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[2006年03月21日付]
春は多くの若者が新たな人生の一歩を踏み出すときだ。日本経済は、十数年ぶりに明るさが確実なものになってきたというが、地方経済や農業はいまだに北風にさらされている。農産物価格の低迷や高齢化、担い手の減少など、農家が置かれた環境の厳しさは言い尽くされてきた。しかし、そんな中であえて、農業を志した君の発想の力強さ、素晴らしさをたたえ、健闘を心から祈りたい。
君が農業を志したきっかけは何だったのだろう。親や親類、身近な人が農業に励む姿を見て、あるいは農業について語る言葉を聴いて、感ずるところがあったのだろうか。さもなくば、何かの機会に農業に触れた体験が君を、つき動かしたのかもしれない。いずれにせよ、農業の持つ魅力や良さに着目し、自ら担い手となる気持ちになってくれたことは、大変うれしい。
夢と希望に燃えて一歩を踏み出そうとしている君の熱い気持ちに、冷や水を浴びせるようで申し訳ないが、現実に農業が今、どういう状態に置かれているか、冷静に見つめる目と頭は、どうしても必要だ。その上で、自らの経営をどういう方向に進めていくのか、じっくり考えてほしい。
今、日本人の食は、すさまじい勢いで変化している。身の回りを観察すれば、すぐに分かると思うが、若い世代を中心に朝食を食べない人がたくさんいる。食べてもパンとコーヒーで軽く済ますなどという人も多い。昼食は外食するか、コンビニやスーパーで弁当などを買う人も珍しくない。夕食でさえ、外で食べたり、買ってきた総菜を利用したりする機会が増えている。栄養が偏っても、サプリメント(栄養補助食品)で調整すればいいという風潮だ。
食を担う農業は必死で変化に対応しようとしているが、なかなか追いつけないでいる。その間に輸入がどんどん増えて、食料自給率は40%にまで落ちてしまった。一方で米や牛乳、野菜、果物でも品目によっては生産調整せざるを得ないものもある。
長引く不況の中で消費者は、お金の支出に一層、厳しくなっている。今後、国産農産物は世界中の農産物と、品質や価格を、これまで以上に比べられるだろう。その上、最近の鳥インフルエンザや牛海綿状脳症(BSE)など一連の動きを見ると、農業の影響の大きさや責任の重さに、君は戸惑いばかりか、恐れさえ感じているかもしれない。
安全で安心できる食を提供し続けることは、そう簡単なことではない。しかし、米や野菜、果物、家畜などの命に囲まれて働き、その成果を消費者に提供する。おいしさが消費者の笑顔をつくり、命と健康を支える。人としてこんなに魅力にあふれた仕事は、ほかにそうはないだろう。北風に向かって旅立つ君に、厳しいことを書いたが、だからこそやりがいもある。活躍を大いに期待している。
http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/column/0603/21.html
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