★阿修羅♪ > 雑談専用16 > 814.html
 ★阿修羅♪
「Hirsch報告書」:XI.要約と結語 の試訳。
http://www.asyura2.com/0510/idletalk16/msg/814.html
投稿者 縞 日時 2006 年 1 月 20 日 23:22:46: 0VsXfrsMPtJ9g
 


PEAKING OF WORLD OIL PRODUCTION:
IMPACTS, MITIGATION, & RISK MANAGEMENT
(所謂”Hirsch Report”)

より、
XI. SUMMARY AND CONCLUDING REMARKS
の試訳。


XI. 要約と結語
 以上の分析の結果、我々は最終的に以下のように考えている。

1.世界的な「石油ピーク」は何時かは起こるであろう。

 在来の(conventional)石油の、世界における産出は、いずれ最大限に到達し、その後は減少に転じるであろう。その「最大限」が「ピーク」と呼ばれる。「ピーク」に到達する時期は何時かという予測をたてうるだけの能力を有する者で、10年以内に、とするものが多い、が一方で、もっと遅いだろう、と強く主張する者もある。「ピーク」到達時期の予測は極めて困難である。何故ならば、地質学的な複雑性、基礎となる数値を導出するための測定の信頼性如何という問題、価格変動、需要の弾力性、政治的な影響力、といったことの全てがそれに係ってくるからである。「ピーク」にはいずれ到達するであろう。しかし、それが何時であるか、ということを確実にいうことはできない。

2.「石油ピーク」が起これば、それは合衆国の経済に大きな犠牲を強いるものとなるであろう。

 過去1世紀にわたって、合衆国の経済とライフ・スタイルの発展は、豊富で安価な石油がいつでも手に入るということなしにはありえなかった。 世界の石油産出が「ピーク」に達したことによって起こる石油不足と何倍にもなる価格上昇は、劇的な衝撃力をもつことになるであろう。世界の石油が「ピーク」に達して後の10年間は、1973−74年の、OPECの輸出制限措置による所謂「石油危機」後の期間になぞらえることができるかもしれない。合衆国の蒙る経済的損失は、何「兆」ドルのスケールで測られるほどにもなる可能性がある。アグレッシブで時宜にかなった燃料効率の改善策と代替燃料の生産は、かなりの程度その衝撃を緩和するのに役立つであろう。

3.「石油ピーク」への対応は前例の無い挑戦である。

 世界は未だかつてこのような問題に直面したことはない。「石油ピーク」が起こる10年以上も前から大々的な緩和策(massive mitigation)を採るということがなされなければ、問題はとめどもなく蔓延して、一時的なものではすまなくなるであろう。従来からあるエネルギー変換法(木を焼いて炭にする、石炭を液化して油にする)は、段階的で緩慢な効果しかもたらさない。対して、「石油ピーク」は突然にやってきて、世界を根底からひっくり返すような衝撃を与えるであろう。

4.問題はとりわけ「液体燃料」としての石油だ。

 旧来の状態が今後も継続すると仮定すれば、世界の石油需要は、今後の数十年間にわたって年率およそ2パーセントの増大を続けるであろう。この増大は主として交通・運輸部門によって促進されることになろう。現在既にある交通輸送機器の経済的、物理的な耐用年限は10年のタイムスケールで測られる。回転率が低いので、現在実際に現場で使われている交通輸送機器の急激な転換は本質的に無理である。

 「石油ピーク」は、実は主として「液体燃料」問題である。従来言われてきたような意味での「エネルギー危機」ではない。自動車、航空機、鉄道、船舶は(少しの例外はあるものの)「液体燃料」がなければ動かないのであり、それに替わるもの(alternatives)はまだ無いのである。炭化水素ベースでない他のエネルギー資源――太陽熱、風力、光電池、原子力、地熱、等――は、「電力」を作るのであって、「液体燃料」を作るわけではない。それゆえ、それらが交通・運輸において広汎に使用されるようになるにしても良くて数十年先のはなしである。従って、世界石油生産の減少傾向に対する緩和策は「液体燃料としての石油」ということに焦点を絞って行われるべきである。

5.緩和への努力が稔るまでには相当の時間がかかる。

 「石油ピーク」の衝撃を緩和するには何十年にもわたる真剣な努力が必要とされるだろう。この逃れることの出来ない結論は、液体燃料を消費する膨大な数の車両を更新するのに必要な時間と、代替燃料生産設備を充分な数だけ建設するのに必要な時間、に基づいている。我々の、シナリオによる分析、の示すところは次の通りである。

・ 集中的な行動計画もなしに手を拱いて世界的な石油生産「ピーク」を座して待てば、世界はその後20年以上にもわたって深刻な液体燃料不足のまま放置されることになろう。(訳者注:本文下図あり。)
http://www2.ocn.ne.jp/~megami-k/img00003_2.jpg" ALIGN="Left" BORDER="0" WIDTH="481" HEIGHT="240" TARGET="_top">

・ 緩和のための集中的な計画を、世界石油生産の「ピーク」の10年前に開始すればかなりの効果があるが、それでもなお、石油がピークに達したであろう時点のおおよそ10年ほど後には液体燃料の不足があらわれてくるだろう。(訳者注:本文に下図あり。)
http://www2.ocn.ne.jp/~megami-k/img00004_2.jpg" ALIGN="Left" BORDER="0" WIDTH="481" HEIGHT="240" TARGET="_top">

・ 緩和のための集中的な計画を、「ピーク」の20年前に開始すれば、以降の世界的な液体燃料不足を回避しうる可能性がでてくるものと思われる。
(訳者注:本文に下図あり。)
http://www2.ocn.ne.jp/~megami-k/img00005_2.jpg" ALIGN="Left" BORDER="0" WIDTH="481" HEIGHT="240" TARGET="_top">

〔図が出ない場合は
 http://www2.ocn.ne.jp/~megami-k/PeakingOfWorldOilProduction.htm を見よ。〕

 この分析から明らかなことは、充分かつタイムリーな緩和策を施せば、世界の蒙る経済的な損失(cost)を最小限に止めることができる、ということである。もしも、緩和策があまりにも小規模に過ぎ、あまりにも遅きに失する、といったようなものであれば、世界の需要/供給バランスは、巨大な需要破壊(不足)によって実現されることになり、深刻な経済的な苦境をもたらさずにはいないであろう。

 応急処置、というわけにはいかない。集中的な計画によってさえも、実質的な緩和が目に見えるようになるまでに、10年以上もかかるのである。

6. 供給と需要の双方に注意が必要である。

 石油価格の高値が続けば、それはある程度までは需要を抑制する方向に働くであろう。
最終消費局面での厳しい燃費改善要求はさらにいっそうの内在需要の縮小をもたらすことができようが、しかし、実際に効果のある、世界的規模での更新には、10年かそれ以上の時間がかかるであろう。大量の代替液体燃料の製造に備えることは出来るし、また備えるべきである。商用若しくは半‐商用の代替燃料生産技術の多くは今でも利用可能なのでであるから、大量の代替液体燃料の製造は、――時間がかかり、高くつきはしても――技術的にも経済的にみても実現可能である。


7. それは危機管理問題である。

 在来の石油(cunventional oil)産出が世界的に「ピーク」に達するということは、古典的な危機管理問題を提示する。

 ・ 緩和努力の開始が必要以上に早かった場合、「ピーク」到達の遅れが予測をはるか   に超えるようであれば、時期尚早であったと非難されるかもしれない。
 ・ 他方、もし「ピーク」が差し迫ったものであり、それに対するタイムリーな緩和策   を開始しそこなえば、ダメージは極端に大きなものになりうる。

 危機管理が賢明なものであるためには、緩和策の計画とその実行は「ピーク」の充分に前からなされねばならない。緩和策の策定は、早すぎるくらいのほうが、遅すぎるよりは、世界経済にとって、より安くつき、よりダメージの少ないものになるであろうことはほぼ確実であると思われる。


8. 政府の介入が必要であろう。

 政府の介入が必要になってくるであろう。そうしなければ、「石油ピーク」が経済、社会に与える影響は結果的に大いなる混乱をもたらしかねないからである。1970年代と1980年代の経験は、政府の行動が多かれ少なかれ望ましいものであるにはどうすればよいのかということに関して、重要な教訓と手引きを提供してくれている。しかしながら、そのプロセスは容易なものではないであろう。まだるっこしい環境評価や機敏さに欠ける公的関与といった現行の行政や規制の手続きは、より便宜に適ったものに大々的に改められる必要があるかもしれない。


9. 経済的激変は必ずしも不可避ではない。

 緩和策をとらなければ、世界の石油産出が「ピーク」に達することによって、大々的な経済激変が引き起こされることはほぼ確実であろう。しかしながら、その前に充分な時間が与えられれば、その問題は、既存のテクノロジーで解決可能である。新たなテクノロジーが役に立つことは確かだが、しかしそれは、長い目でみれば、ということだ。危機管理が適切に実行されるならば、どのみち生じずにはいないダメージを、劇的に最小限に止めることができもしよう。


10.より多くの情報が必要とされる。

 世界石油生産の「ピーク」に最も効果的に立ち向かうためには、多くの論点・課題についてもっとよく知ることが必要である。「ピーク」が起こるとすればそれは何時か?ということについてのさらに明瞭なシグナルを得ることは可能だろうか? コスト、潜在能力の利用可能性、タイミングといった諸要素に注意を払いながら、最も可能性ある緩和策とは何であるかをはっきりさせ、その上で行動することが望ましいであろう。いろんな緩和処置が考えられ、そのなかにはさまざまなリスクやあるいは利点となりうることがあるであろうから、そういったことにも充分な検討が加えられる必要がある。

 本分析の目的は、世界石油産出の「ピーク」の発生とその衝撃の緩和ということをめぐって、決定的に重要な諸論点を明らかにする、ということにあった。分析をできるだけ明晰なかたちで提示すべく努めるなかで、我々は本来複雑なものの多くを単純化せざるをえなかった。にもかかわらず、我々の研究は単純でも手みじかでもない。石油価格が劇的に上昇すれば、そのことが、この単純化された分析に改変をせまるほどのインパクトを需要と経済にあたえることもあるであろう、ということを我々はよく承知している。いかに気の滅入るような課題ではあろうとも、そういったフィードバックがありうることについての配慮を怠るべきではない。

 本研究において、我々は多くの想定と推定をなさざるをえなっかった。分析をさらに掘り下げれば異なった数値が出てくるかもしれないということを、我々はよく承知している。しかしそれでも、本分析は、世界石油産出の「ピーク」に対する緩和策の「鍵」は、多くの代替燃料生産設備の建設と、交通・輸送機器における燃料効率の飛躍的な改善とを、同時並行的に達成する、というところにある、ということをよく明示しえていると思う。 世界石油産出の「ピーク」の衝撃を緩和するのに必要な時間は10年単位で測られるべきものであり、関連する生産設備は大規模でかつ資本集約的である。どのような方法をもって何時、政府がこれらの課題を達成すべく立ち上がるのかは未だ決定されていない。

 我々は、既存の商用若しくは半-商用の緩和技術に焦点をあて、それらの技術のうち多くのものが現在でも即時かつ広汎に実施しうる態勢にあることを明らかにした。我々の分析は限定的であることを意図するものではなかった。我々は、今後なされる探求が、緩和策のさらなる選択肢、場合によっては我々が考えたものにはるかに優るなにかをもたらすであろうことを信じるものである。確かにそれは、「石油ピーク」の緩和を公的にも私的にも大いに促進するという目的に適った態度と言えるであろう。しかしながら、本報告書の読者は、新たなテクノロジーが商用に供されるようになるまでに必要な研究には、最良の情勢のもとにおいてさえ、よほど時間がかかるものだ、ということを理解しなければならない。そのうえで爾後は、本来的に大規模な石油消費に由来する世界的スケールでのインパクトに備えて、10年以上にもわたる強力な実施行動が必要とされるであろう。

 次へ  前へ

  拍手はせず、拍手一覧を見る

▲このページのTOPへ       HOME > 雑談専用16掲示板


  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。