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(回答先: 民放の根幹を揺るがす、ある“深刻な”事態(1)〜テレビCMの限界が見え始めた - nikkeibp.jp - テレビは今 投稿者 倉田佳典 日時 2006 年 1 月 14 日 09:54:29)
民放の根幹を揺るがす、ある“深刻な”事態(2)〜ネットに軸足を移し始めた巨大広告主たち - nikkeibp.jp - テレビは今、何をすべきか
「トヨタは北米でいちばん売れた車種のテレビCMを、一切打たなかったらしい」という話を前回書いた。
これについて、事の真偽をトヨタ自動車東京本社広報部に確認すると、「サイオンという若者むけのストア・ブランドのことでしょう。車種はbB、イスト、北米でのみ販売しているものの三つで、これについてはネット上で情報発信し、口コミで広げていくという宣伝戦略をとっている。たいへん好調な売れ行きです。もっとも、テレビではないネットの情報発信が功を奏したのか、クルマそのものがいいから売れているのかは、よくわからない」とのこと。だから「いちばん売れた車種のCM」うんぬんは誤解だが、北米でネットだけに頼るクルマの売れ行きが、たいへんよいことは確かである。
商業放送を支える土台が揺らぎだした
トヨタは国内でも、ハイブリッドカーの意義や技術を詳細に解説するスペシャルサイト「Hybrid City」を開設するなど、インターネットでの情報発信に力を入れている。昨年暮れには、苦手とされる若者むけ車種のbBで「停めて音楽を聴くための車」なるコンセプトを提起。テレビをはじめマスメディアへの広告出稿は深夜を除き抑えて、ネットや街頭イベントなどのプロモーションを活発に展開した。
これまでテレビ業界や広告業界では、ある程度以上の年配の人は「クルマはトヨタ(または日産、ホンダ……)」ととっくの昔に決め、そのディーラーの勧めに従って買い換えるから、年配者むけにCMを打ってもムダであり、車種を決めていない若者向けに打たなければ効果が薄い、と考えられていた。これが、自動車会社が若者向け番組だけにCMを付ける理由だったのだ。ところが、その若者向けには、テレビよりもインターネットだという話になってきたわけだ。
年間の広告宣伝費817億円(2004年度、日経広告研究所調べ)を投じるトヨタ自動車は、日本企業では10年連続して広告費トップの座を維持し続けるマスメディアにとって最大の「お得意さま」である。そのトヨタが、一部の車種やユーザー・ターゲット次第ではあるが、テレビ以外の情報発信媒体としてインターネットを重要視しはじめた……。
これは文字通り、「民放」という名の商業放送を支える土台が揺らぎだしたことを意味するだろう。
トヨタ自動車の東京本社広報部では…
トヨタ自動車の東京本社広報部では「7〜8年前からインターネットにおける情報発信量は着実に増えている。サイトの閲覧件数も増加の一途。今後もこの傾向は変わらず、インターネットをますます重要視していく」という。もちろん一方では、「どのメディアで出していくかは、車種とユーザーのターゲット次第。要はバランスの問題で、テレビ広告を一切打たなくなるなんてことはありませんよ」とも語る。
だから、今年や来年でトヨタの国内テレビCMが半減してしまうなどという事態は考えにくい。しかし、発信する情報量のバランスは以前とハッキリ変わりつつある。トヨタは広告宣伝費の媒体別内訳を公表していないが、テレビで発信する情報量の相対的な比率が低下していることは間違いない。
図らずも実現した壮大な“実証実験”
そしてもう一つ、日本を代表する家電メーカーでも民放テレビを震撼させる事態が進んでいる。松下電器産業が2005年12月10日〜19日の10日間、日本の地上放送で流される同社のテレビCMすべてを、異常が発生し死者まで出してしまった石油温風機に関する告知・ユーザーへの申し出の呼びかけ・お詫びの告知に差し替えたのである。
松下電器産業の東京本社広報部によると、この10日間については、東京キー局も地方ローカル局も、スポットもタイムも、すべての枠でCMを告知・謝罪に差し替えた。もともとCM自体が少ないBSやCSでも同様。北海道、東北6県、長野、岐阜などの寒冷地(豪雪地帯)では、2006年1月10日現在でも、製品CMは一切流さずに告知・謝罪の放映を継続中だ。
なお、松下電器では、現在販売されているすべての製品に告知・謝罪のビラを入れている。寒冷地では社員によるローラー作戦も展開された。問題の石油温風機は15万台ほど販売し、6割がたは所在を把握できた。20年前の古い製品だから相当数が廃棄されたはずで、フリーダイヤルのコールセンターにかかってくる電話もごくわずかになってきた。継続中の告知も、いずれ通常に戻すことになる。また、告知を流したくても流せないNHKは、特に申し入れをしていないものの、かなり積極的にニュースで取り上げてくれたそうだ。
そこで、次のことを放送クラブ記者や放送評論家の誰一人として指摘しないのが、筆者は不思議でならない。日本最大の家電メーカーが、冬のボーナス商戦の真っ最中に1カ月の3分の1の期間、全商品のテレビCMをやめたことは、テレビ史上初めての出来事なのだから。これはテレビCMを打つメーカーが、過去にやりたくても絶対にできなかった極めて貴重な「実証実験」なのである。その実験結果が、テレビ業界に激震として伝わりつつあるのだ。
「ビエラ」の売れ行きとCMの関係
どういうことかというと、例えば、松下電器産業のプラズマテレビ「ビエラ」は、これまで他社のものも含めた中でもっとも強い製品とされていた。雑誌「特選街」などでも製品評価は常にトップだ。
業界関係者によると、現在のデジタルテレビは、ただ画面がきれいであればよいというものではなく、受信機が複雑なデコーダー(暗号解読機。解読し復元するのに時間がかかるため、時報が1秒以上遅れてしまう!)であり、データ放送処理についてはパソコンが付いているのと同じ。だから、ちゃんとした製品を作る技術力のあるメーカーは日立、東芝、松下、ソニーの4社に限定される。うちソニーは薄型大画面テレビ戦略に完全に出遅れてしまいガタガタ。残る3社のうちでは重電部門を持たない松下が早期にプラズマに注力したことが奏功し、ぶっちぎりの首位を独走中。最近では1800億円を投じて兵庫県に工場を新設すると伝えられ、さらなるシェア拡大を目指している。
そして、松下の主力製品であるプラズマテレビが、ボーナス商戦中に相変わらずダントツの売れ行きを示すのであれば、「テレビCMを月の3分の1流さなくても大勢に影響はない」、つまりは「テレビCMにそれほど効果がない」と疑わせる証拠の一つが得られることになるのだ。
果たして実際はどうか。
秋葉原その他の家電量販店で聞くと、相変わらず松下製の売れ行きはダントツである。同社の東京本社広報部では次のようにいう。
「お陰さまで、薄型プラズマは異常といえるくらいの伸びを示しています。他社も含めた全体の総需要も伸びていますし。冬の商戦はお年玉商戦としてまだ続いていますから、確定的なことはいえませんが、CMを差し替えたことによる落ち込みなどの影響は特に出ていません。もっとも、CMを差し替えなければもっと売れたかもしれませんけれども。プラズマは『パナソニック』、石油温風機は『ナショナル』とブランドが分かれていますから、影響が少なかったのかもしれません」。
つまり、もともとブランド力のある強い商品は、テレビCMを10日やそこら日本全国で取りやめても、致命的な打撃はまったく受けないということになる。
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tv_to_do/060120_2nd/index.html