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同じ日の社説の読み比べ、やはり東京新聞が頭ひとつ抜け出ています。朝日はやはり結局ゴマすり。
http://www.asyura2.com/0510/hihyo2/msg/636.html
投稿者 クエスチョン 日時 2006 年 2 月 01 日 08:20:01: WmYnAkBebEg4M
 

同じ日の社説の読み比べ、やはり東京新聞が頭ひとつ抜け出ています。朝日はやはり結局ゴマすり。


 ブログに燎原の火のごとく広がる「よみあさるまいブロガー同盟(読朝る毎ブロガー同盟)」のバナーはり運動に恐れをなしたのか、朝日のそれらしきそぶりが目立っています。

 朝日の「ジャーナリズム宣言CM」だったりです。しかし、ここで手綱をゆるめるべきではありません。この動きも上記バナーはりをはじめとした澎湃と沸き起こる怒りの声があったからでしょう。

 日曜日に(1月29日)各新聞社の社説を比べて見ました。やはり、東京新聞が頭ひとつ抜け出ていると思いました。朝日の2本目の社説「日本橋再生 人気取りに終わらせるな」はやはり結局ゴマすりになってますね。小泉の思いつき「日本橋再生」を後押ししています。確かに日本橋上を覆う高速道路は目障りですが、現在ほかにも大事な政治テーマがあるだろうと言うことです。耐震偽装問題しかり、狂牛病米肉輸入問題しかりです。

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週のはじめに考える せめて『反面教師』に【東京】
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20060129/col_____sha_____001.shtml

 「企業倫理」「規律」という言葉が飛び交っています。偽装マンション、違法な錬金術などがいまの世のゆがみ、小泉改革の「影」をあぶり出したためです。

 通常国会、「小泉丸」は、巨大与党の追い風もあり、改革の仕上げへ向け、順風満帆のはずでした。

 ところが、ここへ来て突然、逆風に。ライブドア事件や耐震強度偽装事件、米国産牛肉の輸入問題の「三点セット」のためです。

 帆には穴があき始めました。原因は「倫理観・規律の欠如」と言っていいと思います。

 偽装事件では、建築士は人命にかかわる資格の重さを忘れ、周辺の業者と組んで地震に弱いマンション、ホテルを設計しました。

■欲望の歯止めを失った

 ライブドアの堀江貴文前社長らは、株式の分割や虚偽の情報を流して、巨額の資金を手に入れ、次々と企業を買収したのです。

 いずれも「カネのためには手段を選ばず」の行き過ぎです。

 資本主義は一面、人の欲望を刺激することで成り立っています。欲望にはきりがありませんから、そこには「歯止め」が必要不可欠です。

 西欧では、資本主義とキリスト教の教えが表裏一体になり、行き過ぎを防いできました。

 日本では、自らを律する規範として、商家には「家訓」があり、武士には「武士道」、庶民も人生訓や処世訓を伝えてきました。

 「お天道様がみている」「悪銭身に付かず」「過ぎたるは及ばざるがごとし」…。

 いまや、こうした長年の知恵の集積である「歯止め」が利かなくなりつつあります。偽装やライブドアはその象徴です。

 政治は公平、公正を保つため、はみ出した部分にブレーキをかけるのが役割ですが、昨年の総選挙では逆の役割を演じました。

■政治がお墨付きを

 「君のような青年が政治の世界に入ってくるのはすばらしい」

 小泉純一郎首相は、堀江前社長を改革の旗手として出馬を促し、自民党幹事長は選挙区に出向いて「私の弟」と絶叫、有力閣僚は「小泉、ホリエモン、竹中で改革をやり遂げよう」と支援を呼びかけました。

 事件発覚後は「別問題」「不明」「頼まれたから」と言い訳です。

 問題は、結果として法のすき間をついてカネをひねり出し、強引に会社買収に走る堀江式錬金術にお墨付きを与えたことにあります。

 原理的な市場主義のもとでは、手段を選ばず「勝ち組」に、という生き方を奨励したのです。

 なのに、自らの言動に責任を持たないなら、政治道徳の退廃です。

 同時に、一連の事件は小泉改革の「影」を浮き彫りにしました。

 一つは社会格差の拡大です。改革には痛みがつきもの、手当てが必要です。不利益を被る人、失敗した人、弱い立場の人たちのためのセーフティーネット(安全網)です。

 小泉首相は、役人がつくった統計をもとに「言われるほどの格差はない」と強弁します。

 しかし、持てる者と持たざる者の所得差は広がり、事業所では正規職員が減りパートやフリーターが増え、生活保護世帯や自殺者も増加、と格差拡大は目に見えます。

 二つ目の「影」は、歯止めをはずしたままにしたことです。

 例えば、規制緩和で証券取引は原則自由になりましたが、証券取引等監視委員会などの強化を怠り、ライブドアの違法を許したのです。

 マンションなどの建設では、建築確認を民間検査機関もできるようにしましたが、十分に機能させる仕組みをつくりませんでした。

 政治の重要な役割の一つは国民の安心と安全を確保することです。小泉改革は、国政運営に当たりその規範が希薄だったのでは。その意味では一連の事件は、「小泉改革」と表裏の関係といえそうです。

 米国の圧力で「はじめに輸入再開ありき」で決めた牛肉問題もその線上にあります。

 また、小泉首相の国会などでの詭弁(きべん)に近いやりとりも問題です。

 堀江前社長については「メディアが騒いで時代の寵児(ちょうじ)のように扱った」、牛肉輸入禁止では「なぜ日本が責められるのか」と、議論をはぐらかす答弁が続いています。

 政治の場における為政者の言葉の軽さが世の規律や規範の乱れを助長しているようです。

 冬とはいえ何とも寒々しい光景です。ただ希望を見いだすなら、いまの世の規範の欠如を、多くの国民があらためて認識したことです。

■指導者がまず手本を

 個人や世の中の規律、規範の大切さが言われてかなりになりますが、まずは危機意識を持つことが出発点になります。

 特に、最近の事件について企業倫理や市場のルール順守を言っている財界や政界の指導者には、実践で手本を示してほしいものです。

 そうなれば、ホリエモンも元建築士も、せめて「反面教師」の役割は果たせることになります。



【社説】
2006年01月29日(日曜日)付【朝日】
http://www.asahi.com/paper/editorial20060129.html

* インフルエンザ 「新型」封じを急ぎたい
* 日本橋再生 人気取りに終わらせるな

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インフルエンザ 「新型」封じを急ぎたい

 人には全く免疫がないため、いったん現れれば、4人に1人がかかってしまう。そんな新型インフルエンザの大流行が心配されている。

 初期のうちに封じ込めて、広がりを抑えられないか。世界保健機関(WHO)の呼びかけで、各国が動き始めた。今月なかば、アジアを中心に23カ国の専門家が東京に集まり、初期の対応をテーマにした初の会議も開かれた。

 新型インフルエンザの封じ込めは、人類にとって初めての挑戦だ。かつてはウイルスの広がりになすすべがなかった。抗ウイルス薬が新たに登場し、ウイルスに対抗できる可能性が出てきた。

 もっとも、簡単にできるとはだれも考えていない。東京での会議では、互いに力を合わせて取り組むことの重要性が確認された。

 新型はどうやって生まれるのか。鳥インフルエンザのウイルスが、人のウイルスと混じり合ったり、あるいは突然変異したりして、人から人へ感染するようになるためと考えられている。

 鳥のウイルスに感染する人が増えるのは危険信号だ。東南アジアや中国で広がり続けており、今年に入ってトルコでも死者が出た。「玄関口まで迫ってきた」と欧州諸国は警戒を強めている。専門家によれば、すでに導火線に火がついている状態なのだ。

 新型はおそらく、人と鳥がふれあう機会の多いアジアのどこかに姿を現すはずだ。封じ込めには、何よりも、その出現をいち早く知らなければならない。

 鳥インフルエンザの感染者の報告がWHOに届くまで、平均で17日もかかっている。これでは間に合わない。尾身茂・WHO西太平洋地域事務局長によれば、新型が現れてから「最初の2、3週間が勝負」なのだ。

 新型と確認されたら、WHOはただちに専門家チームを現地に派遣し、治療薬も送り込む。WHOが想定するシナリオの一つでは、ある地域で20人程度の感染者が見つかった場合、周辺5キロ圏内を対象に移動や集会を制限したうえで薬を与える。9割の人が早い時期に薬を服用すれば、広がりを防げるという。

 現実には、これほど手際よくことが運ぶとは限らない。

 鳥インフルエンザや新型が疑われるような激しい症状があったら、すぐに医療機関や保健所に行く。そうしたことを住民に呼びかけることから始めなければならない地域もあるだろう。情報を隠さず、直ちに報告することを徹底する必要がある。住民の移動や活動を制限するための法制度も整えるべきだ。

 どこで新型が見つかっても対応できる備えが何よりも肝要である。発生の報告から対策を講ずるまでの細かい手順を、各国がそれぞれの実情に合わせて決めておくことが欠かせない。

 日本は治療薬を提供するほか、住民への呼びかけや人材の育成などに協力する。効果的な支援態勢を整えたい。

日本橋再生 人気取りに終わらせるな

 東京・日本橋に覆いかぶさるように延びる首都高速道路を移し、景観を生き返らせる計画が動き出す。学者らの進言に小泉首相が飛びつき、任期中に具体案をまとめることになった。

 東京オリンピックに間に合わせる突貫工事で、日本橋はあわれな姿になってしまった。江戸時代の五街道の起点でもある名橋の面影を回復させることは、地元の悲願だった。

 橋上に青空を取り戻し、下を流れる日本橋川の水辺は市民の憩いの場に。たしかに夢のある話だ。

 プランづくりを託されたのは、奥田碩(日本経団連会長)、伊藤滋(早大教授、都市計画)、中村英夫(武蔵工大学長、国土計画)、三浦朱門(作家、元文化庁長官)の4氏である。

 いずれ名だたる顔ぶれだが、いくら首相の強力な後ろ盾があってもハードルは高いといわねばならない。

 国土交通省の懇談会が、高速道路を地下に埋設するか、高架のまま迂回(うかい)させるかに絞った案を出したが、試算では3千億円から6500億円もかかる。

 管理する首都高速道路会社は6兆円の借金を返さなければならない立場だ。一方で耐用年数が尽きかけている道路の補修や造りかえという仕事もある。日本橋の再生に取り組むとなれば、税金を使う公共事業になるのは避けられない。

 財政再建を急がなければならないのにこんな大仕事になぜ手を出すのか。その意義や効用を、首相は説得力をもって全国の納税者に語る必要がある。

 たしかに日本橋の貧弱な姿は高度成長が残した負の遺産である。それならば再生プロジェクトは、単に橋の周りをこぎれいにするだけではなく、首都を秩序ある美しい街に造りかえる試みの一つに位置づけられなければ意味はない。

 海外からの観光客の多くが、東京の街は乱雑で魅力に欠けるとの感想をもらす。空を覆う高速道路と汚れた川が、どれほど景観を損ねていることか。

 日本橋をよみがえらせるには、水辺を表舞台に引き出すことだ。川沿いに歩道を整え、沿岸の建物は川に向けて開かれた設計にする。高速道路を撤去し、清流を取り戻した韓国ソウルの清渓川(チョンゲチョン)の再生事業は大いに参考になるだろう。

 沿岸の空きスペースを生かしてレストランをつくり、水路をめぐるボートツアーに観光客を呼び込む。そんな工夫を周辺にも広げ、日本橋を起点に「水の都」の復活をはかるのである。

 公共事業予算の配分を地方に厚くするか、それとも経済効果の高い大都市に重点を移すか。社会資本の軸足を、道路やダムから環境保護や住みやすさといった分野に置くのか。日本橋プロジェクトは、そんな問題提起でもある。国民の合意を練り上げるよい機会だ。

 4人のお歴々には注文がある。首都の未来像を真正面から論じ、人気取り政策のお先棒をかつぐのはくれぐれも慎んでもらいたい。



社説:間接差別禁止 法案要綱には欠陥がある【毎日】
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060129ddm005070014000c.html

 人口減少が始まり、少子化への対応にかつてない関心が集まっている。労働力人口の減少を考えれば、女性の活用をさらに進め、男女共同参画社会をめざすことの重みが一層増している。女性が子育てをしながら働ける社会、賃金や処遇で差別を受けない雇用環境の整備は待ったなしで行う必要がある。

 厚生労働省が27日、労働政策審議会に諮問した「男女雇用機会均等法(均等法)」の改正法案要綱に、初めて「間接差別」の禁止が盛り込まれた。欧米ではかなり前から禁止されているが、日本では規定がなかった。

 「間接差別」って何? こういう人が多いはずだ。直訳で分かりにくい上に、学識者や労使の間でも食い違いがある。厚労省の研究会は「外見上は性中立に見える規定や基準などが、結果として一方の性に相当程度の不利益を与え、しかもその基準などが職務との関連がないなど、合理性、正当性が認められないもの」と定義した。例えば、業務には必要ないのに「身長175センチ以上」を募集要件とした場合には「間接差別」となる。

 国連女性差別撤廃委員会が03年にコース別の雇用管理による賃金格差を指摘し「間接差別」を禁止するよう勧告し、働く女性から均等法改正を求める強い要望が出されていた。

 「間接差別」禁止の法制化は、政府の従来の鈍い対応を考えれば一歩前進ではあるが、その中身には問題がある。

 「間接差別」禁止をどう規定するかをめぐって労使が激しく対立、厚労省は差別内容を省令で示すことで労使調整を図り、ようやく法案要綱をまとめた。省令では(1)募集採用における身長、体重、体力要件(2)総合職採用時の全国転勤要件(3)昇進における転勤経験要件−−の禁止を明記した。とはいえ「事業運営に必要」な場合や「合理的な理由」があれば禁止はされないため、その解釈が労使紛争の火種となる可能性がある。

 改正法案要綱の欠陥を挙げれば「間接差別」禁止を省令で3項目に絞って「限定列挙」としたことだ。経営側との調整の結果というが、これだと3項目以外は「間接差別」ではないということになる恐れがある。また要綱には「間接差別」という表現がなく、規定が分かりにくいのも難点だ。

 女性が圧倒的に多いパートに対する賃金や処遇などの格差は「間接差別」ではないのかなど、明確にしなければならない点は多い。「間接差別」とは何かを丁寧に分かりやすく規定し、広く国民に知ってもらうことが重要である。

 厚労省は「判例などを踏まえ必要に応じて見直す」というが、それでは遅いし、労使関係に無用の混乱を招くだけだ。厚労省は限定列挙に固執せず、柔軟に構える必要がある。国会で十分に議論し、判例を待たずに省令に必要なものは直ちに禁止規定に追加することを提案したい。あいまいな規定で「間接差別」を温存してはならない。世界各国が日本の対応を見ていることも忘れないでほしい。

毎日新聞 2006年1月29日 東京朝刊



1月29日付・読売社説(1)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060128ig90.htm

 [衛星『だいち』]「役立ったと言える活躍をしたい」

 宇宙から、大地の様子をきめ細かく観察できる日本の技術衛星「だいち」が、高度約700キロ・メートルの軌道上で観測に向けて活動を始めた。

 世界でも最大級の衛星だ。小型バスほどの大きさの本体から、全長22メートルの太陽電池パネルが伸びている。重さは4トンに達する。

 鹿児島県・種子島からH2Aロケットで打ち上げられ、アンテナの展開など4日がかりで姿勢を整えた。一時、機器がうまく作動しなかったが、回復した。

 「だいち」を開発した宇宙航空研究開発機構は昨年、「宇宙開発を広く国民生活に役立たせる」という目標を打ち出した。実用面よりも、技術開発に比重を置いてきたことへの反省からだ。

 技術開発への特化は、過去の日米貿易摩擦に原因がある。日本政府が実用衛星の開発製造を主導し、米企業の参入を認めないのはおかしい、と非難された。

 だが、技術開発だけでは国民の理解は得にくい。「だいち」の活躍で、宇宙を身近なものにしてほしい。

 「だいち」は、高性能カメラなど3種類の観測装置を搭載しており、2・5メートルの精度で地表を立体的に撮影できる。雲などで地表が見えない時に地上の様子をとらえることも可能だ。

 この機能を使って24時間体制で地球を観測し、資源探査や、詳細な地図作りのデータを集める。地震や大規模火災、噴火といった災害が起きた時は、地上の状況を速やかに把握できる。

 最近の国内の地震などで政府が被災地救援の手掛かりにする衛星写真は、海外から買ったものばかりだ。入手にも時間がかかっている。「だいち」で災害対応能力を向上させねばならない。

 アジア各地で災害が起きた時も、速やかに観測してデータを提供すれば、被災地支援の一環として貢献できる。そのための即応体制も築く必要がある。

 観測したデータの多様な活用策も考えたい。すでに、地図情報と衛星画像を組み合わせたインターネット上の観光案内など、衛星の観測データを使った新たなサービスが拡大している。

 宇宙機構は、「だいち」のデータ活用を進めるため、産官学で協議会を設けている。その活性化が重要になる。

 日本は過去に3トン以上の大型衛星を4機打ち上げたが、設計ミスによる故障などで、十分に活躍できなかった。大型衛星は構造が複雑で失敗しやすい、と開発に否定的な声も出ている。

 「だいち」の設計寿命は3年だ。その間、十分に機能を発揮して、日本の衛星技術の信頼回復に貢献したい。
(2006年1月29日1時31分 読売新聞)


1月29日付・読売社説(2)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060128ig91.htm

 [オウム観察処分]「再更新の決定は当然だが…」

 オウム真理教に対する「観察処分」が、さらに3年間、延長されることになった。

 団体規制法に基づき、公安審査委員会が2000年に観察処分を決定し、03年に更新していた。今回が2度目の更新だ。

 観察処分は、無差別大量殺人行為をした団体に対し、最長3年間、役職員らの氏名、活動の拠点、資産などについて3か月ごとに報告を義務づけている。

 麻原彰晃こと松本智津夫被告は東京地裁で一昨年、死刑判決を受けている。公安審は今回、松本被告の教団内部での絶対的な影響力が「前回の更新決定以降、一層強固になっている」と認定した。

 教団の閉鎖的、排外的な体質に変化はない。周辺住民の不安は絶えない。公安審の決定は当然だろう。

 公安調査庁などによると、オウム真理教は現在、17都道府県に28か所の活動拠点や施設を持ち、信者は約1650人いる。このうち約8割が、1994年の松本サリン事件、95年の地下鉄サリン事件以前からの古参信者という。

 公安審は今回の決定で、教団幹部が松本被告への絶対的帰依を指導したり、両サリン事件を正当化する発言をしている事実を指摘した。

 教団が有害な薬を無許可販売したり、無許可で信者を企業に派遣する組織的な違反事件が判明している。違法な売り上げは3年間で5億円弱にのぼる。

 観察処分の一環として公安審は新たに教団の収益事業の報告を義務づけた。教団側の「現在は危険性はない」とする主張は受け入れられるものではない。

 松本被告の死刑判決後、弁護団は東京高裁に控訴した。だが、松本被告に「訴訟能力がない」と主張し、指定期日を過ぎても控訴趣意書を提出していない。混迷する裁判の行方が、教団にどんな影響を及ぼすか、予測できない。

 オウム事件直後、公安審は破壊活動防止法による教団の解散を検討したが、1997年に「将来の危険性は薄い」として、破防法の適用を見送った。

 その後、教団の活動を規制するために団体規制法が施行されたが、解散を命じることはできない。教団の「危険性」が続く限り観察処分も続くことになる。

 国際テロが頻発する時代を迎えながら新たな組織的な反社会集団に対する法整備など、不十分なままだ。

 オウム事件も背景の一つとなり、犯罪捜査のための通信傍受法が2000年に施行されたが、適用件数は04年までにわずか7件だ。極めて厳格な条件の下でしか傍受できないからだ。オウム事件の苦い教訓はまだ十分生かされていない。
(2006年1月29日1時30分 読売新聞)



社説 農協改革を避けて農業は再生できない(1/29)【日経】
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20060128MS3M2800F28012006.html

 農産物の貿易自由化をめぐる世界貿易機関(WTO)の交渉が再開した。27日にスイスのダボスに各国の貿易担当相が集まり、市場開放の具体的な方策を話し合った。決着への道筋はまだ見えないが、交渉期限は3カ月後に迫っている。

 はっきりしているのは、日本の農業改革が「待ったなし」だという世界の現実である。日本のコメやコンニャクなど高率関税で保護されている農産物には、関税率に一律の天井を設ける制度が検討されている。例外として保護してもよい品目の数が大幅に減るのも確実だ。

中間コスト削減の壁

 市場開放の程度や時期の差はあれ、農業のグローバル化の潮流には逆らえない。日本の農業の高コスト体質を改善するために、早急に取り組むべき課題が「農業協同組合(農協)」の改革である。生産現場だけでなく、生産者と消費者の間に立つ農協が負う部分のコストについても、議論を深めなければならない。

 農協は本来、地域内で互いに助け合って農業を営むための共同体組織である。それが逆にコスト削減の力学を働きにくくする足かせになっていないか。地元社会に密着する協同組合であるため、農協以外に競争相手がいない地域などでは、市場競争がうまく機能しないからだ。

 農協が扱う仕事は農作物を農家から集荷し、流通、販売するだけではない。「農業協同組合法(農協法)」は、農業機械、肥料、農薬などの農家への販売や、住宅ローンや預金など各種の金融業、共済事業(保険業)まで幅広く扱うことを認めている。ガソリンスタンドや生活用品の大型店舗を営む農協も多い。

 意図的な独占ではないとしても、農家の生産や生活に直結する市場で、農協が巨大な支配力を握ってきたのは事実だ。競争が少なければ、生産に必要な資材などの価格は下がりにくく、農産物を消費者に届ける流通の効率化も進まない。この結果、農業全体のコストは下がらず、農産物の価格を押し上げる。

 農家は農協の顧客であり、組織運営に参加し監視する構成員でもあるはずだが、時に主客転倒ともいえる農協独走の構図が見られる。相次ぐ不祥事はその典型だろう。

 昨年4月には、秋田県で農協の全国組織である全国農業協同組合連合会(全農)の秋田県本部で、コメの架空取引などの不正が起きた。一昨年10月には、輸入肉を鹿児島県産の黒豚に偽装した事件で農協の関係会社が取引に関与していた。いずれも組織のガバナンス(統治)が緩んでいる証左といえる。

 日本の農業の中核であるコメ農家は、約9割が企業などで働きながら営農する兼業農家である。農業による収入と経費の管理で経営に工夫を凝らす時間と意欲がある農家ばかりとは限らない。兼業農家は農協への依存度がおのずと大きくなる。

 農協は現在、全国に約870あり、合わせて約500万人の組合員を擁する。1人1票の議決権を持って組織運営に加わるのが協同組合の基本的な仕組みだ。だが受動的な兼業農家が圧倒的多数を占める中で、日本の農業の「担い手」となる専業農家は少数派となり、その声が農協経営に反映されにくい構造ができてしまっている。

 農協法は、農業を営む組合員以外でも農協の各種サービスを利用できる「准組合員」制度も認めている。住宅ローンの利用などが増え、議決権がない准組合員は現在、400万人に膨れあがっている。これでは「農家のための農協」とは呼べない。

「協同組合」がいいのか

 農協も危機感を抱いている。全農は昨年末、子会社を含めたグループ全体で現在2万5000人いる従業員を5年後までに2万人に削減するなどの「改善計画」をまとめた。流通改革にも努め、現在は60キログラム当たり3000円かかるコメの中間流通コストを、2008年産までに2000円以下に抑える計画を立てている。

 こうした改革が遅れれば、農家の農協離れは確実に加速するだろう。北陸の篤農家は「農協より値段が安い」ため、近郊の大型量販店で農薬や肥料を購入している。九州の高級果実の農家は農協に出荷せず、インターネットで首都圏の消費者に直接販売して利益を上げている。従来農協が担ってきた機能を企業やネットがとって代わる時代が来ている。

 相互扶助を建前とする「協同組合」が最適な組織形態なのか。玉石混交の護送船団方式で、競争力を備えた「担い手」は育つのか。金融、保険、販売事業の分割も視野に置きながら、巨大な農協事業に関する規制緩和と組織改革を検討する必要がある。日本の農業を再生するには、厳しい農協改革が避けて通れない。

 今年はWTO交渉が最終段階に入り、3年に一度の農協全国大会も10月に開かれる。この農協改革の好機を逃してはならない。



■【主張】東大論文疑惑 大切なのは再発の防止策【産経】
http://www.sankei.co.jp/news/060129/morning/editoria.htm

 DNAとともに遺伝情報をつかさどる核酸の一種・RNAを利用した先端的な研究で国際的に著名な東京大学の多比良(たいら)和誠教授が処分を受ける可能性が濃くなった。

 理由は、ネイチャー誌などに載った多比良教授らの研究論文をめぐる捏造(ねつぞう)疑惑によるものだ。

 学内に設置された調査委員会が昨年から論文の実験内容の正当性を調べてきたが、同教授らの主張を裏付ける結果は得られなかった。

 調査委員会は「実験そのものが行われなかったのではないか」という感触さえ持っている。

 捏造が疑われた論文の多くは研究室の助手が中心になって書かれたもので、この助手は研究の根拠となる実験ノートをつけていなかった。再現実験を求められても、第三者を十分に納得させられる結果を出せなかった。

 多比良教授は目覚ましい成果を上げ続けた助手の実験の詳細を把握しておらず、最近まで助手を信じていたという。そのまま共同研究者として論文に名を連ね、脚光を浴びてきた。その管理責任が問われ、研究室の機能停止という前代未聞の事態となった。

 日本の科学技術研究の進め方は近年、米国型に変わりつつある。研究者は国の科学技術基本計画の下で、巨額の研究費とポストをめぐる厳しい競争を勝ち抜かねばならない。

 結果として研究活動は活発化する。しかし、その半面、論文の乱造だけでなく、捏造や盗用などに走る研究者が現れやすくなる。米国などではそうした不正が後を絶たない。

 国は研究の不正を防ぐシステムを早急に作り上げることが必要だ。日本学術会議や文部科学省が検討中だが、やや遅すぎた感がある。

 研究の現場となる大学や研究機関も普段から不正防止に当たり、問題が起きた場合には公正に対処できる組織を常設することが必要だ。審理制度が確立していないと調査委員会の中立性に疑問が残ることもある。

 現代の科学技術は国民の生活に直結し、密接な関係を持っている。多比良教授らの研究は、がん治療や再生医療への応用につながっていた。日本発の研究への国際的な信頼性を保つためにも、研究疑惑の再発を防止する対策が急がれる。

■【主張】介護新料金 希望が持てる高齢社会を

 改正された介護保険法が四月から本格実施されるのに合わせ、厚生労働省は介護報酬の新単価(介護サービスなどの料金)をまとめ、社会保障審議会の了承を得た。

 社会の高齢化が進行していくのに伴い介護に対する需要がますます増大する一方で、今回はすでに、介護報酬全体の0・5%引き下げが大枠として決まっている。限られた財源を切り詰めて使わざるを得ない状態だが、そうであればなおさら、老後に希望が持てるような介護の姿を示す工夫が必要になる。

 改定の特徴は、軽症者に対する介護予防サービスと在宅で暮らす中重度者への支援を強化したことだ。人生の最後の日々を住み慣れた環境のもとで暮らせるようにすることを目指す政策の意思が、料金体系に反映されていることは評価できる。

 介護予防は当初、筋力トレーニングのみが強調されていた嫌いがあるが、日常の生活に必要なさまざまなことが可能な限り自分自身でできるような環境を整えることが最も大切である。

 また、中重度の要介護者には、自宅や住み慣れた地域を離れずに介護を受けられるよう「通い」と「訪問」「泊まり」を組み合わせた小規模多機能ホームなどの地域密着型サービスが新設されることになった。

 あと二年もすると、団塊の世代の多くが六十歳の定年を迎え、会社人間だった団塊世代も家庭や地域に戻ってくる。いわゆる二〇〇七年問題は、企業側だけでなく、地域の変化を促す側面からも見ていく必要があろう。

 すぐにではないにしても、何年か後には、団塊世代にも介護を必要とする人が増え、その一方で介護を必要としない元気なお年寄りや、介護予防サービスを受けながら社会貢献活動に取り組むといった人も当然、多くなる。

 介護予防や地域密着型サービスが世代間の交流をはぐくみ、ゆったりした時間の中で、お年寄りが地域の子供たちの安全確保を担う機能を果たすようなこともうまくいけば考えられる。

 介護の現場ではまだ、地域密着型の介護がどうなるのか具体的につかみきれず、戸惑っている面もあるという。高齢化を逆に少子化対策につなげるくらいの戦略眼をもって、新たな介護の姿をさぐっていきたい。

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