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http://www.swissinfo.org/sja/swissinfo.html?siteSect=161&sid=5981042&cKey=1122983936000
コンサルティング会社キャップジェミニと米投資銀行メリルリンチの協同調査によると、今日、スイスには億万長者が18万5000人住んでいる。
この数字は人口732万人のうち約2%強にあたる。彼らは最低でも1200万フラン(約10億円)の個人資産を持つ。この資産額に不動産は含まれない。
しかし話はここからだ。国の上層部2%に君臨する「超リッチ」の話題は、マスコミの格好のターゲットで、国民の関心も高い。しかし一方で「結構リッチ」の実情が表に出ることはほとんどない。
さて、この「結構リッチ」はどこにいるのだろう?スイスにやってくる外国人観光客は、この国の豊かさをあちこちで見ることになる。しかし、いかにも「私は金持ちでござる」という下品な振る舞いを目にすることはそんなにないのではないだろうか。
プライバシー厳守はスイス銀行の専売特許ではないらしい。世界の富豪が集まるチューリヒ湖沿岸の高級住宅地には、豪奢な邸宅がずらりと並んでいるが、ここに一体誰が住んでいるのか知ることは並大抵のことではない。
リムジンも一目につかぬよう
スイスでは金持ちはちょっと居心地の悪い思いをする。スイスの伝説的銀行家、ハンス・ベアー(国内最大のプライベートバンクの共同最高経営責任者)の最近出版された自伝には、ベアー家がいかに細心の注意を払ってまったく同じリムジンを2台購入したか、というくだりが出てくる。2台もリムジンを持っているなどとご近所に知られたくないためだ。
このように金持ちであることを恥ずかしいと思わせる雰囲気は、どこから来るのだろうか。質素を美徳としたカルバン派(キリスト教の一派)の名残だろうか。理由は何であるにせよ、とにかくスイスでは「ビバリーヒルズ的富豪」は存在しない。
しかし、多くのスイス人が自分の富をおおっぴらにしないことと、富への執着が強いということは別問題だ。バーゼル大学のシルヴィオ・ボルナー経済学教授は、スイスで経済改革が進まないことの理由に、年配の層がお金を充分にためて、現在の社会システムに満足していることをあげている。
「例えば最近の調査によると、チューリヒ州では、65歳以上の夫婦の5組に1組が100万フラン(8730万円)以上の純資産を持っているのです。年配層は現在の生活に大変満足しており、何かを変える必要などまったく感じていません。彼らは投票率も高く、スイスの政治をきわめて保守的なものにしています」
遺産の一部を社会に還元してほしいのだけれど
スイスでは、他の多くの国と比べて相続税に悩まされることなく遺産を残すことができる。なんと、体系的な相続税そのものが存在しないのだ。
確かに似たような税金があることにはあるが、徴税は州や市など地方政府などが行っているので、各地方政府がお金持ちを呼び込もうと必死になった結果、相続税などほとんど骨抜きになってしまった。
中道左派の社会民主党は、連邦政府レベルで相続税を導入しようと試みている。対象は50万フラン(4400万円)以上の相続でそれ以下は今までどおりだが、ボルナー教授はそれでも経済効果があるとしている。相続税は脱税が難しく、他の税よりも社会的公平感が強い。
「しかし」とボルナー教授は言う。「実際問題、どんな努力をしても金持ちへの徴税はいつも簡単なことではありません。彼らは税金を回避する方法を、どんなことをしてでも見つけ出そうとしますからね。税金を専門とする有能な弁護士もわんさといます。こうやって資本は国外に逃げていくわけです」
集中砲火
メディア界の大物、イェルク・マルクワルト氏は、最近テレビのリアリティ番組に出て袋叩きにあった。この手の番組は、有名人の実際の生活をカメラで追って米国で大当たりしたのだが、スイスでは受けないようだ。スイス人は、莫大な富によって実現した、夢のような生活を見て面白がる人種ではないらしい。
テレビ番組のオンブズマン、オットー・ショッホさんの意見は手厳しい。「シャンペンにあふれたパーティやら、豪華な別荘やら、個人ジェット機まで、マルクワルト氏の自己満足的な見せびらかしには、うんざりです」
スイステレビ公共諮問委員会のオトマール・ケンプ委員長は、マルクワルト氏について「独断的で好ましくない人物」と評し、「影響を持った出版社の社長に適切な人物だとは思わない」とまで言い切った。
もちろん、このような激しい批判は番組のプロデューサーにも飛び火した。連邦通信局が「同番組はスポンサーと番組の関係に透明性を欠いており、公共放送の規制を侵害している」と警告したのだ。
節約を知られるのは嫌
マルクワルト氏のような「超リッチ」はともかくとして、「結構リッチ」の心のうちは依然藪の中だ。しかし、金持ちが住むチューリヒ州に隣接するシュヴィーツ州の交通警察は、彼らの最近のトレンドに気がつき始めている。
以前はチューリヒに住んでいた金持ちたちが今やより優遇課税を受けられる隣のシュヴィーツ州やツーク州に引っ越してきているのだ。彼らは、車のナンバー・プレートをチューリヒのままに保ち、転居先のものに変えようとしない。
法律上、2週間以内に車のナンバープレートを交換しなければ、多額な罰金を取られることになるが、金持ちはそんなことには頓着しない。それよりも、同僚に「お金を節約するために、より税金が安い州に引っ越した」と知られることの方が気になるのだ。
swissinfo、クリス・ルイス 遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳
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