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政治家の目先主義が気になる。じっと未来を見据え、腰を落として、というところが乏しい。
郵政民営化法案は賛否があって当然である。日本の未来像に深くかかわるテーマだから、なおさらだ。ところが、11日の衆院本会議では、わずか3カ月前に反対票を投じた無所属議員11人が賛成に回った。
事情も心情もわかる。苦しい口実は、それなりに理解できないではない。しかし、変節である。ふがいない情景だった。
11人のうち、野田聖子元郵政相が特に矢面に立たされたのは、岐阜1区で壮絶な<女の闘い>を演じ、勝ち抜いて全国的な注視を集めたからだ。郵政反対派のシンボルとしての期待も集まっていた。それだけに風当たりが強い。政治家の正念場である。野田は記者会見で、
「法案反対という自らの政治的主張は、完敗したことを認める」
と述べた。極めて難解だ。選挙区では主張が通って完勝した。しかし、自民党の圧勝で法案成立となったから完敗と言いたいのなら、それはまったくおかしい。
議席差は大きく開いたが、得票数で見るかぎり、郵政賛否の民意は五分五分である。小泉純一郎首相の人気と強引な手法、さらに小選挙区制の妙味によって、勝ちすぎただけで、野田の政治的主張は確実に生きている。
かりにいまは少数意見だとしても、筋を通し、将来多数意見にしてみせるという気概がなければ、政治家をやっている意味がない。目先の利害得失や気配りは排除すべきなのだ。
先日死去した後藤田正晴元副総理は、選挙中に、
「これは歴史的な分岐点になるかもしれない」
と語った。小泉が進めてきた郵政を導入部とする構造改革は、一法案の是非を超えて、この国の政治路線の選択にかかわっている、という趣旨だと思う。自民党の安倍晋三幹事長代理は、
「自民党は(郵政の)賛成派、反対派が混在する分かりにくい構造から、分かりやすい構造になった。古い自民党に戻ることはありえない」
と言うが、果たしてそうだろうか。<古い自民党>とは何か。
確かに小泉の政治路線は新しく映るが、明らかに自由主義の発想に立っている。個人の自由と能力を最重視し、<官から民へ>の競争原理をよしとする。社会は活気づくかもしれないが、所得格差が広がり、非情な弱者軽視にならざるをえない。
一方、自民党の50年は、伝統的な共同社会を大切にし、公平な分配を重くみて、弱者にも気を配る、という路線が主流だった。社会主義的と言われ、利権構造も生み落としたが、基本は情のある保守主義である。
それを、<古い>と切り捨てていいのか、というのが後藤田らの危機感だ。新旧でなく、この二つの政治路線の選択こそ、いずれ民意に問わなければならない。
小泉は思い切ってギアを切り替え、自民党を一色に染め上げた、と自負しているようだが、二つの路線とどちらとも無自覚な勢力が混在した冷戦時代のままだ。民主党も同じである。小泉が民主党の前原誠司新代表に、
「あなたならいますぐにでも小泉内閣に入れる。一緒にやろう」
と言った、という話は、ジョークではなく、本音だろう。2人とも自由主義者だからだ。
野田の政治主張には、そうした視点、将来展望がこめられていたかどうか、である。<完敗>だけではわからない。(敬称略)
毎日新聞 2005年10月15日 0時12分
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/news/20051015k0000m070145000c.html
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