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動物福祉/欧州の消費者 改善要求
[2006年01月24日付]
家畜を対象に動物福祉の改善を求める声が欧州で強まっている。欧州連合(EU)が昨年末に行ったアンケートでは、圧倒的多数が畜産の現状に不満を表明した。欧州とは文化や伝統などに大きな違いがあるが、わが国でも消費者が畜産農家を訪問する機会が増えている。普段から消費者が何を求めているのか、アンテナを高くしておくことがますます必要となるだろう。
調査では、EU内の家畜が置かれている環境を「とても悪い」と考えている人が35%、「悪い」が29%いた。畜種別の回答では、閉鎖空間で飼育されることが多い鶏など中小家畜への「同情」が目立った。「改善」を求める声は9割で、肉類を輸出する国々にもEU並みの水準を課すべきだが95%を占めた。
動物愛護団体や広範な消費者の関心に押されるかたちで、EUは10年前から家畜が「感受性を持つ生き物」であることを認め、不必要な苦痛を与えることを禁じた。1998年の規制では食肉、酪農、羊毛、皮、毛皮生産を目的とした動物だけではなく魚、は虫類、両生類も含めて「5つの追放」原則を徹底することになった。
飢餓、不適切な環境、痛みやけが・病気、狭い住環境、不安がその5つである。家畜が本来過ごしているライフスタイルから大きく逸脱するような飼育は許されない。鶏は止まり木に止まって眠る権利があるし、本来、山野を歩く牛を舎内だけに留め置くことも違法だ。昨年は、家畜の出荷方法について規制が強化された。輸送時間が規制内に収まっているかなどを調べるための、衛星利用測位システムの装着をトラックに義務付けることなどが盛り込まれた。
厳密な動物福祉の規制を、畜産の現場に導入することについては、欧州の農家の間にも不満が出ている。昨年末まで緑の党代表が農相を務めていたドイツでは、欧州基準よりも厳しくしようとする連邦政府と、農業団体の摩擦が日常的に起こっていた。だが、多くの消費者が求める声を無視して農業は存在できない。
「生産現場を隠すのではなく、消費者に見てもらうことが大切だ」。1年前に訪れたドイツの酪農家は、消費者の不信を解消するために透明性が求められていると言い切る。
わが国でも、消費者に美しい牧場を開放し、国産畜産物の消費拡大につなげようという試みがある。昨年6月に改正された動物愛護管理法は、主にペットや動物園の展示動物、実験動物に焦点を当てて適切な管理を求めているが、産業動物(家畜)への規制も検討される見通しだ。普通の国民感情や文化、伝統を大きく超える規制強化には反対だが、消費者が望むのであれば動物福祉の精神を取り入れることは前向きに受け止めたい。消費者が求める畜産物を供給し続けることが、日本の畜産業にとって最大の課題だからだ。
http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/column/0601/24.html