★阿修羅♪ > 環境・エネルギー・天文板1 > 395.html
 ★阿修羅♪
アメリカの農村社会が環境保護運動と仲違いしている理由とは? 【パタゴニア】
http://www.asyura2.com/0510/nature01/msg/395.html
投稿者 hou 日時 2006 年 3 月 29 日 00:30:13: HWYlsG4gs5FRk
 


http://www.patagonia.com/japan/enviro/reports/2005/loggerheads.shtml

by セオドア・ルーズベルト IV
『Winter 2005』カタログ掲載
環境保護主義者たちは、農村地域が抱える問題を理解して、党派を越えた強力な絆を築く代わりに、“あなたたちは私たちに何をしてくれるのか?”と要求ばかりを突きつけ、困窮する農村地域を傍観している。

アメリカの環境保護活動は農村地域に対して無頓着であるとする論評が、深い考察のもとに最近相次いで発表されているのは驚くべきことだ。たいていの環境保護主義者が望んでいないジョージ・W・ブッシュの大統領選挙での2度の勝利を導いているのも、環境保護運動からほとんど蔑ろにされているアメリカの農村地域である。ある専門家はこう分析している。「2004年の選挙では、共和党は都市近郊では票が伸び悩んだものの、農村部で相当数の票を獲得して勝利を得た。共和党が『与党』となりえたのは、農村部での強さが大きな要因となっている。農村部でのブッシュの人気と勝利は、そもそも共和党支持者が多い州だけでなく、民主党支持者の多い州でも顕著だった。農村部の有権者は、都市や郊外の有権者とは違った理由で投票をしたのだ」ジョン・ケリーはペンシルバニア州を制したが、それもピッツバーグ、フィラデルフィア、アレンタウンという都市やその近郊での得票によるものである。ブッシュの勝利は、過去に例を見ないほど地方と都市の分離を象徴していると言える。

多くの解説者は、ブッシュ色の濃い地域の人たちが重視するのは道徳的価値観とテロへの戦いに対する指導力であると考察し、環境を挙げる解説者は皆無に等しかった。しかし私は、ブッシュ大統領の勝利に貢献したのは環境問題であると考えている。公有地が広がる西部の山間地やアラスカ、太平洋岸北西部、および南部といった自然資源への依存度が高い地域はとりわけである。常に大多数のアメリカ人が支持政党に関係なく健全な自然環境を望んでいる、と世論調査が示しているにも関わらずである。では、なぜこうした矛盾が生まれるのだろうか。

その違いはアプローチの仕方によって決まる。共和党支持者の多い州でも、地域や州のレベルでは、環境保護推進派の候補者を支持している。例えば5つを除くすべての郡で共和党のブッシュが勝利をおさめたモンタナ州で知事に当選したのは、強固な環境保護を基盤にした民主党のブライアン・シュバイツァーである。つまり、モンタナ州の有権者たちは十分に理解していたのである。知事が環境における目標を達成するためには、全米規模の環境NGOや連邦政府機関といった利害関係のない人々の、あるいは官僚の政策を自分たちに押しつけるのではなく、知事自身がまったくの基礎から地元住民の合意を形成しなければならないということを。

農村地域に暮らすアメリカ人は、自分たちのコミュニティがその地域の自然資源に経済的に依存していることを、全国規模の環境保護運動が理解していないと感じている。さらには、自分たちの意見や生活、経済的困難などに対してさえ、否定的かつ軽蔑的な態度であることに憤慨している。けれども、残念ながらこの見解は、地方の人々を悪の根源と決めつけ、社会的公正に目をつぶり、真相を一部だけしか明かさないといった、欺瞞的な言葉と誤報を用いて全国運動を繰り広げる環境保護主義者たちの、農村地域に対する無神経さに基づいている。この農村地域の不満は、『World Watch』誌にマック・チェイピンが書いた「A Challenge to Conservationist:国際自然保護NGOを問い正す」によく似ている。これは発展途上国の先住民が「虐待的」だと感じる国際環境保護団体の不正行為に対する抗議を記録した記事である。

ここで、こうした傾向を顕著に表している例を挙げよう。原生地域擁護者であり同時に牧場経営支持者でもある私が悩み続けている問題である。もう何年も前のことになるが、ワイオミング州の国有林の一部を原生地保護区として指定する案が浮上したとき、その土地で80年以上も牛の放牧を続けてきた地元の牧場主たちが反発した。しかし指定区域での放牧方式は、連邦議会放牧指針の条件に沿っており、土地に与えるダメージも少ないため、放牧の継続は許可されるだろうと確約されたので、牧場主の代表者数名は提案に同意し、「美しい自然を守るために」と仲間を説得した。法案が議会を通過するためには牧場主たちの同意は絶対不可欠だった。ところがその後間もなく、地元の原生地域保護団体が方針を変え、連邦議会放牧指針の妥当な解釈よりも厳しい解釈を適用するよう米国林野部に迫り、指定区域から牧場主たちを強制的に追い出そうとした。彼らが裏切られたと感じたのは言うまでもない。最後に握手をして取引を固める習慣を持つような信頼関係を重んじる牧場主たちにとって、環境保護主義者の行為は恥知らずなものだった。このような経緯から、今日ではワイオミング州の同地域一帯での原生地保護区指定は不可能となったばかりか、この嘆かわしい経験により、牧場主は環境保護主義者に対する姿勢を硬化させてしまったのだ。

幸いなことに、全米規模のほとんどの環境保護団体は、自分たちがアメリカの農村地域で快く思われていないことを承知している。この事実を認めることは、今後の関係改善の上での重要な第一歩である。けれども私が言葉を交わした環境保護運動の指導者たちの多くは、問題なのは農村地域の人々に――彼らの言葉を借りるなら――環境保護活動家としての自覚がない点であると言う。私の経験からすると、この考え方は農村地域に対する蔑視であり、彼らを激高させることは間違いないだろう。なぜなら地方の人々は、無報酬で環境への奉仕をしていることに対する評価をほとんど受けていないにも関わらず、みずからを最前線の自然の番人であるとみなしているからだ。これに対して環境NGOは、地方社会を疎外する現場での方針や全国的なキャンペーンを継続する一方で、「メッセージの発信元は誰か」ということをすり変え、言葉のカモフラージュを微妙に使い分けながらメッセージを伝えているだけである。

その良い例として「任意放牧地買収勧奨制度」案がある。「任意」という言葉でまぎらわそうとしているものの、公有地での放牧は断固として望ましくないというメッセージを含むこの提案を、牧場主たちはまったく受け入れていない。この買収計画の提唱者たちは以下の要素を見落としているのである。
公有地での放牧に依存する牧場主の多くは、アメリカ南西部で4世紀にわたって家内制零細農業を営んできたヒスパニック系農家に代表される人々であり、彼らにとって牧場経営は経済的に重要なばかりでなく、非常に奥深い文化的意味を持つ。

漁場の健全性や生物多様性の豊かさの基盤となっている全米1億エーカーの私有放牧地は、連邦政府からリースで借りている公有地と地続きであり、ここで放牧できなくなれば私有放牧地も手放さざるをえなくなるだろう。

放牧場と野生生物保護区、および分譲地となった牧場の生物多様性を比較した科学的な調査によると、放牧場に生存する種の数は野生生物保護区のそれに匹敵するとともに、移入種の雑草が少なく、「ランチェッテ(小規模な牧場)」の数値をしのいでいる。

放牧は地球上最古の牧畜文化のひとつであり、文化的多様性の一部であり、アメリカの国力を担うものである。

放牧地の荒廃は統制なしに行なわれていた20世紀初頭の過放牧が主要因であったが、現在の牧場主たちは放牧地全体を統制するためのテイラー放牧法の制定を促進し、放牧地改革を先導した人々である。バッファローなど草を食む野生動物がほぼ消滅してしまった放牧地の健康性および活力は、厳しく管理された放牧に頼らなければならない。
環境保護主義者たちは、農村地域が抱える問題を理解して、党派を越えた強力な絆を築く代わりに、“あなたたちは私たちに何をしてくれるのか?”と要求ばかりを突きつけ、困窮する農村地域を傍観している。農村地域が生存するためにその地域の自然資源に依存する場合は、資源に対して権利を有する国も意見を主張する。そして国は、農村地域に対して、利害関係に付随する責任と義務を負わなければならない。この原則は、我が国の最も根幹的な環境法令である国家環境政策法で制定されている。けれども、環境保護主義者がこの法令のこの部分について触れることはほとんどない。

私有地は、種の保全に重要なばかりでなく(絶滅危惧種の60%は私有地で確認されており、その90%は生涯の一時期を私有地内で過ごす)、近い将来の環境保護政策に関する政治的な鍵も握っている。連邦政府の予算を考慮すると今後も政府による土地買収は見込めず、公有地をめぐる争いは状況を悪化させるばかりで、概して逆効果を招いている。これまでも公有地をめぐる争いは絶えなかったが、この十数年の間に事態は一触即発しかねない状況にまで達していることは誰の目にも明らかだ。最近、政治に圧力をかけて要求を迫る「プレッシャー・ポリティクス」を推奨するある環境保護活動家は「人間は動物と同じで、圧力だけに反応するものだ」と言った。私はこの意見には同意しない。広い範囲での政治的関心を望むならば、私たちは人間に対してもっと楽観的でなごやかな考えを持つ必要がある。

もし環境保護主義者たちが、共和党の保守派から選出された数多くの代表者の環境政策が正しくないと考えるのであれば、なおさら、私は共和党の基礎である農村地域が抱える問題や彼らが環境保護運動から疎外されていると感じる理由にさらにいっそうの関心と誠意を持って対応することを強くすすめたい。それでも、国家安全保障や道徳倫理の観点から、農村地域は共和党へ投票し続けるかもしれない。けれども、環境への一票が農村地域への一票でもあるならば、自分たちの代表に対して環境への投票を要請することもあるだろう。

それゆえに、今こそ環境保護活動家たちは、農村地域に暮らす人々への対応とその結果に関して、自分たち自身をしっかりと批判的に見つめなおすときなのである。これは政治的側面からだけでなく、生態学上かつ人文主義上、きわめて重要なことなのである。今まで通りの方法で保護案を提案し続けたり、見せかけだけの改善策を追求したりすれば、私たちはアメリカの有権者の決定的な枠を疎外し続けることになるであろう。

著者
セオドア・ルーズベルト大統領の曾孫であるセオドア・ルーズベルトIVは、ウォールストリートの投資銀行家であり、ハンターであり、牧場主であり、活発な自然保護論者である。Pew Center for Global Climate Change(ピュー気候変動センター)、The World Resources Institute(世界資源研究所)、The William Ruckelshaus Institute of the Environment and Natural Resources(ウィリアム・ラッケルズハウス環境自然資源協会)、Trout Unlimited(トラウト・アンリミテッド)、The Wilderness Society(ウィルダネス・ソサエティ)の役員を務め、現在アメリカにおける放牧産業の経済展望の安定を目指して活動を続けている。


「環境エッセイ」へ戻る

 次へ  前へ

  拍手はせず、拍手一覧を見る

▲このページのTOPへ       HOME > 環境・エネルギー・天文板1掲示板


  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。