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>>日々通信 いまを生きる 第189号 2006年1月7日<<
http://tizu.cocolog-nifty.com/heiwa/2006/01/189_2006__4854.html
【新年の課題】
年が明けると、ポスト小泉でマスメディアはもちきりだ。国民参加型の総裁選出方法をなどということまで言われて、耐震強度偽装事件も靖国問題もかすんでしまった。
だれが後継者になろうと、小泉の政策を受け継ぐのであれば大差はない。後継者問題ではなくて、小泉政権がなにをやったかが問題なのではないか。国民の目を後継者問題に集中させて、小泉批判が弱まっている。これではこの前の選挙と同じで自民の圧勝は目に見えているような気がする。
後継者は誰かということに競馬の予想のようなことをかきたてるマスコミは、自民の圧勝のために奮闘していることになる。
耐震強度偽装事件はいまもマンション居住者の不安をかきたてているが、この事件の根源にはアメリカの要求で実施された建築基準の改訂があるという。
毎年10月にアメリカ・通商代表部から示される「年次改革要望書」についてはこれまでにも聞いていたが、関岡英之氏の「拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる」(文春新書)でその実情を知った。小泉首相はまさにアメリカの要求に忠実に、日本の経済機構をアメリカの基準にしたがわせ、アメリカの資本が自由に日本を支配す
ることができるようにするために、いまの政府の一枚看板である規制緩和、構造改革をすすめているのであることを同書は明快に指摘している。
アメリカの木材業者の日本市場参入のために、従来の基準を改訂せよという要求が出され、それに従って建築基準が最低基準を定めるものとなり、従来の仕様基準を定めたものからからアメリカ型の機能基準を満たせばいいという方式に変わった。いわゆる規制緩和、構造改革である。検査機関も官から民へが実現した。この建築基準改訂が耐震
強度偽装事件の根柢にあることは明らかである。
郵政改革も司法改革もいずれもこの「年次改革要望書」にもとづくものであり、こうして日本の対米従属は骨の髄までにおよぶことになる。
日本が明治以来つくり上げてきた基準や方式がアメリカ式に作り替えられる。その矛盾、混乱の隙間に耐震強度偽装事件というような犯罪も発生し、政府はこれに対してただ国民の税金を注ぎこんで補償するというしか対策を持たないのだ。この事件は小泉改革なるものの実体と危うさを白日の下にさらしたのだ。
日米軍事再編が日本が米軍との一体化をすすめ、日本の軍事力を強化して、アメリカの命令一下、世界のどこへでも出動して、米軍のかわりに血を流す体制の確立をめざすもので、憲法改定によって完全なものになることは次第に明らかになってきた。
この対米従属は小泉内閣になってきわめて急速に推進されたのであり、これをマスコミは支援してきた。
長期にわたる不況、リストラにうちひしがれ、時代のの閉塞感に苦しむ国民は「改革」という言葉にすがりつき、実行力があるという小泉内閣を支持した。郵政改革に賛成か反対を問う選挙だと叫んで、反対派を徹底的に排除した選挙で大勝利をおさめて、小泉首相はきわめて得意気であった。
マスメディアはこの小泉人気をあおり、小泉批判の言説は曖昧模糊とした意味不明のものになりがちだ。
小泉首相はアメリカとの関係さえうまく行けばすべてはうまく行くのだとほとんど白痴的な発言をして、いま、世界から孤立して危地に追い込まれているアメリカに絶対従属の立場を示し、ブッシュ大統領を喜ばせた。
しかし、この頃の小泉首相は生気なく疲労感が感じられるように見える。改革の看板ばかりはならべたがその実効は疑わしく、マンネリズムになり、耐震強度偽装事件のような綻びばかりが目立つことになったからだろうか。
改革のペテンで国民の支持を得て、圧倒的な議席を確保したいまは、いよいよ大増税にふみきるときで、国民の支持が遠のいていく。
靖国参拝で、アジアとの関係を閉ざし、世界からも孤立する。
小泉政治がつづく限り、言葉だけは景気がいいが、実質は沈滞と疲労から解放されない。
そんな小泉政治を追い詰め、徹底的に批判して、国民の力で小泉政治の終焉を実現すべきときだ。
ところがマスメディアは小泉批判ではなくて小泉の後継者えらびに国民の関心を集中させることに努めている。
自民党の総裁は国民が選ぶようにしたいというような暴言を許し、自民一党による国民支配の継続を前提とする報道ぶりだ。
景気は回復したというが、年末から年始にかけて、なにか国民に生気がなくよどんだ気分が漂っているのではないか。
「時代閉塞の現状」という啄木の言葉が身に沁みる感じだ。
景気が回復したといっても、貧富の差が拡大し、低所得の非正規社員が増大して庶民の経済は悪化し、そこに大増税、健保、年金の改悪が押し寄せてきているからであろう。
「改革」の内実は空洞であり、国民生活を破壊するばかりであることが感じられて、それがこの疲労感を生んでいるのだろう。いま、必要なのはこの小泉政治の虚偽性と反国民性を暴露し、国民の小泉政治反対の声をもりあげ、国民の力で小泉政治を終焉させることであると思う。
いまのマスメディアがその方向に進んで国民を奮起させるむなら、マスコミは活気を取り戻すだろうが、その反対にこのような気運を押しとどめ、小泉政治の継続を前提とする以上、その沈滞と低迷は持続せざるを得ない。
国内を見る限り、くらい現実ばかりが目につくが、目を外に転ずれば、アメリカの支配を脱しようとするイラク人民の動向は新しい展開を見せるのではないかと思われる。
アジアでは中印の経済発展がめざましく、アジアの経済共同体への動きも顕著である。この新しいアジアは世界を動かす力となり、EU、アメリカとともに明日の世界の中心となるのだろう。アメリカも中国との関係を急速に発展させている。
六カ国協議は停滞し、米朝間の交渉は困難をきわめているように見えるが、とにかく、平和的な交渉で解決しようとしていて、やがては妥協点を見出すことができるだろう。そして、靖国参拝にこだわりつづけ、屁理屈をひねり出すばかりの総理大臣を国民が支持する日本だけがこの新しい動きから疎外されているように思える。
くらい日本の現実だが、「改革」の空虚な夢が破れるところに新しい転機も生まれる。
このごろは右翼にも反米的な色彩が強まってきている。
反米独立の要求が次第に国民の間に浸透しているのであろう。
しかし、これが反中、反アジアの傾向と結びつくとき、孤立的ナショナリズムとなる。今年の課題はアメリカからの自立の道を探るとともにアジアとの結びつきを強めることにあるだろう。
奇妙な倒錯した政治が極度に達すれば、おのずから新しい道が開ける。くらい現実をはっきりみつめて、そこに新しい転機の可能性を探る仕事を今年もつづけたい。
今年の新年は異常な寒さのようだが、皆さん、からだに気をつけてお過ごしください。
申し遅れましたが、「試想」という若い諸君の同人研究雑誌が広津和郎の特集をし、私も広津和郎の散文精神について書きました。
広津の散文精神が新しい意味をもってよみがえってくる時代です。まじめな研究者たちの力のこもった論文が並んでいます。ここにも新しい希望はあります。
私の掲示板に<野間宏>というハンドルネームの沖縄の青年が投稿しています。鬱病で高校を中退し、その前途を危ぶんでいましたが、次第に力強くなり、自分の思想を求めて努力しています。
新掲示板1に投稿しています。皆さんからも助言してやってください。
私たちは決して孤立しているのではない。
座間の米軍司令部反対闘争には、市長も参加し、1万5000人が集まってはっきりと反対の意志を示しました。
沖縄県知事、神奈川県知事以下、各自治体の首長もはっきり反対の意志を表明して、新しい国民的な闘争の形が生まれはじめています。いま、基地の拡張、再編を許せば、これから何十年つづくかわからないという危機感が関係自治体の首長をも動かしているのだと思います。
今年は憲法をめぐるたたかいが激しくなると思います。
イラクではアメリカの戦争主義が敗れて、新しい動向がイスラエルやアラブ諸国に生まれています。
ヨーロッパでもアジアでも、平和的統合の動きが強まっています。
アメリカ自身が方向転換を余儀なくされています。
そのなかで、日本だけが頑固で偏執的な総理大臣を存続させ、アジアと世界から孤立する道を歩いています。
この小泉政治を打倒しなければならない。
この小泉の後継者えらびに目をうばわれて小泉政治の存続を許してはならない。
漱石は「羸弱なら羸弱なりに、現にわが眼前に開展する月日に対して、あらゆる意味に於いての感謝の意を致して、自己の天分の有り丈を尽そうと思うのである。」と死の年の新年に述べた。
私たちも新しい年に「自己の天分の有り丈を」つくしたい。
伊豆利彦 http://homepage2.nifty.com/tizu
投稿者註:【羸弱】るい‐じゃく⇒身体などがよわいこと。かよわいこと。つかれよわること。「―の者」(広辞苑による)
奪われる日本――「年次改革要望書」米国の日本改造計画
警告レポート、米国に蹂躙される医療と保険制度、関岡英之(全文)