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[2006年02月25日付]
人間優先だった施策のあり方を見直そうという動きが広がりつつある。景観も生き物も国民共有の財産であるとの認識に立ち、農水省も農業用水の修繕や農道の草刈りなどを支援する事業に乗りだす。20世紀には国民の胃袋を満たすためにだけ存在すると思われがちだった田んぼ水系が、実は多様な生物種のゆりかごであり、貯蔵庫であるという事実をアピールする絶好の機会でもある。積極的に行動し、税金の新たなばらまき施策であるとの批判を受けることのないようにしたい。
1999年2月。環境庁(当時)はメダカが絶滅にひんしているというショッキングな発表をした。メダカの学名「オリジアス・ラティペス」は「田んぼにすむひれの広い魚」という意味で、まさに日本農業の代表魚。圃場(ほじょう)整備が進んで田んぼと農業用水路の間に高低差が生じ、行き来できなくなったための減少とみられた。
カエルやドジョウも同じように減り続け、里山の生き物事情は様変わりした。そんな中で環境復元の運動が始まり、行政をも動かした。琵琶湖を抱える滋賀県は、魚が遡上(そじょう)して産卵できるように整備した田んぼに直接支払いをする事業に取り組む。かつての田んぼは、ふなずしの材料にするニゴロブナなどの繁殖場所だった。田んぼが輝きを取り戻せば、食文化もよみがえる。
減農薬運動の先進地・福岡県でも、直接支払いの基準となる生き物の指標づくりを目指して生き物調べを続けている。参加した農家は田んぼの生き物の多さに驚き、田んぼが「命のゆりかご」と称される理由を実感する。JA全農も社会的責任(SR)活動の一環として、田畑の生き物調査を広げる方針だ。
秋田県の田沢湖には昔、クニマスという魚がすんでいた。ところが、農地開拓・電源開発の名の下で強酸性水が注ぎ込まれ、世界唯一の生息地を奪われたクニマスは滅び去った。その前に別の湖に放されたという記録もあるため懸賞金をかけて捜索もしたが、一度失ったものを取り返すのは容易でない。
自然の復元力がどれほどあるのか、よく分からない。だが、森林やオゾン層の破壊などにより、当たり前に存在していたものがどんどん消えている。1日に100種の生き物が地球上から姿を消し、その速度はこの100年間で4万倍にもなったとする学説もある。水の価値は認識されるようになったが、田んぼや里山の環境も、それと同じくらいに貴重なものだ。
ひとたび価値がないとされたものに新たな価値を見いだすのは難しい。だが、田んぼは食料工場ではない。日本人の心のよりどころであり、多様な生き物のゆりかごでもある。まずは一歩を踏みだしたという点で「田んぼルネサンス」の発想を評価し、次のステップにつなげたい。
http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/column/0602/25.html
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