★阿修羅♪ > 環境・エネルギー・天文板1 > 434.html
 ★阿修羅♪
大気汚染で地球上に降り注ぐ太陽光が減少している 【長田 武】
http://www.asyura2.com/0510/nature01/msg/434.html
投稿者 愚民党 日時 2006 年 5 月 06 日 15:06:31: ogcGl0q1DMbpk
 

グローバル・ディミングが温暖化にブレーキ?


---------------------------------------------------------------

大気汚染で地球上に降り注ぐ太陽光が減少している

長田 武

 昨年2月に気候変動国際会議がイギリスで開催された。『危険な気候変動を回避する』(Avoiding Dangerous Climate Change)と題したこの会議の報告書では、「温室効果ガスの排出量を危険レベル以下に抑えられる可能性は極めて少なく、温室効果ガスの大気中濃度の上昇は、これまで考えられていた以上に深刻な影響をもたらす」と警告が発せられている。最新の衛星観測データによれば、北極と南極で毎年350立方キロメートルもの氷が溶け出している。地球温暖化が、当初の予測をはるかに超えるスピードで進んでいることが次々と明らかとなっているのだ。

 しかも、最近さらにショッキングな事実が判明した。グローバル・ディミング(global dimming)と呼ばれる現象をどう評価するのかを巡って、研究者の間で大きな議論が起きている。

地球は少しずつ暗くなっている

 「グローバル・ディミング」現象は、昨年1月にイギリスのBBCの科学番組「Horizon」が特集したことで、一躍注目を浴びた。日本語では、「地球薄暮化」などと訳されるが、大気汚染の影響で地球上に降り注ぐ太陽光線の量が減少しているという問題だ。

 最初にこの現象を発見した研究者は、30年で10%以上も地表に届く太陽光が減っていると主張し、その後様々な研究が行われた。世界各地で同様の研究論文が出て、旧ソ連邦では1960年から87年の間に20%もの太陽光が減少、イスラエルでも1950年代から90年代の間に22%も減少したと報告されている。

 太陽光の減少量については地域や研究によっても様々だが、ほぼ10年で2〜3%という割合で太陽光が減少しており、特に北半球中緯度の地域での減少が著しいとされる。グローバル・ディミングが間違いなく起きていると実証されているのだ。

 ではなぜ「地球薄暮化」が起きているのか? 原因は、大気汚染物質が雲を形成して日光を遮蔽しているのだと考えられている。化石燃料の使用によって大気中に排出される二酸化硫黄やススなどの粒子状物質(エアロゾル)が雨粒の中核となり、巨大な鏡のような雲をつくって太陽光を反射してしまうのだ。

 エアロゾルがどれだけ太陽光の量と気温に影響を与えるのかについての示唆的な報告がある。2001年に起きた9・11テロ直後の3日間、アメリカ全土上空を民間飛行機が1機も飛べない措置が取られた。この時、グローバル・ディミングの研究者の一人、デービッド・トラビス博士は、いつもより空がきれいなことに気づき、全米の気温データを集めた。

 計測記録によると、この3日間の昼夜の温度差が、その前後と比較して1℃も大きかった。わずか3日間全米で飛行機が飛ばないだけで、ジェット燃料によるエアロゾルが減少して大気がきれいになり、いつもより多くの太陽光が地表に降り注いだから昼間の気温が上昇したと考えられる。逆に言えば、エアロゾルなどの大気汚染がどれほどグローバル・ディミングに大きな影響を与えているのかが分かる。

 ちなみに、省エネタイプの最新のジャンボ機でもジェット燃料1リットルで約60メートルしか飛ばない。1998年のデータしか手元にはないが、当時の日本の航空輸送は、国際線旅客が856億人キロ、国内線旅客が688億人キロ、国際航空貨物が63億5956万トンキロ、国内航空貨物が8億2364万トンキロで世界第2位だ。アメリカの航空輸送は日本の約6倍で世界第1位。航空機をバス代わりに使用するアメリカで、3日間飛行機が飛ばなかっただけで空がきれいになったというのも頷ける話だ。

 グローバル・ディミングの発見は、地球が温暖化しているにも関わらず、世界中の水の蒸発量は減少しているという一見矛盾したデータの原因を解明することにも寄与した。水の蒸発は気温だけではなく、水の表面に当たる光子の力に大きく影響される。温暖化しているにも関わらず水の蒸発量が減っていることも、グローバル・ディミングを実証するデータとなったのである。

地球温暖化との関係は?

 さて、ここからが本題だが、つい4〜5年前まで多くの気象研究者は、グローバル・ディミングをあり得ないことだと考えていた。なぜなら、「地球薄暮化」が起きているのならば、地球は温暖化ではなく寒冷化していくはずなのに、実際には世界の平均気温は確実に上昇してきたからだ。ゆえにIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書でもグローバル・ディミングについてはふれられないできた。

 しかし、グローバル・ディミングの存在が実証された今日、恐るべきシナリオが考えられ始めている。産業革命以前に比べ、大気中の炭素濃度は280ppmから380ppmへと100ppmも急増したことが分かっている。もし氷河期にこれほどの二酸化炭素の増大があった場合、地上の平均気温は6℃上がったのではないかと主張する研究者もいたが、これまでのところ、温度上昇は0・6℃に留まっていた。

 気温上昇が未だ0・6℃に留まっている原因が、グローバル・ディミングにあったとするとどうなるだろうか? 現在人類が直面している加速度的な地球温暖化は、グローバル・ディミングによって一部相殺された上で、なお現れているのかもしれない。

 化石燃料の使用が二酸化炭素濃度を上げて温暖化を促進する一方で、同じく化石燃料の使用によって増大した大気汚染によってグローバル・ディミングが起き、温暖化にブレーキがかかっていたのかもしれないのである。

 自動車を運転していて、アクセルを踏んでも思うようにスピードが上がらない。ふと気が付くとサイドブレーキがかかっていたとする。こんな状態でもしサイドブレーキを解除すればどうなるかは明らかだろう。自動車はこれまで以上のスピードで加速していくことになる。

 今人類が直面している事態は、まさにこれと同じではないのか、と警告を発しているのがグローバル・ディミングを巡る問題なのだ。皮肉なことに、昨年サイエンス誌で、1990年代以降、グローバル・ディミングは改善されてきているというレポートが発表された。

 スイス連邦工科大学の大気科学者のマーチン・ワイルド氏は、地球全体に設置された何百台もの装置から送られて来る地表での日光レベルに関するデータを分析。インドなどの高汚染地域を含めてほとんど全ての場所で、1950年代後半に観測を開始して以来続いていた太陽光の減少が10年以上前に終わり、増加へ転じているとレポートしている。

 大きな要因としては、ほとんど大気汚染防止措置をとっていなかった旧ソ連・東欧圏の経済が90年代に壊滅したこと、そして1970年代以降、先進国でも排ガス規制や公害防止が強まって大気汚染が減少したことが考えられる。

 日本でも、高度成長期には四日市喘息などの大気汚染による公害訴訟が多数争われた。被害者の悲痛な訴えは行政や企業を動かし、今日では煙突から黒い煙をもくもくと出して工場を操業することなどできなくなった。石原都政では、ディーゼル車規制も強化されている。

 きれいな空気が戻ってくることは大歓迎だが、温暖化のブレーキ役を果たしていたグローバル・ディミングが改善されていくということは、温暖化にさらに拍車がかかることになる。単純に喜んでばかりはいられないのだ。

 大気汚染物質対策は着実に進んでグローバル・ディミングは減少し、一方でCO2削減などの温暖化対策は進まないとどうなるのか? この条件で気候モデルをシミュレートすると、これまで予想されていた地球温暖化の最悪シナリオ(今世紀末までに約5℃の気温上昇)は更に上方修正され、2020〜30年に2℃、2040年までに4℃、今世紀末までに10℃も上昇するとの結果が出たと言う。たった3日間アメリカの上空を飛行機が飛ばなかっただけでも、昼夜の気温差が1℃も違ったことを考えれば、このシミュレーションをむげに否定することはできない。

 急激な経済成長を遂げる中国では、汚染の実態が目に見え、被害も明確な大気汚染対策には取り組もうとしている。中国でも太陽光の減少は増加に転じていると、ワイルド氏のレポートで報告されている。その一方で、中国は世界中で石油資源確保に躍起となっており、化石燃料の使用はさらに増大していくだろう。中国だけでなく、世界的に見ても、温暖化対策は後手後手に回っているのが現状だ。

 グローバル・ディミングが無くなることで文字通り明るい未来が開けるのなら良いのだが、むしろ温暖化のブレーキが外れて人類はますます破局へ向かって突き進んでいく可能性のほうが高い。経済成長主義そのものから一刻も早く脱却しなければ、人類の未来はない。


--------------------------------------------------------------------------------

東芝が石炭発電所建設を断念

環境に配慮した電力を

寺本 貴

 今年2月末、東芝が山口県宇部市で計画していた石炭発電所の建設を中断し、将来の事業化も断念すると発表した。これは地球温暖化対策を理由にし発電所建設を断念する初の事例として注目したい。

 この発電所の計画は、東芝とオリックスとの合弁会社「シグマパワー山口」が、総事業費約1000億円、50万kWの発電所2基を建設し、2012年の運転開始を目指していた。東芝は「石炭が当初見込みの1・5倍に値上がりし、電力需要の伸びも鈍っており、採算の見通しが厳しい。地球環境問題の高まりもあり、総合的観点で決めた」と計画中断の理由を説明している(朝日新聞2月27日)。確かに経済的な理由もあるのだろうが、この発電所は温室効果ガスのCO2を年間約582万トン発生することが見込まれており、その排出量の多さに環境省が強い難色を示していたことも大きな要因になったようだ。

 日本は2007年を目途に電力の完全自由化への道を進めているが、今回の計画も電機メーカーによる電力供給事業への新規参入だ。昨年2月の京都議定書発効を受けて、東京電力などの電力各社(従来の一般電気事業者)にはCO2換算で約1700万トンの温室効果ガスの排出削減が義務付けられているが、新規参入する事業者に対する具体的な排出規制はない。今回の計画断念が、これからの新規参入に対しても環境面への考慮を促す一歩となって欲しい。

 ただ、こうした一方で本紙1205号の1面のコラムでも取り上げているパトリック・ムーアのように、火力と原子力とを比較して「原子力エネルギーはCO2も他の大気汚染物質も全く排出しないという点で、まぎれもなく最善の選択肢である(2005年4月28日米上院エネルギー・天然資源委員会での発言)」といった主張がまだまだまかり通っているのが現状だ。

 発電時のCO2排出だけで考えればそうも言えるだろうが、ウラン採掘から廃棄物処理までの膨大な行程を考慮したライフサイクルで考えた場合に、単純にそう言いきれない。何より、放射性廃棄物による汚染・被曝の問題がある。「環境への配慮」で考えれば、「原子力が最善の選択肢」なんて言えない筈だ。

 ヨーロッパやアメリカの電力自由化では電気料金の値下げが起きることで、巨大な施設とリスクを抱える原子力は価格の面で他の電力と対抗できなくなっていった。原子力発電が減少していった大きな要因だ。また一方で電力を使う「消費者」も、値段だけではなく発電方法や企業の環境対策などで電力会社を選ぶということも起きた。日本でもこれから本格的に始まる電力自由化のなかで、われわれは何を選ぶのか。選択が迫られている。


--------------------------------------------------------------------------------

(2006年5月5日発行 『SENKI』 1211号4面から)

http://www.bund.org/opinion/20060505-2.htm

 次へ  前へ

  拍手はせず、拍手一覧を見る

▲このページのTOPへ       HOME > 環境・エネルギー・天文板1掲示板


  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。