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これほどまでに世界観の完備したコンテンツはまたと
無かろう(…シベリウスが、マーラーがどうした)。
しかし、だからとて深く穿ち貫いたドイツ音楽の
脈絡からは抜け出られない弱みがあるはずなのだ。
この一国の宰相は、啓蒙の一貫として“国民の百目”を付き随わせ、それを以て歌劇・楽劇鑑賞を、鑑賞の体で
ほのぼのと伝えさせるかのように仕向けながら、しかし“いかめしいワグナー”の、親しくも優しげな下地からの、
行楽(こうがく)を目論んできたのかもしれない。
もしも渡英、留学に相前後し、出入りすること頻りの接触を受け、幾人もの女性を殺めたのなら、
“酷薄な神神のみ選ばれし神話”とやらを地でいくことが、そのことで更に(その地下でも!)、
(これは近しい間でのみ知る)真実の名で、裏づけさせることが叶おう?
補欠どもが、急な出に備えた影武者や、物陰に積まれた冷たい蛋白として表に出ないとするならば、
(そしてむろん、かの“有志のイメージキャンペーン”でもあるまいが)
相当程度の悪運にこそ恵まれ、傍目にも栄誉な人形を演じつつ、まさに(!)自らの周りを回す、
夜長の芝居に打ち興じるのであろうな。
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ともかく、情念を解放する働きをも持つであろう上質の音楽であるはずで。
古い鉱泉を積極的に浴び、世事の毒気を清め去り、想を練らしめ、
体の内側から沸騰させているという、そのいずれか、ないしは全部だと思う。
この程度の、「国権の代表」を勇ましめる超人化で、即死人が出るとも思えないが、
組み合わせが許せばワグナーは、世に晒されている肉体を借り、すぐにでも
復活を果たすだろう。(それにつけてもドイツ限定というのが痛いな)
ともかく、ありうるというこの一点に対してだけでも、事情に適うなら、警醒したいのだ。
もとより、人は科学の秘薬で、芸術以上の手を、器官に入り込ませてくるだろう。
手段が精巧な装置でなくとも、そしてたった1箇所にでも、
新しい壺に作用することを見出した鍼灸師ならば。
ワグナー設計の木のホール、そして(手になる)木の椅子が震え、
「迫られた音の全て」と、物理的な音の奥底をも体験させるものならば、と。
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他の国はワグナーに代わる装置がないようだ(取り替えが利かないということは、
それだけで既に、それなりの優越性だろうな)。
ドイツ限定であるとの占有(ロンギヌスならば人手に渡るはずだ)がヒトラーを
「これならいける」と狂喜させたんじゃなかろうか。
またはヒトラーの“後見人”を、プランを練る最初の調査段階で膝を打たせたとか。
ワグナーに代わる装置ということになると、基督に対する現人の象徴ぐらいに
機能性が“ダウン”するかもしれない。
もちろん近代国家が幼生でないなら、それでもいいのだろうけれども。
感じとしては、ポストワグナーを国内で狙っていた輩もいたようだし、
といっても支援では浪費できても「演出の才を演出」するのは
(むろん無理ではないとして、ただ鼓舞するのには)無意味だろう。