかあの人は、いま考えりゃ自分の宣伝がうまかったですね。自分の宣伝がうまかったということは、いろいろ小説のトビラを書いてますね。あのトビラというのは、数多いですね。
古山 (新刊の)オビでしょう。
深沢 オビ、そう、オビをうんと書いていますね。あれはやっぱり自分を売り出してますね。そういう意味で頭がいいんですね。ぼくらオビを書くということは、そんな意味で書いたとは思っていなかった。死んでから気がついたんですよ。作家が文学的になんで死ぬかなんてことはないと思いますね。三島さんが死んで、あとでよく読むと非常に死ぬことが書いてある。血なまぐさいものが書いてある。そのこといろいろみんなが言うでしょう。これほど三島さんの小説を理解していない、屈辱はないですよ。三島さんの小説もそれだけ力がないということになるけれど、作家が実行してみなきゃその小説がわからなかったということになるんじゃないですか。だから、三島さんの小説ぜんぜん認めないけど、死んだらそれがわかったという、そんなバカな話はないと思いますね。たとえば、おれが殺人の悪いやつを主人公にして書くわけですね、そうするとやっぱりおれが殺人をしてみせなきゃわからないという、それほどへたな小説じゃ書かないほうがいいんじゃない。(笑)そうしなきゃ説得力とか感度がないなんていうんじゃね。でもみんなそれは平気で言ってますよ。三島さんが死んでからみると、非常に血なまぐさいものがあるとかなんとか…あれは死ぬ前はぜんぜん認めていなかったということで…。
古山 なんか三島のことに関しても、みんな、人と同じことを言っちゃいかん、違ったことを言おうと思って、なんか言うことをさがしているようなところがありますね。
深沢 額面どおり受け取っていればなんでもないんですよね。
古山 そうです。額面どおりでいいんです。そして、狂気の沙汰と思えば狂気の沙汰と言えばいいし、時代錯誤と思えば時代錯誤と言えばいいんですよ。それを佐藤栄作が狂気の沙汰と言ったのはわかっていないとかなんとか言ってましたが、普通の人なら狂気の沙汰と思うのが当然です。みんなのやってること、まるで作文コンクールみたいですね。
深沢 自然淘汰ですよ。自殺するということは自然淘汰ですもの。ほんとうはあとに続く人がともに死のうというのは、サムライ精神じゃないと思うんです。そして、ともに死ぬ人が、あとからどんどん出てくるかというと、出てこないですね。
古山 平凡なことを言っては、なんか文学者の名折れとでもいうみたいに、みんな一所懸命違ったことを言おうとしているんだけれども、平凡なことを言ってもいいんですよ。
深沢 そうですね。いやに裏ばかり勘ぐるようなところがあるけど、そうじゃなくて純粋に国防を叫んで自殺したという、それだけでいいんじゃないですか。
古山 ええ、それだけでいいんですよ。みんな裏を探って、みんな同じ裏になっちゃう。(笑)
深沢 それでみんな自分のことを書いているのね。
古山 そうですね。
深沢 それで、あの人ぐらいいろいろ手紙書いた人はなさそうだね。みんなに手が出したり、人を招待したり、たいがい三島さんには招待されたとかいうような書き出しですね。おれは知らなかったね、あんなに人を招待したり、手紙をみんなに丁寧に出していたということを…。ぼくら手紙なんか。もう本をもらったって手紙出さない主義だから…。(1971年4月季刊芸術・春季号より)
深沢七郎 日劇ミュージックホール(上品なストリップショーを見せていた)でギターを弾く傍ら書いた小説『楢山節考』で衝撃的デビュー。『風流夢譚』で右翼の妨害にあい筆を折る。
http://www.logico-philosophicus.net/profile/FukazawaShichiro.htm
古山高麗雄 芥川賞作家
http://www.town.shichikashuku.miyagi.jp/water/furuyama/
投稿者:死ぬのはやつらだ at 18:15
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