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偽装現場職人は見ていた!姉歯だけじゃない危険物件
マンションなどの耐震強度偽装問題が次々と発覚するなか、建築現場で働く職人の間から「まだまだ明らかになっているのは、氷山の一角」と指摘する声が数多く上がっている。問題発覚後、弁護士や建築士らが行った「告発110番」でも多くの内部情報が寄せられるなど、どうやら“姉歯”だけではない危険な現実を、現場の職人は見ていたようだ。
「この仕事を40年以上続けてきた。建築士じゃなくても現場の人間が見れば、(構造の弱さも)一発でわかる。強度が偽装された設計なんて、あの人(姉歯秀次元建築士)だけじゃないことは明らかだよ」
高層ビルやテナントビルなどの内外装を手がけている職人(56)は、これまで隠され続けてきた“現実”を告発する。
欠陥構造は、明らかに柱が細かったり、締めるべきボルトが細く短かったりするなど、あらゆる部分に及ぶという。建設業界の厳しい価格競争にさらされ、下請け会社がさらにコストダウンを迫られているという側面もあるが、実際には「それ以前の問題」(前出の職人)で、設計図自体がゆがめられている場合も多いというのだ。
「コンクリートにさびが浮いてしまうのは、典型的な設計ミス。コンクリートに鉄筋を埋め込むのが浅くて、(コンクリートの)厚さがないからさびが出る」と指摘。欠陥建築物はビルだけでなく、高速道路や鉄道の高架などにもおよび、「補強といって高架の柱を鉄板で巻いたりしているけど、あんなの全然意味がないって現場の職人たちは笑ってますよ」という。
「現場の職人はみんな欠陥に気づいているが、それが言えない状況なんです」。下請けの内装業を経営する職人(58)は、欠陥が見過ごされていく一番の大きな問題は、大手ゼネコンの体質にあると指摘する。
建築現場には大卒のゼネコン社員が現場監督として派遣されているが、「朝礼では地べたに座らされたり、下請けをしている職人はまるで“奴隷”」と憤る。
この“現場”を知らない監督たちは、職人が設計図が間違っていると指摘したとしても「監督自身がどこが悪いのか、分からない」というのだ。そして「現場の職人がそれどおりに作らないと、使えない職人とみなされ次の日から仕事がなくなる」という“強権”を発動されてしまう。
工期の短縮も最近の傾向だ。現場の事情や段取りが分からない現場監督からは無理な期限を押し付けられ、達成できないと今後の仕事を受注できない下請けでは、「欠陥の指摘どころか、多少手を抜かなければ、どうしたって要求どおりに達成できないんですよ」と悲鳴をあげているのだ。
弁護士や建築士らが行った「構造計算偽造・ずさん検査告発110番」には、約200件の情報が寄せられ、建設業関係者からの内部情報だけでも約20件もあった。
国土交通省の調査でも、完成した建築物の耐震性などが適法か調べるため、建築基準法で義務付けられた「完了検査」も平成16年度は全国で73%しか実施されていないことが分かっている。
「ちゃんと完了検査なんかを受けちゃうと、一発で危険な建物だとバレるからわざと避けている例もある」(前出の下請け業者)。町中が違法建築物だらけな危険な現実が、改めて浮き彫りになっている。
ZAKZAK 2005/12/17