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http://www.patagonia.com/japan/enviro/reports/2005/your_choices.shtml
個人の選択
by エイモリー・B. ロビンス
『Late Summer 2005』カタログ掲載
1999年、私は2人の同僚とともに、アメリカの1 家族が1年間生活を営むために何をどれだけ必要としているかを算出しました。中産階級の4 人家族のために、産業界は年間約1,800トンの資源を採取し、加工処理し、精製し、製造し、燃焼し、供給し、浪費しています。この数字を1日当たりで考えると、標準的な人間の体重の約20倍です。しかしこの莫大な流通量の中で実際に最終製品の形となるのはわずか7%、その中で耐久性に優れた製品はわずか1%、そして耐久性に優れかつ再生、再製品化、あるいは再利用されるのはほんの0.02%に過ぎません。つまり米国内での資源フローの99.98%は純然たる廃棄物となるのです。
例えばフロリダ・オレンジジュースを1リットル作るには、1,000リットルの水と2リットルのガソリンを必要とします。さらに紙パック用の紙、キャップ用のプラスチック、ラベルを印刷するインク、製品を入れる段ボール箱、その箱を乗せる荷台、荷台を運ぶトラック、そして工場とトラックが使用する燃料と電力などが加わります。
それに比べて自然は、無駄を一切残しません。ある種の排泄物が他の種の食糧となる自然界では、有機体が産み出すものはすべて他の有機体に再利用されるからです。つまりリサイクルの効率は100%で、その過程で残留する有害物質は知られていません。
この自然を手本に人間が次の産業革命を起こすことはできないのでしょうか?
バイオミミックリー(生物模倣)は人間社会の問題を解決するために、自然の仕組みやプロセスを研究し、模倣したりインスピレーションを得たりする新しい科学です。バイオミミックリーでは生態学的基準を利用して、新しい技術の「公正さ」を判断します。バイオミミックリーを専門とする科学者のジャニン・ベニュスは「自然界は38億年をかけて『何が有効で、何が適切で、何が存続するか』を学んできた」と記しています。
例えば、滑らかな表面にぴったりとくっつく方法はヤモリが知っています(ヤモリは足の裏に生えるナノ単位の毛によって滑らかな表面にしがみつくことができます)。水中で物を接着したければ、フジツボにその方法を教わります。夜露を集めるにはナミブ砂漠に生息する甲虫を見習い、染料を使わずに色を出すためには鳥の羽を参考にします。表面自浄作用については、泥の中でも常にきれいな状態を保つハスの葉に習い、摂氏4度の海水で自己形成し、最高品質セラミックの2倍の強度を誇るアワビの貝殻の内側を調べるのです。また、消化した虫から鋼よりも強く、防弾ベストに使うケブラー繊維よりも丈夫な糸を常温で作り出す方法は、クモから学べます。
自然を模倣した商業製品は、現在「バイオミメティック・デザイン」として最先端の分野を形成しています。ジンバブエの首都ハラレにあるイーストゲートは9階建て、31,600平方メートルを有するハラレ最大の複合商業ビルですが、これは建築家のミック・ピアースとデザイン会社Arupが、シロアリの蟻塚を参考にして設計した建物です。ビルは装置に頼らないパッシブな手法で換気と涼しさを保ち、同じ大きさのビルと同様の快適さを半分の電力量で維持できるようになっています。またカリフォルニア州サンラファエルにあるPAX Scientific社は、貝殻の螺旋状スロープをモデルにしてポンプとファンをより静かで効率的に使うローターの原型を開発しました。
パタゴニアの最新フリースは、哺乳類の毛皮を模倣した2 種類の繊維を使用しています。長短の異なる繊維を組み合わせることにより、保温効果を高めながらかさばりは抑える仕組みです。さらにアトランタを本拠とするInterface社のEntropy® カーペットのデザインは、森の地面に敷き詰められた落ち葉のようなフラクタル(次元分裂図形)な図案を採用して、小さなじゅうたんの縁を目立たなくなるようにした上、製造加工と裁断による無駄を削減し、原料の9%と取付けコストの半分を節約することに成功しました。Interface 社はまた、年月とともに摩耗し、一旦廃棄されたら1万年以上自然分解されない石油製のカーペットを販売する代わりに、問題解決型経済のビジネスモデルとして、フロアカバー・サービスにリース方式を採用しました。これはカーペットがより丈夫で長持ちになり、さらに再製造が可能になればなるほど、Interface社だけでなく顧客もその利益を受けるという仕組みになっており、原料の99.9%節約という結果がすでに示されています。Interface社が目指す次のステップは、自然界の生物多様性と人間の文化および地域社会に再投資しながら、空気中の炭素を土壌へ吸収させる手法で栽培された農作物の残骸からカーペットを作り出すというものです。同社の会長であるレイ・アンダーソンは、将来的に化石燃料を一切使用しないでカーペットを作る計画さえを持っています。石油の節約および代用品の利用は、石油を購入するより低コストであるため、この計画は現実的であり、さらに有益な事業へとつながるのです。
バイオミメティックは作家ポール・ホーケンが「自然資本主義」と呼んだ産業システムの大がかりな再構築の一環で、金銭や物質だけでなく、資本の最も重要な形態である人間と自然を生産的に利用して再投資するという、自由市場に基づいた経済です。例えばInterface社は、エネルギーと原料を効率的に利用することによって2億5千万ドル分の無駄を利益に変えました。新しく登場するデザインは、より少ない費用で徹底的に倹約を促します。同社の目標は新たな原料を使用せず、無駄を出さず、環境に悪影響を与えず、よいことを実行して同時に利益を上げるという、非効率な競合社の誰もがうらやむ結果なのです。
画期的にエネルギー効率のよい自動車、建築物、工場(米国国防総省の協力を得てRocky Mountain Instituteが発表した『Winning the Oil Endgame』参照)および最新バイオ燃料により、アメリカ合衆国は石油をまったく使わずに利益を得ることができます。例えばスポーツ用具に使われる、超軽量カーボンファイバーを用いれば、自動車や軽トラックはエネルギー効率のみならず耐久性に数倍優れ、より安全かつより少ない費用でしかも容易に製造できるのです。
このような改革の実現には3つの力が必要です。競合戦略、公共政策、そしてその両方の基盤としての消費者の需要です。今日ビジネスは地球上で最もパワフルな勢力であり、これまでの「使って、作って、捨てる」というサイクルをくつがえす可能性さえ秘めています。しかし最終的には、消費者である「あなた」の希望をビジネスが生産し、政治家が実行するようになるものなのです。何を食べ、何を買い、どんな仕事をし、何で移動するかなど、「あなた個人の選択」が今後の地球の存在を左右します。地球を癒すか、それとも壊すかについて、賢明な選択をしてください。
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