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□広島小1殺害 仕事転々、1人暮らし ピサロ・ヤギ容疑者 [毎日新聞]
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1514385/detail?rd
[広島小1殺害]仕事転々、1人暮らし ピサロ・ヤギ容疑者
容疑者は、現場近くに住む在日外国人だった――。29日夜から30日未明にかけて急展開した、広島市の小学1年、木下あいりちゃん(7)の殺害事件。発生から1週間たち、見えない犯人の影におびえ暮らしてきた住民らは一様に安堵(あんど)の表情を浮かべた。一方、殺人容疑などで逮捕されたペルー人、ピサロ・ヤギ・フアン・カルロス容疑者(30)の自宅アパートは通学路沿いにあり、登下校時の安全対策が改めてクローズアップされた。
◇リマに妻子残し…現場写真見て、とぼける
知人によると、ピサロ・ヤギ容疑者は日系3世で、ペルーの首都・リマに妻と9歳と3歳ぐらいの長男、長女がいるという。毎日新聞の取材の際、事件に話題が及び、遺体発見現場の空き地の写真を見せられ、「ごみ置き場?」と片言の日本語でとぼけてみせる場面もあった。生活の場を日本に求めたカルロス容疑者に何があったのか。最近の暮らしぶりや周囲の評判から浮かび上がる人物像は――。
ピサロ・ヤギ容疑者は身長約170センチのがっしりした体格。日本語は少ししか話せず、今年10月まで隣町にある自動車部品工場で働いていた。しかし、足の骨を折り退職。今月、親せきを頼って現場近くのアパートに引っ越してきたばかりだった。
アパートでは1人暮らしで、木工業などの職を転々としていた。事件を起こした今月22日は、失職中だったという。
一方、近くの住民らはどう見ていたか。近くに住む女性は夜遅く、転居したばかりのピサロ・ヤギ容疑者にアパート前で突然、「僕、一人」と話しかけられた。別の70代の女性宅には自転車の修理に使う工具を借りるために訪ねてきた。女性はその時の印象を「鋭い目つきが怖かった」と振り返る。
事件翌日の23日朝には、近くの住人に「あなたがやったのではないか」と詰め寄られる様子を近くの人が目撃している。この時、ピサロ・ヤギ容疑者は手を振って否定していたという。
逮捕3日前の27日、毎日新聞の取材に応じた容疑者は、今後の予定について「職が見つかったから月曜日から仕事に行く」と説明していた。しかし、その後、行方が分からなくなり、30日未明に三重県鈴鹿市内の知人宅で身柄を拘束された。
◇アパートでの現場検証開始
カルロス容疑者のアパートでは午前10時、広島県警の鑑識課員ら約10人が現場検証を始めた。捜査員は「夕方ぐらいまで続きそう。犯行現場である可能性もあり、念入りに調べたい」と話した。
◇
カルロス容疑者が今年10月まで勤務していた広島県海田町の会社によると、同容疑者は04年4月18日に入国。同社では派遣会社から派遣され、今年7月18日から働いていた。大学卒だったといい、事件を起こすような兆候はみられなかったという。月収は20万円台の後半。無断欠勤も多かったが、出社すればまじめに働いていたという。
同じ職場のブラジル人は「あの人は優しくてまじめな人だと思う。まさか事件を起こすなんて」と話していた。【太田裕之、大場弘行、松田栄二郎】
◇カルロス容疑者との一問一答は次の通り。
――事件当日、何をしていたのか。
仕事を探していた。
――事件のことを知っているか。
よく分からない。
――(遺体が入れられていた段ボール箱の)ガスコンロを購入したか。
日本語がよく分からない。
――(遺体発見場所の写真を示し)この場所を知っているか。
ごみ置き場?
◇熊本の祖父母宅、外出でひっそり
熊本県八代市の、あいりちゃんの祖父、木下義勝さん方は、義勝さん夫婦が早朝からそろって大工仕事に出掛け、ひっそりと静まり返った。近所で青果店を営む女性(43)は「おじいちゃん、おばあちゃんとも家でじっとしていられなかったのでは。犯人が捕まって、十に一つでも心が休まったと思う」。近くの理髪店の男性(69)は「ほっと一安心。でも、あいりちゃんが戻ってくるわけではない。せめて、なぜ殺害しなければならなかったのかはっきりさせてほしい」と話した。【阿部周一】
◇この日も集団登校…保護者は「ほっとした」
女児の通っていた市立矢野西小では、この日も児童が保護者らに付き添われて集団登校した。容疑者の逮捕に、保護者からは「ほっとした」という声も漏れた。
女児と同じ1年生の孫を連れた女性(60)は「逮捕で一安心。二度とこんな事件が起きないようにしてほしい」。2年生の女の子の母(35)は「子どもを守るのは親しかいない。送り迎えなど出来る限りのことを続けたい」と話した。
カルロス容疑者のアパート前の通学路は報道陣で混雑し、児童らはわき道を迂回(うかい)した。先導した川田秀司PTA会長(38)は「犯人への憎しみより、女児を失った悲しみの方が大きい。PTAとして集団登下校や地域での声かけ運動を今後も続けたい」と話した。
遺体発見現場の空き地沿いの路地には、女児が好きだった犬のぬいぐるみやお菓子、花束が供えられている。同小の「地域学校安全指導員」、竹本剛さん(59)は登校の見守り活動を終えて訪れ「命はもう返ってこない。事件を教訓に、学校の安全管理に力を入れたい」と、声を詰まらせながら手を合わせた。
容疑者のアパート隣室に住む50代の飲食店経営の女性は「容疑者が隣人とは今朝5時のテレビニュースを見て知った。引っ越してくる時、大家から『ペルーの方が入るのでよろしく』と言われた。おとなしそうで、言葉を交わしたことはほとんどなかったので、びっくりした」と話していた。
現場近くに住む第一発見者の無職男性(68)は「犯行時間が限られているし、逮捕されるとは思っていたが、ニュースで犯人逮捕を知り、ほっとした」と語った。
◇孤立する外国人
▽作家の佐木隆三さんの話 在日外国人という容疑者像は全く想像していなかった。分かっていない点が多く何とも言えないが、容疑者はペルーに妻子を残して来日し、孤独な生活をしていたのではないか。「外国人を受け入れて国際貢献を」とはよく言われることだが、在日外国人は実際には孤立し、孤独だ。そうした中で犯罪を犯す者もいる。私たちは彼らを排せきするのではなく、積極的に受け入れる必要があるのではないか。社会防衛にあたって、彼らとどう付き合っていくか、きちんと考えなければならない。
◇防犯意識高めよう
▽作家の高村薫さんの話 容疑者が外国人であることに焦点を当てるのは危険だ。現代の日本では雑誌やビデオ、ネット上に性的情報がはんらんし、誰でも簡単に触れることが出来る。それに誘発される危険性は、日本人であれ外国人であれ変わらない。いつの時代も子どもを狙う犯罪者はおり、今後も同様の事件は必ず起きるだろう。
今、必要なのは社会の防犯意識を徹底して高めること。子どもが事件に巻き込まれるのは大半が登下校の途中なのだから、集団登下校などにより、学校を出てから家のドアを開けるまで、子どもを守る努力をすべき。子どもが街を一人で歩いている状況を放置するのは社会の怠慢だ。「子どもが大事」と言いながら日本の社会は子どもを守っていない。容疑者の逮捕により、何かが解決した訳ではない。社会が子どもを守る取り組みを本気で始めてほしい。
◇事件を巡る経過◇
22日
午後0時35分ごろ 矢野西小の全児童が一斉下校
0時40分ごろ 下校途中の女児を同級生が目撃
3時ごろ 空き地で女児が入った段ボール箱を発見。 110番通報を受け、警察官が箱の中の女児を確認
4時48分 病院で死亡確認
10時ごろ 約500メートル離れた茂みでランドセルを発見
23日
午前10時 矢野西小で緊急保護者会
午後3時15分 捜査本部が「死因は頚部(けいぶ)圧迫による窒息死」と司法解剖結果を発表
24日
午後8時 父親の実家のある熊本県八代市で通夜が営まれる
25日
午前11時 同市で葬儀が行われる
30日
午前2時 三重県鈴鹿市内の知人宅で逮捕
2005年11月30日15時01分