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                “当時から「時代遅れ」の荒唐無稽な「宇宙ミサイル」構想(と宇宙開発)”
http://www.asyura2.com/0510/lunchbreak6/msg/421.html
投稿者 防護マスクの着用 日時 2006 年 3 月 10 日 22:35:08: js706HXB5.lYA
 

http://www.qiuyue.com/gendai/tmdkaisetu.htmからの引用」

 
 

戦域ミサイル防衛・「TMD」構想についての解説
< Theater Missile Defense >
 
 
戦域ミサイル防衛、略称「TMD」−−− Theater Missile Defense−−−とは、冷戦後のアメリカによって提案されてきた「戦域防衛構想」の一つである。昨今の北朝鮮の「ノドン」・「テポドン」など中距離弾道ミサイルの発射実験を受け、にわかに注目され始めてきた。では、この「TMD」とははたしてどういうものだろうか・・・。

1.「TMD」構想の経緯
まず、「TMD」はどのような経緯で考えられたものだろうか?かつて冷戦の時代、アメリカ・ソ連は大量の弾道兵器を同盟国・関係国に輸出していた。しかし、冷戦が終結すると共にこれらの弾道ミサイルは「第三世界」の国々にも拡散し、その保有国は29ヶ国以上にもなっている。そのため、弾道ミサイルはその周辺の国々に驚異を与えるほどの存在になっていた。北朝鮮の「ノドン」、中国の「CSS」、イラクの「スカッド(アル・フセイン)」などは旧ソ連の技術をベースに開発されたものである。それに対し、韓国、台湾、イスラエルのミサイル群は、アメリカの技術を転用したものである。これらのミサイルの弾頭にCBR(Chemical、Biological and Radiological−−− 化学・生物・放射線)兵器などの「大量殺戮兵器」が搭載されるかもしれないという想定の元に、TMDの開発が着手された。

実はこのTMD技術のベースとなっているのは、かつて冷戦時代のロナルド・レーガン大統領政権下、アメリカのエドワード・テラー博士が中心になって考えだされた戦略防衛構想「SDI」−−− Strategic Defense Initiative −−−通称、「スターウォーズ計画」(戦略核ミサイルに対する防衛構想)である。

SDIは、ソ連の「戦略核ミサイル」の攻撃を宇宙空間で全て防御するという構想の元に推し進められた。これに対してソ連は、SDIは「ABM(Anti Ballistic Missile)・迎撃ミサイル制限条約」に抵触するとして反発、米ソ間の核兵器削減の大きな障害となった経緯がある。この「SDI」に投じられた額は3兆円、参加した企業900社、大学・研究機関は1000を超えている。だが、それほどの巨費を投じたSDIも未完成のまま冷戦の終結を迎えた。(しかし、このSDIの「ハイテク競争」がソ連を疲弊させ、崩壊を招いたという見解もある。)このことからTMDの根底には、SDIで実現可能な技術を取り出し、これまでの投資を回収しようとする「軍・産複合体」の意志が働いているとみることもできる。

アメリカでTMDが前面に出てきた背景には、クリントン政権下の中間選挙で共和党が圧勝したという背景もある。共和党は選挙公約で、ミサイル防衛の強化を掲げていた。この選挙期間中、アメリカではミサイル防衛に関する放送が流れていたが、この放送を流していたのは「CDA(アメリカ防衛連合)」といい、かつてレーガン、ブッシュ政権時代に「SDI」などの構想を展開していた政府高官、議員たちがメンバーとなっている。彼らはTMDを長距離核ミサイルが迎撃できるような性能にまで持っていく事を想定している。彼らはこの時期、既に北朝鮮が日本や韓国などに驚異となる事を予想し、日本に対してTMDを採用する事を期待していた。(既述のエドワード・テラー博士もまたCDAのメンバーである。)

※「SDI」についてはいずれこのコーナーで解説する予定。


2.「TMD」システム
では、具体的に「TMD」システムとはどういうものであろうか。SDIほどではないにしろ、その技術は真に驚異に値する。アメリカが開発するTMDは、他国から発射された射程80〜3000kmまでの「弾道ミサイル」の攻撃を想定した防空システムであるとする。弾道ミサイルの飛来の仕方にあわせて、個別の「迎撃ミサイル」を発射し、「宇宙空間」、「高層域」、「低層域」で迎撃する。それぞれを担当するミサイルは、「LEAP」、「THAAD」、「ERINT」の3種類となる。

(1)LEAP(リープ)ミサイル −−− 「宇宙空間」
宇宙空間での迎撃を担当する。イージス艦に搭載し、敵の領土に近い海上から発射する。アメリカ海軍主導で開発された宇宙兵器。相手のミサイルの発射を感知すると、高度400kmの宇宙空間に打ち上げられ、そこで「迎撃体」(これを「キネティック弾頭」という)を切り離す。その迎撃体が起動上で待ち伏せし、ミサイルの熱に反応(キネティック弾頭に取り付けられた「赤外線シーカー」・・・赤外線を捕らえる「目」によって追尾する。この装置は近年の「追尾型ミサイル」に多く取り付けられている)、激突する。この迎撃体には上下左右に移動できるブースーターがついているため、軌道に対して「面(2次元的)」の待ち伏せが可能となっている。その移動は非常に安定・スムーズで、例えるなら「UFO」を思わせるような動作が可能である。また、この迎撃体自体には炸薬を内蔵せず、破壊には飛来する弾道ミサイルの「運動エネルギー」を利用する。

(2)THAAD(サード)ミサイル −−− 「高層域」
「Theater High Altitude Area Defense」(戦域高々度広域防衛)。TMD用に陸軍の主導で、ロッキード社が開発している高層域用迎撃ミサイルである。(「TMD」システムを支える構成の中で、最も高度な技術を必要とする。)高度約150kmの高層域を担当する。このミサイルは、相手の弾道ミサイルの動きを自動的に測定し、弾頭部分を直撃、破壊する事を目的とする。このTHAADミサイルは、旧ソ連の長距離核ミサイルを迎撃するために開発されたものをさらに高性能化したものである。秒速7km(音速を1,224km/hとした場合、約20マッハ)というスピードで突入してくる弾頭を打ち抜く性能を求められている。だたし、弾頭部分の破壊は、現在のコンピュータの性能でどこまで可能かは未知数である。

(3)ERINT(エリント)ミサイル −−− 「低層域」
低層域(高度17km)にて迎撃する。アメリカ陸軍、ローラル社の開発。着弾直前の弾頭を迎撃、破壊する。

(4)ブリリアント・アイズ −−− 「指揮・命令系統」
TMDの指揮・命令を行うのが宇宙空間に50個打ち上げる構想の警戒監視衛星「ブリリアント・アイズ」である。これは敵のミサイルの発射を探知(例えば熱源探知)すると、その弾道を追尾し迎撃ミサイルに指示を出す。

以上、(1)〜(4)の構成、またはその一部、またはいくつかのオプション(AWACS、PACなど)となっており、結果的には「陸軍」と「海軍」がそれぞれ独自に開発するミサイルを組み合わせて運用する、「複合的なシステム」となっている。

※AWACS
「Airborne Warning and Control System」。空中警戒管制機またはシステム。ボーイングE−3、E−767など。

※PAC
「Patriot Anti−theater−missile Capability」。「パトリオット対戦域ミサイル能力」。対地弾道弾迎撃能力を持たせたパトリオット・ミサイル。湾岸戦争時に使用されたものから大幅に改良されたもの。


3.日本における「TMD」システムの展開
TMDに関するアメリカからの働きかけは1993年頃から既にあった。ヒューズ社など、実際に提案をしている企業のコンピュータシミュレーションでは、現在の極東の状況をかなりの精度で予測している。また、ロッキード社はTMDの主力兵器となるTHAADミサイルの開発を請け負っているが、日本では三菱商事が既にこの代理販売契約を結んでいる。これらを受け、日本では衆院予算委員会でTMDに関しての質疑があり、政府は平成7年度の予算に2000万円を計上するとの回答をしている。(このことは当時の中国に対し不満を与える結果となった。)

アメリカは日本に対し、TMDを一括購入するか、共同開発するかを提案していた。その際、アメリカは北朝鮮・朝鮮民主主義人民共和国の驚異について触れている。(このころはまだ「ノドン」が対象である。)日本では、1994年、「防衛問題懇談会」を発足し、その際TMDについても議論されている。日本でのTMD議論で問題になるのは、「宇宙空間の平和的利用」、「集団的自衛権」である。「集団的自衛権」に関しては、日本への直接的攻撃でなく、その同盟国への弾道ミサイルによる攻撃を、日本のTMDを使用して迎撃した場合、これに抵触する可能性があるというもの。「宇宙空間の平和的利用」に対しては、「LEAPミサイル」が宇宙空間で弾道ミサイルの迎撃を行った場合に抵触する可能性がある。

また、TMDについては日本に対する有効性、政策の整合性、費用対効果についても研究する余地があるとしている。しかし、防衛問題懇談会の中間報告書は、TMDの必要性をといた内容になっている。いわく、「日本自身が、弾道ミサイル対処能力を持つ必要がある。この分野の研究の進んでいる米国と協力しながらこのようなシステムの保有へ向けて、積極的に取り組むべきである。」

さて、これらの経過はアメリカでも注目されており、後に次のような数パターンのオプションを設定し、提案を行ってきている。これは「驚異となる国」をどこに設定するかによって装備する内容が変わってくるためである。

(1)「北朝鮮のノドン1号への対処を想定」
これに対するTMDの構成は、「イージス艦」(LEAPミサイル)2隻、「ERINTミサイル」24基、「AWACS」4機、「監視レーダー」1基を装備するとしている。

(2)「中国・北朝鮮のミサイル攻撃への対処を想定」
「イージス艦」(LEAPミサイル)6隻、「ERINTミサイル」24基などとなっている。この場合、費用は1兆6300億円、関連費用を含めると2〜3兆円規模という巨大なプロジェクトである。

(3)その他
中国を含んだ対策として、さらに「THAADミサイル」を導入したシステム。これらのシステムは、中国の「CSS」などの中距離核ミサイルに対処することを目的にしている。

日本でTMDを運用する場合には次のようなものも使用可能となる。
(1)日本が所有またはこれから建造する予定の「イージス艦」に「LEAPミサイル」を搭載する。
(2)地上発射のミサイルシステムとして、現在自衛隊が配備している発射台を改良する。
例えば「改良型パトリオット・ミサイル」などである。


4.「今そこにある危機」−−−
1994年「米朝核問題合意」が成立した際、日本は北朝鮮の核の驚異が薄らいだと判断したが、アメリカではさらなるTMDの研究が日米間で必要と強調していた。(現在、この判断が正しかった事を痛感している人も多い事だろう。)

その後アメリカの共和党はTMDを冷戦時代の規模で強化するという提案「ミサイル防衛早期建設法案」を可決した。民主党は、開発費を同盟国に負担させるという条件で、TMD計画に賛成するという立場を明確にしている。日本は結果的にこの条件に組み込まれる事になる。

湾岸戦争の際、イラクがイスラエルに対して発射したスカッド・ミサイル「アル・フセイン」に対し、多国籍軍は「パトリオット・ミサイル」で応戦したが、そのほとんどは(限りなく100%に近い!)迎撃に「失敗」している。このことは、ミサイルによってミサイルを打ち落とす事、そのなかでも速度の大きい「弾道ミサイル」を打ち落とす事がいかに困難な事かを示している。特に現在高度な「迎撃技術」を持たない日本の場合、迎撃は100%不可能と判断すべきである。日本は「今そこにある危機」を回避するために、政治的・軍事的にも「いくつかの努力」をする時期に来ているのではないだろうか・・・?





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