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(回答先: 「20年周期説」 投稿者 カムイ 日時 2005 年 12 月 30 日 02:35:02)
タイトルで最も遅くとしたらよいのか、最も早くとしたらよいのか分からなかったのだが、小生は、6月の梅雨入りにはまだかなり間のある時期に、赤石山脈(通称南アルプス)で降雪を経験している。5月の連休辺りでの降雪は3000b級の高山では珍しくはないが、6月初旬ではおそらく記録的なものではないかと、小生は思う。
【大聖寺平からの荒川岳(上) 百間洞からの大澤岳(下)】
6月何日だったかは記憶していなかったが、写真が残っていてその裏に1964年6月5日と書いてある。5、6人用の夏山テントを相棒と担いで遠山郷から聖岳〜赤石岳へ縦走し小渋湯に下山、という計画で大阪駅を出発した。6月だったので服装は夏山用の軽装だったはずだ。計画では山中1泊2日の予定だったと記憶する。
国鉄(現在JR)伊那線の平岡駅から遠山川の○○渡(沢と沢の合流点だが地名を記憶していない。たしか営林署の森林軌道が通っていた。現在は軌道を剥いで林道になっていると思う)まで行って露営。翌日、一気に小渋湯をめざして露営地を出発、聖平という鞍部で南アルプス稜線に出る。稜線に出るともう雪が舞いだしていたように思うが、その点はっきりしない。聖岳に向かう頃は雪田や雪渓に新雪が積もり、不用意にスリップしないよう気をつけ、それでも快調に尾根筋をたどっていった。午後かなり遅くなって赤石岳、小赤石岳を越えた頃、夏路は完全に積雪でたどれなくなった。小生と相棒はすっぽりと雪とガスの白い悪魔に捕らえられてしまったのだ。
赤石岳と荒川岳(悪沢岳ともいう)との鞍部を大聖寺平と呼ぶのだが、この付近の尾根がやけにだだっ広くて、尾根の斜面と谷へ下りていく斜面の区別がまるでつかめない。磁石を頼りに北進するのだが、いたずらに同じところをぐるぐるまわるだけ。方向をまったく失っていわゆるリング・ワンデリング状態に陥ってしまった。
夕刻、疲労困憊して休憩すると、ゆらりと白い闇の中から登山者らしき姿が現れる。幻覚だ。もう行動することは不可能だ。相棒と二人で雪の斜面を固めて野営することを決断した。食事をとり、シュラフに潜って寝ようとした時、すっと一陣の風が吹き、一瞬だが荒川岳山頂付近が姿を現した。角度から見てどうやら登山ルートを大きくはハズれていないらしい。疲れの中にも勇気がわいてきた。
傾斜のためテントの隅で折り重なって目を覚ました二人は、翌朝、前日とはうって変わって見通しのよい天気に恵まれた。登山靴をうっかりして抱いて寝なかった小生は、凍った靴のために靴擦れをおこした脚を引きずりつつ、それでも大聖寺平から小渋湯をめざして転がるように下山した。
後にも先にも6月の降雪はこの時限りであるが、これが記録的なものかどうかは確かめはしていない。