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小泉構造改革をどう生きるか
〜成果主義・拝金思想を疑え!〜
森永 卓郎氏 (経済アナリスト)
第1回 なぜ、小泉首相は地滑り的勝利を収めたか
「恋は盲目」の状態に陥った選挙民
http://nikkeibp.jp/sj2005/column/o/01/index.html
「ユーフォリア」
日本語では陶酔的熱狂といえばよいだろうか。先日の総選挙で、小泉自民党が圧勝した理由は、これ以外にどうしても思い当たらない。
ユーフォリアは、非合理的かつ非経済的な行動である。集団で起きると戦争にもなりかねない。けっしていいことはないのだが、しばしば起きてしまう。
ユーフォリアが起きるためには、まずカリスマが出現しなければならない。
カリスマは自分の地位を盤石にするために、反発者を懲罰にかける。そして、敗者はほとんど復活することはない。
さらに、カリスマ支配のシステムを強固にするのが、情報の遮断である。内部にいる人間に冷静な判断をさせないために、外部から情報が伝わらないようにするわけだ。このあたりの事情は、旧共産圏や現在の北朝鮮を見れば、よくわかるだろう。
そして、情報の遮断をしっかりとしたあとで、内部の人間が熱狂する。
このユーフォリアを利用している典型的な例が、カルト教団である。カルト教団では、最後にもっとも強い陶酔が起きるのだが、このときカリスマは、信者に厳しい修行や貢献を要求する。
そう考えると、恋愛もまた一種のユーフォリアであることがわかる。
通常の経済行動ならば、資本を投下すればそれだけの見返りがあるのだが、恋愛では必ずしもそうはならない。むしろ、その逆で、見返りがなくてもひたすら貢ぐだけ。そして、貢げば貢ぐほど、相手にのめりこんでいく。
カルト教団や恋愛においては、こうして経済原理とは正反対の現象が起きるのである。
私は、こうしたユーフォリアが、まさに今回の総選挙のベースにあったのではないかと考えている。
カリスマの条件を全て揃えた小泉首相
http://nikkeibp.jp/sj2005/column/o/01/02.html
では、小泉首相はいつカリスマになったのか。
確かに、もともとカリスマの素養を持つ人ではあった。だが、決定的だったのは、森喜朗・元首相との最後の会談だろう。
「郵政改革をやる。オレは殺されたっていい」と言ったそうだが、この一言で彼はカリスマになった。
そして、このカリスマは、郵政民営化法案の反対派に対して、公認権を与えずに対立候補を擁立する。これは、さきほど述べたように、ユーフォリアを起こす常道である。
反発者に対して政治家生命を奪うという厳しい懲罰を与えた上で、敗者復活の芽をもほぼ摘んでしまった。
情報の遮断もうまく行われた。
小泉首相は、選挙前も選挙中も「郵政民営化」しか口にしなかった。それはそうだろう。年金問題や道路公団民営化ならば、すでに結果が出ている。しかも、小泉首相にとって悪い結果である。
しかし、郵政民営化ならば、まだ結果が出ていない。つまり、手垢のついていない話題だけに集中して、それ以外の情報を遮断してしまったのだ。
マスコミもまた、この情報の遮断に一役も二役も買った。テレビをつければ、連日、“刺客対反抗者”のオンパレード。この4年間の実績についてまともに取り上げるところは、ほとんどなかった。
そして、陶酔を起こすための“厳しい修行”も与えられていた。
「痛みに耐えろ」ということばである。
だが、よく考えてみるといい。この4年間、庶民はすでにどれだけ痛みを被ってきたか。 発泡酒増税、たばこ増税のみならず、配偶者特別控除廃止、定率減税廃止、国民年金保険料の値上げなど、軒並み増税続きである。
さらに、政府税調によれば、給与所得者の控除を全面的に見直すというし、消費税のアップも選挙前から公然と話題にのぼっている。
一方で、金持ちに対しては、相続税や所得税の改変によって、大幅な減税政策をとっている。
大多数の庶民は痛みに耐え続け、ごく一部の富裕層が恩恵を被っている。普通だったら、間違いなく選挙で倒れる状況である。
ところが、そうではなかった。信じがたいことだが、この状況を、多くの人は“厳しい修行”と感じているのだろうか。
“厳しい修行”に耐えても、その先には何もない!
http://nikkeibp.jp/sj2005/column/o/01/03.html
実際に、東京・飯田橋のハローワークの近くでインタビューをしたことがある。職を求めている人に対して、昨今の政治について尋ねると、想像もしない答えがかえってきた。 「痛みが必要なんですよね」
それも、一人や二人ではない。失業者の多くがこんなことを言うのである。
これを、ユーフォリアといわずに、なんと言おう。
これまでにも、選挙によって、日本新党ブーム、マドンナブームというものがあったが、これらは、文字通り“ブーム”に過ぎなかった。
だが、今回の熱狂は、ブームとは桁違いである。世の中を騒がせたヨン様ブームの比でもない。まさに、陶酔的熱狂としか表現しようがない。
私が危惧しているのは、こうしたユーフォリアが日本に起きたのは、これがはじめてではないからだ。
前回、同じようなことが起きたのは、1920年代の終わりのこと。そのときのカリスマは、「この改革は命がけで行う」と言って、選挙に圧勝した濱口雄幸首相(在任1929年7月2日〜1931年4月14日)である。
しかも、時代の状況から、首相の経済政策、そしてキャッチフレーズまで、背筋が凍るほど共通しているのだ。その詳細は次回で説明する。
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