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内外規範
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投稿者 人魚人(にんぎょじん) 日時 2006 年 4 月 27 日 20:56:45: v7JOkZlcCjoro
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

成長と内実規範

●概念の意味

内実規範というのは「規範が個々の内部に有る」というほどの意味です。
ここでは「他の項目」との関連から、内実規範という表現を採りますが、
この種の概念そのものは「かねてより」無数の亜種変種を伴いながら、
夥しい「思索家」によって研究対象となってきた経緯があると思います。

そして、この概念に関して何より大切であろう点は、この内実規範という
概念は誤り(不能、規範に位置づけるのには不適当)と思われる、という
側面です。特に「規範」という概念が「被害」という概念と直結していると
仮定した場合、それは決定的なものとなるでしょう。つまり規範が被害を
防ぐために有る(先行説)、ということなのだとすると「他者の被害」という
形で規範を規定するのは「外」となり、外部の問題になるはずだからです。

もちろん被害というのは加害者・被害者の両者に跨る問題であるでしょう。
したがって他者ではなく、より客観的に(両者と第三者が正当な判定と認め
られるように)判定する(ないしは予め想定し、判定しておく)のがよいのかも
しれません。ところが、自己の「内なる声」(深層の感覚、快不快、事象への
好悪の情)に基づくというのでは、被害者の被害自体からは遠退いてしまい、
最悪の場合、本末転倒で他者が無視されてしまう懸念があるでしょう。ここ
では、個別(を想起する)問題に留めるつもりですが、信仰・民族・国家・科学と
いった共同利益の名で同様の論理操作を施す場合が想定できるわけですね。

内面に、行動を規制する表象の構造として映るような「良心の呵責」という
ことであれば、それは、経験に基づく「他者被害の像」(不完全な投影)に
過ぎないことになると思います。内面に先験的に、完全な規範が有るという
保証は無いでしょう。単に被害という事実が外部に観察できるというだけなの
ですね。つまり、内面に有る像が実は外部に由来するものかもしれない点で、
それは二次的(不完全な投影)ではないかと思われるわけです。そうであるならば
人は、内面に置き換え、摩り替えられた「仮象」に依存するのではなく、外部への
直視によって(寧ろ自己を些かも誤魔化すことなく、)他者がいかなる被害を得て
いるかを観察すべきであろうし、夢想や(政教概念)に「逃避」すべきではない
と思うのです。「内なる声」に従うということは、少しでも自他に見解の違いが
有った場合には他者を無視する結果になりうると思います。このとき他者の見解
(訴え)が必ずしも正当でないことをもって他者を無視するというのは、早計または
欺瞞でしょう。問題は他者の見解そのものにではなく、究極には他者にとっても外部
といえようところの他者の被害という部分に直接、依拠すべきであるはずなのです。

●補助概念としての成長

この問題の要素にはもう一つありますね。もし自他(や、自他の関係、自他の外部)
との差異を生じた場合には、成長することで実現するという過程説特有の先送りが
見られるでしょう。この免罪があるかぎりで、どこまでもズレは許容していけますね。
しかし成長するというのが、けっきょくのところ外部に一致するということなら、起源
(基準の在り処)はどこまでも外部にありながら、それを成長という、積極的内部
(主導するのはあくまでも自身の「決定」だ)として旨く内部化できるのですね。しかし、
これは自ら選び取るような自由の問題ではなく、徹頭徹尾の、他者の被害という規範の
問題なのだと思います。そうであるなら、今すぐ規範は実現している必要があるはずで、
成長にともなって追い追い修正していくズレなどあってはならないはずです。自己に
迂回し、事実を洗浄することなく、外部を直視するのが答えであるなら、成長というのは
何かというと、あらゆるズレを容認し、外部との一致を限りなく遅延させる、恣意の猶予に
過ぎないことになりますね。規範は強制であるところを、それを薄めて、さらには、
それを愉快なものとして置き換えることで誤った規範を流布しようとしているとの
意図(あるいは受容誘発性、偽善による駆逐)がありそうである、というわけでしょう。

そして成長や学習が快適で万事が旨くいくという論理は、成長や学習が快適で
あることと、そもそも他者の被害とが無関係であるのだとすると、成長の快適性に
ついても規範として何の意味も持たないでしょう。のみならず、これは動機付けの
演出として退けるべきだと思います。もし内外が連動しているとしても、内にあるのは
外来の、快不快の経験則(条件反射の束、後付け)のようなものではないでしょうか。また
全てが同時に解決するというのは恐らくは造形的・省力的な願望(無根)ではないでしょうか。

●成長不能性

成長するということは、「成長によって失われる長所」の(例えば仮に子供が知恵を
得て大人になるときに喪われる、子供一般の属性として認められるような「良さ」の)
捨象、ということと同義でしょう。そういった変化は無条件に成長という単線の延長上に
置けるものではないはずですね。(これは細分された要素軸上で独立して発展していく
という、複合的なパラメータの問題として、およそ表象面に描き出される種のものなので
しょう)。もちろん個別の人間全体として長所、短所を取り替えながら、右に左に、
ジグザグの往復または螺旋状に上昇するような弁証過程という想定も出来るかに
見えると思いますが、子供であることと、大人であることに甲乙をつけがたいならば価値に
おける変化量ゼロ、すなわち変化しながらも不成長となりうる(さらには等価説もある)でしょう。

●過程化

過程のうちに置くという操作は、段階における不備の赦免として作用し
ますね。過程のうちに置くために背景世界を想定する「需要」を成す
というのが壮大な転倒として引き起こされる形は実は、ここでは「不
思議」でもないのだと思います。なぜなら「日常世界よりは法則宇宙の
空間が小さい」であろうから、自由な操作対象となる概念素材として用いる
ことができるはずなのです。知りえていることによる制約が少ないの
ですね、むろん余り知りえていない伝聞世界であればこそ。

●検証不能性

それが内面に有る限り、他者の検証を免れうるでしょう。加害者同士が
内実規範を相互承認することで、不特定に対する共犯関係をつくることが
可能となるでしょう。加害少数の判断で形成された「実体の無い概念」を
前提に、少数が独断で善悪を運用できる(規範を随時改正できる)ことに
なってしまいかねないでしょう。そのことで、加害少数の利害が一致する
状況が生じてくるはずです。しかも「検証されない」という難点を、論理から
切り離すために別の思想を用意することで、さらに強固にもできるはずなのです。

●前提条件

一つには、より有利な背景思想として「外部というものの
実在一切を認めない」とする前提を要求するでしょう
(不在論、相対論)。いま一つには、自他の合一を前提
として論理補填する必要が生じてくるかもしれません(不分節)。

●心理要因

そこには、論理性よりも、自己の感覚を優先したいという欲動のようなものが、好都合な、
(けっきょくのところ)論理操作を得て自他の顛倒に「成功」しているということがあるかも
しれません。そしてそれを「発見」したことによる肯定動機、また「正論や論理
自体を覆しえた」という錯覚の持続が、自説を強化しているものと思われます。

●なぜ「改めない」か

「内実規範が論理矛盾に在る」と気づいていない場合や、意図的に用いてきた場合には、
それを認めることは難しいでしょう。また余所で趨勢の公認評価を(それがいかなる価値の
組み合わせであれ)得ている人の場合、そこで敢えて糊塗して(無理をして)内実規範を護持、
貫徹しても、生活(もしくは生活への名誉)が最終的に脅かされること
(危険)が無いと漠然とでも自覚しているのだと思われます。

●なぜ「改めない」か 2

また内実規範を知る者が、少数しかいないという錯覚(特権性、全能
感)を活用することで、加害少数の「独断」のみで結論づけることが「自己
許容」され、頗る効率が良い、との目的性の温存をも指摘できるかもしれません。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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