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木簡に書かれた文字
2005年11月08日03時06分
私は大病で明日をも知れぬ命。預かった馬をこれ以上飼うことができないのでお返ししたい――。こんな遺言めいた文面の平安時代初め(9世紀初め)の木簡が、奈良県香芝市の下田東遺跡から見つかった。同市教委が7日、発表した。「続日本紀」には飛鳥時代の僧が遺言により火葬された(700年)とあり、古くから遺言の意識があったことは知られているが、遺物の発見は珍しいという。
同遺跡は縄文時代から近世にかけての複合遺跡。木簡は平安時代の井戸跡から出土し、長さ36.8センチ、幅11.1センチ、厚さ0.5〜1センチ。縁の丸みなどから桶(おけ)の底板の一部を利用したらしい。
遺言は板の片面の左側4行にわたり約60字が墨書きされていた。書いた人物の名前は「伊福部連豊足(いふきべのむらじとよたり)」とあり、「重い病気にかかって今にも死にそうなので、預かっている馬を飼えないため返上したい。もう、あなた様にお仕えすることができない」などと読めるという。同じような内容を表現を変えて書き加えた部分があり、推敲(すいこう)していたらしい。
このほか、「種蒔日(たねまくひ)」や「和世種(わせのたね)三月六日」といった農作業記録などが両面に計約100字書かれていた。豊足の職業は不明だが、「畏公(かしこききみ)」「御馬(おんうま)」の表現があることや他の出土遺物などから、初期荘園の現地管理人のような人物か、律令体制下の末端役人ではないかとみられている。
和田萃(あつむ)京都教育大教授(日本古代史)は「主人か上司への書状の下書きだろう。馬を返す理由を重病としたり、死にそうとしたり、推敲した様子がうかがえる。本当に死にそうならそこまでするかという気もするので、上から押しつけられた馬の世話に困っていたのかもしれない。現代人も共感できる類例のない面白い木簡だ」と話す。
木簡は8〜23日、香芝市二上山博物館(0745・77・1700)で特別公開される。月曜休館。
http://www.asahi.com/culture/update/1108/001.html