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□反逆児・吉田拓郎を変えた大病 [ゲンダイ]
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1454064/detail
反逆児・吉田拓郎を変えた大病
意識がハッキリして最初に目に飛び込んできたのは白いチューブだった。何本もの手術用チューブが全身につながっている。全身麻酔が徐々に薄らいで、痛みも感じてきた。しかし、痛さ以上に耐えられないのは「死の恐怖」だ。担当医師から「肺がん」の宣告をされたのはほんの4日前(03年4月5日)のこと。「もうオレも終わっちゃうのかな」――そんなことを考えたとたん、涙が止まらなくなった。3時間に及ぶ手術は19ミリのがん細胞を切除して無事に終わった。しかし、異様なチューブ群につながった自身の体をまざまざと見せつけられ、恐怖感からは一向に解放されなかった。
吉田拓郎(59)はその後も、苦しめられ続けている。その年の10月、ラジオ番組の収録直前、突然体調を崩し、出演をキャンセル。翌年夏もコンサートの本番中に貧血のためステージ上にへたり込んだり、会場に向かう途中で体調不良を感じて自宅に引き返したりを繰り返した。マスコミにも「復帰は絶望か」と書かれた。
周囲が安心して見ていられるようになったのは、つい最近のことだ。今年も毎年恒例の全国ツアーを8月末にスタートさせた。地元・広島厚生年金会館からスタートさせたコンサートはつま恋、横浜、東京とどこの会場も満員で、来週28日には、当初予定になかった追加公演を決定したほどだ。
たしかに以前の吉田とは違っている。「変化」の度合いは、吉田がスポーツ紙に週1で連載しているエッセーの内容を見ても明らかだ。
〈定年だの還暦だのと騒ぐ前に、一人の人間として、その充実感を問題にすべきだ。目標や目的の大小高低に違いはあっても、僕たちは一人の人間として“生きること”を運命として生きている〉
〈僕は細かいおつりが出て宅配業者の手を煩わせないよう、あらかじめ金額をぴったり用意しておく。相手が“助かります”と笑顔を見せたとき、僕はまた愛される人物に一歩近づいている自分を実感する〉
かつての吉田だったら、決して口にしない言葉だろう。「反戦・反逆」のシンボルとして、そのツッパリぶりが同世代の若者を熱狂させた。一方では、吉田の強烈な個性に反感を抱く同世代もいたはずだ。
今の吉田は、かつてのファンはもちろん、昔は苦々しく思っていた世代の人たちも柔らかに包み込んでいる。「死の恐怖」とともに「生への執着」が、吉田もファンも変えた。病気もまんざら悪いことばかりじゃない。
【2005年10月21日掲載】
2005年10月24日10時00分