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ビデオニュースがオーバーチュアを提訴
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投稿者 World Watcher 日時 2005 年 12 月 28 日 22:19:51: DdDUJ9jrxQIPs
 

会社経営(という名の金策)だのその他もろもろの雑事に追い回され、本業であるはずの記者活動に十分な時間が割けない時期が何年か続いた後、2年ほど前にこれではいけないと一念発起し、自分の時間はできる限り取材・執筆・制作活動に回そうと決めていたので、あまりいろいろ面倒なことはしたくなかったのですが、12月26日、日本ビデオニュース(株)としてやむなくオーバーチュア株式会社を提訴することになってしまいました。

ことのあらましは、だいたい以下の通りです。

2005年 3月30日にヤフーの100%子会社オーバーチュアとヤフーなどの検索サイトでの検索エンジン連動型広告掲載の契約を結ぶ。

検索エンジン連動型広告とは、インターネットのユーザーが検索サイトでキーワード検索を行った際に、そのキーワードを登録していた広告が検索サイトのトップに表示されるというサービス。ヤフーとグーグルの独占市場ですが、1)そもそもそのキーワードで検索をしている人なので、広告としてのターゲットヒット率(標的とする対象に見てもらえる率)が非常に高い、2)その広告がクリックされ実際に自分たちのホームページにアクセスがあって初めて料金が広告発生するので、ムダが少ない。などの特徴があり、必ずしも大々的なCMキャンペーンを打つ財力のない企業にとっては、とても有効かつ重要な顧客獲得手段となっています。また、成長市場ネット広告の中でももっとも急激な伸びを見せているサービスでもあります。


2005年 5月頃 当初は順調に広告が掲載され、それに準じてアクセスも増えていたが、この頃からなぜか特定のキーワードがはじかれる(広告掲載が拒否される)ようになった。はじかれたキーワードを見てみると、「憲法改正」「靖国参拝」「中国反日デモ」のような政治的にデリケートなキーワードが多いことがわかった。

ビデオニュース・ドットコムとしては自分たちの放送しているコンテンツのクオリティには自信があるので、少しでも多くの人にうちの番組を見てもらいたいし、うちのようなサイトがあり、そこにそういう情報が存在することを知ってもらいたいという思いが強い。そこで、オーバーチュアに対して特定のキーワードが拒絶された理由をメールで問い合わせたところ(問い合わせ先がメールしかわからないようになっているため)、「特定の政治団体・個人を誹謗中傷するような内容が見受けられたため」との答えが返ってきた。誹謗中傷とは穏やかでない。これを黙っていたら、うちが誹謗中傷をするサイトであることを認めたことにもなりかねない。そう考え、「どこが誹謗中傷なのか」を問いただした。また、その際に誹謗中傷の意味を説明しておいた。


しばらくして別の担当者(オーバーチュアとのやりとりでは、こちら側はビデオニュースの代表であることを明記した上で個人名までフルネームでつけていたが、先方からのメールでは担当者はラストネームのみ。部署、役職などの情報も明記されていなかった)からメールが届き、誹謗中傷の表現は撤回されたものの、やはり「特定の組織・団体への批判と見受けられる表現がある」ことを理由に、広告掲載の拒否は正当であるとの答え。


こちらからは、「どこがその批判にあたり、どこが問題なのか」と問うても、「具体的な質問には答えられないが批判があるのでダメ」の一点張り。そうこうしているうちに、当初は特定のキーワードが問題であると判断したが、再度確認した結果、ビデオニュース・ドットコム自体が批判に満ちたサイトであることが判明したので、キーワードごとではなく、サイト自体が広告の対象としては不適格という判断にいたった旨の通告が届く。つまり、ビデオニュース・ドットコムはオーバーチュア(=ヤフー)の検索連動型広告には今後一切出してもらえないと宣言されてしまったわけだ。


その決定に抗議するメールの中で、報道を生業としている以上出演者が政府を批判したり、反対政党を批判することはあるが、それは他の報道機関も同じはず。「批判が全部ダメということになるとオーバーチュアでは他の報道機関の広告も扱わないということか」と問いただしたところ、「そんなことはない」との回答。実際、ヤフーの検索連動型広告には、産経新聞やTBSのニュースを扱うGYAOの広告がよく出ている。また、「正当な批判と、不当は批判があるではないか」との主張に対しては、「御社(ビデオニュース)は大いに批判をされたらいい。しかし広告は出せない」との答え。


その後、番組更新のたびに新たな広告掲載とキーワード登録の申請を行ったが、「不適格サイト」の判定がある以上一切の広告は出してもらえない。拒絶された広告の中には、私が大好きな歌手のパフィーの外人記者クラブでの記者会見の案内なども入っていた。パフィーもダメとは。


こうなると、ビデオニュースとしては2つに1つしかない。「あの天下のヤフーの子会社オーバーチュアが不適格だというのだから、しょうがないじゃん」とばかりに検索連動型広告をあきらめるか、争うかの2つだ。いや、正確に言うと、もう一つ選択肢がある。オーバーチュアが問題視していると思われる(具体的にどれとは教えてくれないので、こちらから推測して判断するしかない)コンテンツを削除して、「これとこれを削除したので、これなら広告出してもらえますか」と、ビデオニュース側が絶対的な恭順の意を示した上で、番組内容を自主規制をするパターンだ。


しかし、この3つの中で私が一番恐れたのは3番目のシナリオ。今後、広告連動型広告を出せることが事業を継続する上でどうしても不可欠になった場合、サイトの運営会社はサイトの内容をオーバーチュアが受け入れてくれるような内容のものに制限しなくてはならなくなる。つまり、番組を作る過程で「これを入れたら批判と言われヤフーに広告が出せなくなるから、これはやめておこう」みたいなやりとりがニュースルームの中で日常化する可能性があるということ。これは考えただけでも寒気がする。これでは言論の自由が風前の灯火となっている現在の新聞やテレビよりももっと悪い。


もちろん上の2つのシナリオも困る。1つめの「あきらめる」では事業に影響があるし、何よりも自分たちがオーバーチュアの判断を受け入れたことになる。となると2番目しかない。つまり「争う」だ。


私も会社を初めて10年にもなるので、それなりにいろいろな場をくぐってきてはいる。通常のビジネスであれば、その間に担当者と実際に顔を合わせてやりとりをしたりして、落としどころを探るようなことがあるものだが、今回はやりとりはすべてメールのみ。オーバーチュア側からのメールには電話番号も書いてない。先述の通り、部署も無ければフルネームもない。これでは会うも会わないもない。これがインターネット時代の商取引の形ということなのだろうか。


オーバーチュアはうちのサイトがどんなサイトで、どんな人たちがどんな考えで運営しているかもしらないまま「批判はダメ」の一律の基準のみでうちを切ってしまったのですね。そこまでその基準が絶対的なもののように言うのなら、じゃああえてきくが、そこで言う「批判」の定義って何ですか。世の中には「竹下の褒め殺し」のようなこともあれば、「愛の鞭」のような批判もあるわけだし。


何度やりとりしても、「批判はダメ」「それ以上の理由は言えない」「御社サイトは不適格」の繰り返しだったので、これでは埒が開かないと判断。まず2005年 9月12日 東京地裁に対し、公告の掲載を求める仮処分申請を出す。「頼むから、そう言わないで広告を出してちょうだい。裁判所さんからもそう言ってちょうだい」という話。また、拒絶の理由が不明だし、不当ではないかとも主張した。


その後、地裁で仮処分としては異例とも言うべき3ヶ月の長きにわたり、オーバーチュアが広告掲載を拒絶するに到った理由の妥当性を議論してきた。審尋の回数も5回に及んだ。こちら側からはビデオニュースのコンテンツのどこがどう問題なので、広告掲載不適格となってしまったのかを繰り返し訪ねるが、その点は契約上答える義務は無いの一点張り。結局どの番組のどの部分が問題だったのかは不明なまま。


どうも先方は番組の中身なんて見てないような印象。もしや、メールであれこれうるさく言ってきたので、「そういううるさいところは面倒だから切ってしまえ」とばかりにバッサリやっちゃっただけだったのかな。今あらためてサイトを見直して、やばいと思っていればいいんだけど・・・。うちはヤフーが主催するWeb of the Yearでも報道部門で毎年ベスト20に入るてっきとした真面目なニュースサイトだったんですよ、実は。


オーバーチュア側の主張は一貫して、これは広告なので、どんな理由で誰をはじこうが自由、というもの。「契約の自由」を全面的に主張するスタンス。


結局最後には、1)「契約の自由」だけで理由もなく特定の事業者との契約を拒否することの是非、2)オーバーチュアが主張する「批判」は広告掲載拒絶の正当な理由になりうるか、3)検索連動型広告が事実上オーバーチュアとグーグルに独占されていることからくる、独占企業の負うべき公共責任はないのか、4)インターネットやその検索サイトの公共性は、などの審議が必要となることが明らかになってきた。これらの審議を仮処分のレベルで行うことは困難と判断し、仮処分を取り下げ26日提訴に踏み切った。


だいたいこれがことのあらまし。


提訴の内容は、広告の表示と、広告掲載拒否によって生じた損害額(3930万2306円)の請求というもの。


私としては、まず一義的には事業者として広告を出してもらいたいということもありますが、いくつか気になる点もありました。


まず、キーワードが拒絶された際に、その理由が説明されないこと。理由もなく拒絶されると、いろいろ勘ぐりたくもなります。もしかして、危なそうなキーワードは自動的に全部はじいているのではないか。あるいは、ある特定の政治勢力の影響下にあるなんてことはないでしょうね、等々。


また、もしオーバーチュアやヤフーが「自分たちは一私企業なのだから、契約は自由。公共責任など負っていない」と主張するのであれば、それはそれで結構。ただし、使う側もヤフーやオーバーチュアはそういうスタンスで事業を行っている会社だってことを念頭に置いてつきあいましょうね、ということになる。公共性を放棄するということは、ヤフーの検索だってどんな恣意性が入っているかわかったものではないということになる。


私としては、これだけ多くの人がインターネットを利用するようになった今、インターネットという空間にも一定の公共性の概念がそろそろ持ち込まれてもいい頃ではないかと考えている。しかしながら皮肉なのは、自由参入であり表現も自由なところが魅力なインターネットにおいては、契約も自由であるべきだから、表現の自由を行使するサイトが契約の自由によって広告市場は検索市場から排除されてもそれはそれで仕方がないという話が成り立つという主張もあり得てしまうこと。つまり、極論を言えば、自由だから誰もでも入ってこれるし、自由だから何でもできるけど、そのコインの裏側は、自由なんだから誰をどんな理由で差別したっていいじゃないかという話にもなるのかならないのか。


まあ、何にしても、まだうちのサイトを見てない人は、ぜひサイトを見た上で、「これでは広告掲載が拒否されてもしょうがないよ」と思われるか、「ここの広告が拒否されるのやっぱりはまずいよ」と思われるかを判断していただき、コメントなどをいただければうれしいです。


尚、広告については、そもそも広告会社がスクリーニングをする理由の正当化としては、テレビや新聞など万人が利用するメディアで、突然「靖国」だの「改憲」だのといったデリケートな、あるいはセンシティブな話が出てくると、受け手側も当惑するだろうというものがあります。つまり、そういう広告や文言そのものを見たく無い人がいるだろうと思われるから、スクリーニングは正当であり必要という考え方です。


しかし、インターネット検索連動型広告の場合は、自動的にゾーニングでできているので、その論拠は当たりません。主婦が子供と子供番組を見ていたら突然「天皇制を考える」みたいな広告が出てきたら驚くかもしれませんが、検索連動型広告で「天皇」に関連した広告出る場合は、ユーザーが必ず「天皇」に関連したキーワードの検索を行っています。つまり、ある特定のトピックに関連した情報を求めている人にしか、その情報が提示されることはないわけですから、ゾーニングの問題はクリアできていると思います。だからこそ、検索連動型広告はヒット率が高いって、オーバーチュアは自分で主張しているはずです。


何にしても、新しい空間のインターネットで、これからいろいろと固有のルールを作っていかなければならいのでしょうが、実際にそれ関わってみるとその大変さが身にしみます。裁判にはお金もかかるし。


ちなみに、北海道の小樽で外国人であることを理由に入浴を拒絶した銭湯(公衆浴場)は違憲と判定されました。さて、裁判所はインターネットを銭湯以上に公共的な場と判断するかどうか。って言うか、そもそも裁判所がこのケースをちゃんと理解できるかどうか。ぜひこれから皆さんもことの成り行きを見守ってください。状況が進捗したら、随時報告します。(神保)

December 28, 2005


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