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夢寐のだいたいのイメージ(多少は差異がありうる)
この程度の門
お好み焼き2種類を、持ち帰りで買うのに迷っていたのである。
なるべく安く買いたかった。食品街を一旦出ると路地も薄暗く、
震災後の更地のように荒れていた。そこでは浅黒い顔のオジさん達が屯していた。
紺の防寒服である。薪にも火が尽きている灰色の世界だった。
じつは買い物を私よりも先に済ませた人がいて、その人が両方のお好み焼きを計1円で
買ったのだ、と別の男が、自慢めかして私に紹介してきた。その人は私が知っている2人の
人物を掛け合わせた顔をしていた。そのとき、私は「何故いつもそうなんだ」と呻きながら、
その人の臀部を何度も軽く、膝蹴りしていたのである。
そのとき俄かに市場のほうがザワめいて、遂に私に順番が回ってきたと知らされ、
お好み焼きを貰いにいくと、私に応対した男は何故か、乾電池も半額になる
と言うのだ(そういや今、電子辞書の電池が要るのだった!)。
店舗の床よりも低いボックスにいた案内係は、背を向け、
餅か饂飩をこねながら、乾電池の値段を計算するのだが
数字がおかしい。「だいたい、こんなもんっしょ」みたいにいう。
「いや、半額と書いたんなら、きちんと半額にしないと」というと、
気まずい重い雰囲気に沈んでしまい、「ま、そういうことはいいんですけど」と負けてあげるしかなかったのである。
ショボイついで
そこは、旅行者が立ち寄る高層階のサロンだった。
何のサービスをするゲストルームなのかは分からない。
私は事情があってここにきているのだが、その事情がまたよくわからない。
ただ旅行者が集まるわりに、言葉の通じない場所であることは分かるのである。
そこでアジア系の丸顔で痩せた小男が、はっきりした日本語で「彼女はいますか」と質問してくるので、
一瞬間をおいて「います、います」と答えた。すると「いないと思う」と困り顔で言い残し、消えてしまった。
なぜに外国まできてそんなことを言われなくてはならないのかと落ち込んでいると、
アジア系のスレンダーな艶っぽい美人がきて、以前から日本の私のことをよく知っていたらしく、
しつこく口説いてくる。彼女のストレートな物言いに私は気圧されてしまっていた。
そうこうしているうち‥‥その話が過去に及ぶとともに何故だか、その室内には‥‥古い家並みのシルエットが忽然と現れてきて、
夕闇の、藍色の空に散る黒雲の群れに、赤い雲が僅かに走る、余りにも広く深い、別の世界が拡がっていくのだった。
もしかしたら、これが、いま手にしているシングルCDに入っていた映像体験だったのかもしれない。
このCDを返しそびれ、いつまでも手に持っていた。どう言って受付に戻せばいいのかも判らず、
こっそり、閲覧コーナーの本に挟んで、置いて立ち去ろうと考えた。
すると‥‥機会を窺っていると‥‥なにゆら急に、
その室内空間に濃い緑、濃い青がひろがり、ゴルフ場のような、ひろびろとしたスロープが
重なってくる‥‥その中腹ぐらいには、よくわからないが‥‥何頭かの巨大な動物が
立ち上がっていたのである。バンカーのように池があり、スロープの底のほうでも、
象の群れのようにして、恐竜達が首を伸ばしたりしていたのだ。