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□特殊指定見直し 国民の利益につながらない [毎日新聞・社説]
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060302k0000m070151000c.html
社説:特殊指定見直し 国民の利益につながらない
公正取引委員会が新聞などの「特殊指定」を見直す作業を進めている。戸別配達制度の崩壊につながりかねない重大な問題であり、日本新聞協会は見直しに強く反対している。国民の多くが戸別配達制度の維持を求めている。公取委は世論に耳を傾け、現行制度を維持すべきだ。
独占禁止法は「不公正な取引」を禁じているが、すべての業種に共通の「一般指定」と特定業種の具体的禁止事項を定めた「特殊指定」がある。新聞のほか教科書、海運、大規模小売業など7分野が特殊指定の対象で、公取委が告示で定めている。
新聞社は教材用、大量一括購読者向けなど例外を除き、販売相手や地域の違いで異なる定価をつけたり、定価を割り引いてはならない。新聞販売店は例外なしに定価の割引をしてはならない。そういう規定である。
この特殊指定は新聞や書籍などの著作物の「再販制度」と表裏一体だ。独禁法はメーカーが小売店に定価を指定することを禁じているが、新聞や書籍など著作物には例外的に認めている。この再販制度と特殊指定が車の両輪となって、宅配制度が維持されている。
こうした販売ルールが緩和されたりなくなったりすれば、販売店間の値下げ競争で、配達コストがかさむ山間部や過疎地では配達の打ち切りが発生しかねない。また、住んでいる場所等によってさまざまな定価が存在し、現在の全国くまなく同じ条件で情報や知識を伝えるという新聞の使命が守れなくなってしまう。国民はそんな事態を望んでいるだろうか。
日本新聞協会の調査では、新聞の宅配制度について72・6%が「ぜひ続けてほしい」と答え、14・2%が「できれば続けてほしい」と答えた。合わせて9割近い国民が新聞の宅配を望んでいる。
昨年7月には国民の活字離れに歯止めをかけようと超党派の国会議員提出の「文字・活字文化振興法」が施行された。「すべての国民が等しく文字・活字文化の恵沢を享受できる環境を整備」しようとするものだ。公取委の特殊指定見直しは、この新法の精神に逆行するものと言わざるをえない。
公取委は99年、特殊指定を現行規定に改定し、01年には再販制度の存続を決めたばかりだ。特殊指定の見直しは再販制度を揺るがす。なぜわずか6年半前の決定を再見直しする必要があるのか。
公取委は公正な競争を促進し市場の効率を高めるのが任務だ。しかし、競争をあおればよいというものではない。私たちはライブドア問題で市場主義の行き過ぎを目撃しているさなかではないか。新聞の特殊指定見直しもまた、混乱を引き起こし、国民の利益を損なう可能性が大きいのである。
新聞が「商品」であることを否定しようとは思わない。しかし、同じ紙でもトイレットペーパーとは違う。新聞は国民の知る権利に応えるための民主社会の基礎的インフラなのだ。むき出しの市場主義はなじまない。公取委もそのことは理解しているはずである。
毎日新聞 2006年3月2日 0時37分