(回答先: 今、20代の若者が、50年後、9・11事件が米政府内部の特殊工作であることが解明されたら？ 投稿者 ジャック・どんどん 日時 2006 年 2 月 06 日 23:47:49)

民衆は健忘症なのだ。

http://www2u.biglobe.ne.jp/~akiyama/no55.htm

第５５回　戦時体制下のラジオ放送(2001･4･20記)

●「臨時ニュ−ス」差し止め

「７日夜半、北平（ペ−ピン＝いまの北京）郊外盧溝橋で、

　　演習中の日本軍が中国軍から不法射撃を受け交戦、これを撃退」

　これは１９３７（昭和１２）年７月８日午前１０時すぎ、同盟通信天津支局から日本放送協会報道部へ入った盧溝橋事件の第１報である。放送局側は満州事変の時に「臨時ニュ−ス」を出した経験から、直ちに「臨時ニュ−ス」を出そうとしたところ、監督官庁の逓信省から差し止められた。「事件不拡大、現地解決」という政府の方針が理由だった。結局、１２時４０分からの「定時ニュ−ス」を待って２時間４０分遅れで放送した。　

　ところが、４日後になると、政府は陸軍の圧力で２個師団の「北支派兵」を決定。近衛文麿首相は新聞・放送の代表に挙国一致の協力を求めた。もともと厳しい規制のもとでスタ−トした放送はこの頃から一層窮屈なものになって行く。

　盧溝橋事件とは、日本軍が敵方と味方に分かれて演習中、敵方が演習中止を知らせる伝令に誤って空砲を発射したところ、中国軍が呼応して発砲したのが発端だと知られている。しかも、この騒ぎで「日本兵一人が行方不明」の報告（実は初年兵が道に迷い、３時間後戻った）が行われ、中国軍にら致されたと早合点した関東軍は「不法射撃」と強硬に主張、緊張が高まった。日本軍は、派兵による一撃で決着をめざしたが、中国軍は徹底的に坑戦。その後、戦火は上海、南京に飛び、宣戦布告のないまま「支那事変」へと戦争は拡大して行った。　

　昭和天皇は『昭和天皇独白録〜寺崎英成・御用掛日記〜』（文芸春秋社１９９１年刊）で、「之は支那の方から、仕掛けたとは思わぬ、つまらぬ争いから起こったものと思う」と述べている。

　一方、盧溝橋事件を現地で取材した朝日新聞の常安弘通特派員は後に次のように記している。

「たなばた様の晩に北支那で第二の柳条湖事件＝満州事変が起きるという謡言が、はるか海を越えた東京三宅坂あたりに、ある程度の迫真力を持って伝えられていたという事実は、ずっとあとになって聞いた」（遺稿集『今や昔』芸文堂１９９１年刊）　

●デスク席に放送禁止簿

　戦火の拡大とともに、報道規制が一層厳しくなり、盧溝橋事件の起きた翌８日から８月末までに２３通の通達・通牒（内務省１７、陸・海軍省４、内務・陸・海３省連名２）が出された。ざっと２日に１回の割り合いで通達が出されたため、番組制作現場では、デスク席に分厚い「放送禁止簿」を備えて、これを参考にしながら番組を作っていたという。先の湾岸戦争で米国のペンタゴンが発表した「報道機関へのガイドライン」「“砂漠の盾”作戦グラウンドル−ル」と酷似している部分があるのに気が付く。少し長くなるが、主な通達の一部を紹介しておこう。　　　　　

「時局ニ関スル記事取扱ニ関スル件」

（内務省警保局　昭和１２年７月１３日付）

「報道差止事項」

�@反戦又ハ反軍的言説ヲ為シ或ハ軍民離間ヲ招来セシムルガ如キ事項

�A我ガ国民ヲ好戦的国民ナリト印象セシムルガ如キ記事或ハ我ガ国ノ　対外国策ヲ侵略主義的ナルガ如キ疑惑ヲ生ジセシムル虞アル事項

�B外国新聞特ニ支那新聞等ノ論調ヲ紹介スルニ当リ殊更ニ我ガ国ヲ誹　謗シ又ハ我が国ニ不利ナル記事ヲ転載シ或ハ之等ヲ容認又ハ肯定ス　ルガ如キ　　言説ヲ為シ延テ一般国民ノ事変ニ対スル判断ヲ誤マラ　シムル虞アル事項

�C前各項ノ外時局ニ関シテ徒ニ人心ヲ刺激シ延テ国内治安ヲ撹乱セシ　ムルガ如キ事項

「新聞掲載事項許否制定要領」

　　　　　　　　　（陸軍省報道検閲係　昭和１２年７月２８日付）

（要旨）

�@軍旗を持った部隊の写真、軍旗に関する記事

�A旅団長（少将）以上の高級将校の写真

�B多数幕僚将校の集合している写真、司令部などの名称

�C特殊自動車、例えば装甲自動車、給水自動車その他の記事、写真

�D中国兵または中国人逮捕尋問などの記事、写真のうち、虐待の感を　与えるおそれあるもの、残虐な写真

　これらの結果、例えば、南京占領時、虐殺された非戦闘員や捕虜の記事や写真は虐待の感じを与えるおそれがあり、残虐だとしてすべて禁止された。また、戦死者・戦傷者の名前は国民の士気にかかわるという理由で、大勢まとめて報道することを禁止した。　　　

●　地名伏せ初の「前線放送」

日中戦争の拡大で、出征兵士は華北３７万、上海１９万の計５６万人にのぼり、銃後では留守家族から「戦況ニュ−スを詳しく放送してほしい」「肉親の声を聞きたい」という希望が放送局へ殺到した。

　その頃、ラジオの聴取者は出征兵士を大勢送り込んだ農漁村を中心に急増し、１９３７（昭和１２）年５月８日に３００万を突破したばかりの聴取契約数は、上海に戦火が広がった９月には３２４万、１０月には３２９万に増えている。放送局が「１戸１受信機」を目標に懸賞募集したラジオ標語(昭和１３年)には、「挙って国防･揃ってラジオ」が一等に入選した。

　放送の内容も大幅に変わり、�@戦況を伝える朝晩の「ニュ−ス時間」の増強、軍事情勢を中心にした「ニュ−ス解説」の新設、�Aアナウンサ−による「前線放送」の実施、�B「国民精神総動員」に基づく特別番組の実施など戦時色を強めていく。

　こうして、ラジオからは軍人の時局講演のほか、「君が代」「海ゆかば」「愛国行進曲」が一日中流れ、放送は戦争を賛美し、戦争遂行に協力していった。番組の編成方針はすべて日本放送協会あての次の様な通達によって決められていた。

「事変ニ伴フ放送取締ニ関スル件」

　　　　　　　　　　　　　　（逓信省昭和１２年１１月４日）

「日支事変勃発ニ伴ヒ、国民ノ『ラジオ』ニ対スル関心ハ一層熾烈ヲ加ヘ来リ『ニュ−ス』ハ勿論、一般放送内容ノ如何ハ直ニ国民ニ反響スル処大ナルモノ可有之ト存ゼラレ候ニ付テハ将来放送者の人選、放送内容ノ事前検閲等充分留意セラレ、対時局放送上万遺憾ナキヲ期セラレ度」　　　　　　　　　

　１９３８（昭和１３）年の徐州（５月）、漢口（１０月）の陥落では、アナウンサ−による最前線からの放送、いまの「戦場リポ−ト」が初めて行われた。ＮＨＫ放送文化研究所には次のように地名を伏せて放送した当時の録音テ−プがそのまま残っている。

「祖国日本の皆様。祖国我等が日本の皆様。我々のマイクは現在、非常なる困難と危険を冒して、○○戦線に出張中であります。生々しい戦線より徐州陥落の□□、勝利の第一報を□□□ましたことは我々放送人の最高の名誉と光栄を感ずるものであります」

（録音の不明瞭の部分に□を付けた。）

［参考資料『放送五十年史』（日本放送出版協会刊）など］　　　　　　　　　　　　　

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