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新聞特殊指定撤廃と知られざる闇の世界(プロメテウスの政治経済コラム)
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投稿者 heart 日時 2006 年 4 月 07 日 16:28:30: QS3iy8SiOaheU
 

新聞特殊指定撤廃と知られざる闇の世界

公取委が検討している新聞の「特殊指定」撤廃について新聞業界だけではなく、自民・公明を中心に政界からも反対表明が相次いでいます。同一紙同一価格でなければ、新聞が各家に戸別に配達されるサービスが維持できないというのが表の理由です。じつは新聞業界には「特殊指定」にあまり触れて欲しくない裏の別の理由があります。「新聞があぶない」事情が隠されているのです。

「特殊指定」とは、特定業種での不公正な取引の防止を目的に、独占禁止法に基づいて公正取引委員会が禁止事項を指定することを言います。新聞販売に関しては、表現の自由や国民の知る権利を一様に守る観点から、(1)新聞社が異なる定価をつけたり、割り引いたりする(2)販売店が定価を割り引いて販売する(3)新聞社が販売店に注文部数を超えて新聞を供給する−ことを禁止しています。このため、新聞社は販売店に小売り(再販売)をする際の価格を指定することができる再販制度を採用し、同一の新聞は全国どこでも同じ定価で販売されるわけです。

公取委は昨年11月、特殊指定について、「時代に適合しているかどうか」廃止を含めた見直しを表明。「各新聞社が価格戦略として、どこでも(価格が)同じだというのは自由だが、それでなければならないと何らかの法的枠組みで決めるのはまずいのではないか」との立場をとっています。

新聞特殊指定が撤廃され、新聞社、販売店の値引き、割引の乱売合戦が起きたら資本力の弱い地方紙の経営が圧迫されるのではないかという不安はたしかにあります。しかし、問題はそこにあるのではありません。特殊指定の第3項にかかわる新聞社と販売店との取引関係に派生する「押し紙問題」にこそ知らぜざる新聞販売をめぐる闇の世界があるのです。
新聞社が発行(印刷)した新聞は、町にある「新聞販売店」が買い取って、各世帯と新聞の宅配契約を結び、宅配、集金を行う仕組みとなっています。新聞社は、しばしば「世界一の発行部数」「目標数○○万部」などと、契約上の優越的地位を利用して過大なノルマを課し、販売店に過大な注文を強制します。販売店は新聞社に対して従属的な立場にあるために、ノルマを受け入れざるをえず、販売店には大量の売れ残りが発生することになります。これを「押し紙」(事実上の押し込み販売)といいます。

新聞社の広告収入は発行部数が基準となるため、新聞社は販売店に新聞を押し付けて発行部数を膨らませ、販売店は逆ザヤを防ぐため、違法拡販に走るなど、「押し紙」は数々の問題の根源をなしています。広告主も発行部数と実際の売り上げ(配達部数)に乖離があることを知りながら、新聞のネガティブキャンペーンを恐れてなにも言わない。そして、販売店の生殺与奪の権利を握っているという圧倒的な力関係が、一方的に不要な新聞を押し付けて代金を徴収するという常識では考えられない新聞社―販売店間の商取引を闇の世界で横行させているのです。警鐘を鳴らすべき立場にある新聞業界自身の問題であるが故に、報道されることもなく、国民の批判の目に曝されることのないまま何十年もまかり通って来ているのです。

新聞業界の闇を政治権力側は見逃しません。自民党は小泉首相、安倍官房長官をはじめ、各派閥(二階グループ・丹羽、古賀派・河野グループ)も、新聞の特殊指定制度の存続を求める決議書を公正取引委員会に提出するなど新聞業界擁護に動き出しました。民主党も、特殊指定の撤廃に反対する決議文を全会一致で採択しました。公明党は28日、国会内で「新聞問題議員懇話会」(会長・冬柴幹事長)の初会合を開き、新聞の全国同一価格での販売などを定めた「特殊指定」の堅持を求めていくことを決定しました。

権力批判、監視を生命とする新聞が、経営基盤である販売面の弱点を政治家に握られ、憲法改悪の危機に沈黙する。大変危険な状況です。まさに「新聞があぶない」のです(黒藪哲哉『新聞販売黒書 新聞があぶない』花伝社2006.1)。

http://blog.goo.ne.jp/e-hori/e/b9607ced514b35cf5600c3515ed086a3

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