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プロスケーター 渡部 絵美に聞く(前編) トリノ五輪日本代表はなぜ勝てないのか 2006年2月16日
http://nikkeibp.jp/style/life/person/proposer/060216_emi1/
2月10日に開幕したトリノ冬季五輪。競技日程も中盤にさしかかった今、多くの日本人が関心を寄せるのが、23日にシングルフリーの決勝が行われる女子フィギュアスケートだろう。
もともと冬季五輪では人気の高いフィギュアだが、今回ダントツの注目度を誇るのは、絶不調の安藤美姫が日本代表に選出されたこと。そして、海外メディアで「金メダルにいちばん近い存在」と報じられた浅田真央が年齢制限で出場できないなどの波乱が起きたからだ。
その選考過程でいったい何があったのか? この疑問に答えるべく、2月16日、元オリンピック代表でプロスケーターの渡部絵美が『愛するスケートに何が起こったのか? 女子フィギュア・トリノ選考の真実』を緊急出版した。
---結果を出すべき大会で結果を出した選手が選ばれない…
「日本の女子フィギュアがすごく強くなり、世界的にも注目されてきている。私も、どこへ行っても『すごいですね』って声をかけられるんですよ。私が何をしているわけでもないんですけどね(笑)」
「代表が決定する前に、記者の方から『女子フィギュアはどうですか』と聞かれれば、『とにかく世界で勝てる選手を選んでほしい』といつも言っていたんです。それが結果的に、私の目から見ても、おそらく全日本選手権を観戦した方々から見ても、今年の選び方は少し問題があった。私は選手の気持ちがわかるだけに、一生懸命やって、結果を出すべき大会で出した選手が選ばれなかったことがすごくショックだった」
本にまとめたのは、決して特定の人物を批判したり、おとしめるためではない。一人のスケーターとして、スケートファンとして、伝えたいことがあったからだ。それでも、渡部の意見に対しては共感とともに、批判も出てくるだろう。
「それはそうかもしれない。でもね、私は札幌オリンピックを見て、スケートでオリンピックに出たいって思ったんです。今回も、同じように『がんばってみたい』と思う子どもたちがいるはず。でも、浅田真央が実力はあるのに年齢制限で出られなかったり、どうみても一番とはいえない選手が選ばれたりといった矛盾をただしていかないと、これからスケートをやっていく子どもたちが気の毒です」
---選考を混乱させたポイント制がなぜ導入されたのか
選考を混乱させた要因と言われるのが、昨シーズンの成績による持ち点に今シーズンの成績を加える「ポイント制」だ。05年4月に導入が決まった方式である。
「願いどおりの選手が選ばれるように計算されたものとしか思えない。オリンピック直前の全日本選手権で上位に入った選手が選ばれるのが、本来の姿だと思うのですが。そのことで、夢を壊されてしまった子どもたち、モチベーションをなくしてしまった選手たちがいる。それに、世界でもまれな3回転半という大技を飛べる浅田選手が出場できないのも、すごく残念なことです」
代表となった村主章枝、荒川静香、安藤美姫のうち、海外メディアが予想するメダルは荒川の銅のみ。しかし、ふたを開けてみたらそれ以上の結果になる可能性もなくはない。今回の代表選出は、日本スケート連盟にとって一つの賭けと言える。
それは、渡部にとっても、だ。3人がすばらしい成績を残せば、「あの本は何だったのか?」と言われるだろう。そこに、採点競技ならではの難しさがあるのも事実だ。
「でも、マラソンの高橋尚子選手がアテネ五輪の代表からもれたときは、過去の実績ではなく選考競技会のタイムで決定したから周囲も納得したし、高橋も次に向けてがんばれたのではないか。でも、今回のフィギュア代表は暗黙の了解で、すでにあの3人に決まっている雰囲気があった」
「不満に思う選手が声を上げられるかと言えば、それは無理。スケート連盟に逆らえば、大会などに出場させてもらえなくなってしまう。それで潰れていった選手を、私は何人も見ている」
---シンボルアスリートという存在
スケート連盟内でも、安藤の選出には疑問の声があがったようだ。しかし、日本オリンピック委員会(JOC)が定めた「シンボルアスリート」で、トヨタ、松下電器という大手スポンサーがついた安藤を落とすのは不可能だったとの見方が一部にある(荒川、村主もシンボルアスリート)。
実は04年11月のNHK杯の後、渡部は安藤から相談をもちかけられ、トリノ五輪に向けてのアドバイスをしていたという。しかし最終的には、安藤はスケート連盟が選んだコーチの指導を受けることを選ぶ。
「安藤は、オリンピックにどんな抱負をもって臨み、どんなコンディションづくりをしていけばいいかと相談に来たんです。そのころはまだシンボルアスリートの話は出ていなかったし、スポンサーもついていなかった。彼女はとても明るい、普通の女の子。大人の指示を素直に聞けるような子です」
「苦しい練習なんてしたくないとか、モチベーションが低くなってしまうとか、安藤の年頃の精神状態は私もよくわかる。だからこそ、周囲の大人たちの事情で、行く方向を誤ってしまったような今の彼女の姿に胸が痛む」
(2月21日火曜日公開の後編に続く)