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いまさらという気もしますが、「毎日」がこんな特集を⇒特集WORLD:耐震データ偽造 安全置き去りの民間委託
http://www.asyura2.com/0510/nihon18/msg/280.html
投稿者 gataro 日時 2005 年 12 月 01 日 14:32:41: KbIx4LOvH6Ccw
 

毎日新聞 2005年11月29日 東京夕刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20051129dde012040065000c.html


 マンションの耐震データ偽造は本来、官が行っていた住まいの安全検査を民間に委託した問題を浮かび上がらせた。しかし、官も自らの検査で偽造を見逃したことが分かり、検査制度の構造的不備が輪郭を見せ始めた。問題点はどこにあったのか、どのような対策が必要なのか。専門家に聞いた。【小松やしほ】

 ◇審査対象は「お客様」、官は技術に追いつけず

 偽造の背景には業界の厳しい安値競争などが指摘されているが、「欠陥住宅被害全国ネット」の構造計算書偽造問題対策本部副本部長を務める河合敏男弁護士は「生まれるべくして生まれた事故だ。建築確認業務を民間に開放してから審査が甘くなったという話を聞いていた。構造計算書を偽造した姉歯秀次1級建築士の倫理観、意識の低さもさることながら、確認検査制度の仕組みにも問題がある」と指摘する。

 建築確認や工事完了の検査業務は、自治体の建築主事が担ってきたが、98年の建築基準法改正で99年から民間の確認検査機関にもこうした業務が委ねられるようになった。行政側の業務が手いっぱいになったためだ。現在、民間確認検査機関は122社ある。

 98年に自治体が行った建築確認件数は年間83万3191件。民間に開放された99年以降、民間の扱いは年々増え、昨年は自治体33万3665件、民間41万8871件と民間が初めて自治体を上回った。

 一方、官民の能力格差と官の地域格差が民間委託の流れを加速したと指摘するのは、1級建築士の資格を持つ明海大不動産学部の松本光平教授。「建築技術の進歩は非常に早く、行政の能力では追いつけない。また、都市部では建築主事の数が多い分、ある分野に突出した人が何人かいるが、地方では平均的にどの分野もこなせる人が求められるため、最新の技術にうとい場合もあり、民間の技術力を借りる必要があったのです」

 ◆悪化しやすい品質

 建築物はもし倒壊すれば、居住者だけでなく周囲への影響は避けられず、公共的な要素が大きい。人の命にもかかわる安全の審査を民間に委ねることに問題はないのだろうか。

 「そもそも、営利を目的とする株式会社が確認検査機関として厳しい検査をするのは非常に難しい」と河合弁護士は言う。「検査手数料で利益を得るわけだから、依頼する業者は確認検査機関にとってはお客様。チェックを厳しくしたり、審査に時間がかかるようでは、依頼が少なくなり困る。検査が甘くなるのも道理」

 松本教授も「民間業者が確認検査業務をやるようになって、綿密な審査より、サービスが重視されるようになっていると聞く。市場競争の中では、目に見える品質は保たれるが、目に見えなければ品質を下げて利益を上げようということになりやすく、品質の悪化を招きやすい」と話す。

 ◆第三者の目が必要

 今回の問題では自治体もデータ偽造を見逃したケースが出た。自治体が技術や能力の面で対応できないのを民間に任せたのだから、扱う件数は減ったとはいえ、自治体の検査が万全であると期待できないのだろうか。

 河合弁護士は「建築には設計・施工・監理の三つの作業が必要だが、これは三権分立にたとえられ、互いにチェックするようにできている。一番重要なのが監理。設計どおりに施工されているかをチェックするところです。これがきちんと機能していれば欠陥住宅はかなり防げるはず」と言う。

 しかし現状では、1級建築士が1人管理建築士として名を連ねれば設計事務所の開設が可能だ。大手の施工業者やゼネコンが子会社や関連会社として設計事務所を持っていたり、確認検査機関への出資を行っていることも多く、事実上1社で設計・施工・監理を行うこともかなり多いという。

 河合弁護士によると、地震が多いため建築基準の厳しい米ロサンゼルスと周辺市には「インスペクター」と呼ばれる公的検査官制度があり、資格者が建築現場に15回以上立ち入りするという。違反があった場合には赤紙が張られ、改善するまで作業を中止しなければならない。「日本にも営利目的でない半ば公的な立場の厳しいチェック機関を設けるべきだ」というのが河合弁護士の主張だ。

 松本教授も「現在の制度は性善説の上で運用されているが、人間は誘惑に負けやすい。見えない品質を担保するためには第三者的な目が必要だ」と強調する。

 ◆外国は規制厳しく

 建築基準法が公布されたのは1950年。「戦後の復興期で、焼け野原になったところに出来るだけ早く建物を建てなければならないということで、煩雑な許可制ではなく簡略な確認制となった経緯がある。世界各国は許可制で日本と比べるとはるかに規制が厳しい」(松本教授)。例えば、ロサンゼルスでは壁や屋根の修理などでも費用が500ドル(約6万円)を超えるものは許可が必要という。建物は公共性があり、近隣にも影響を与えるとの視点に基づいているそうだ。

 松本教授は「安全の確保を目的に、規制緩和の流れと矛盾しないように、検査の手法や指導・監督のあり方を整備し直すべきだと思う。例えば、確認申請の何件かに1件、第三者の専門家が抜き取り検査するというのは、コストもあまりかからず、かなりの効果が期待できる」と提案する。

 また今回、マンションの建築主ら業者の多くが、保証を行う財団法人「住宅保証機構」の制度に入っていない実態が明らかになった。口だけの「補償」では意味がない。松本教授によると、欧米では住宅開発では、業者に保険付きの保証制度への加入を義務付けているという。「保険制度は被害住民の救済だけでなく、保険加入の条件として建築物が厳しく点検され、副次的に監視機能が強化されている」と松本教授は話している。

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