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東京地裁が申し立てを却下 「世界の非常識」記者クラブを追認
佐々木敬一 18:54 11/14 2005
7月に記者クラブによる取材妨害の禁止を求め仮処分申請していた問題で、東京地裁は11月8日、申し立てを却下した。申し立てを行っていたフリーランス記者・寺澤有氏や『週刊現代』副編集長・舩川輝樹氏などマスコミ関係者は11日、「記者クラブは世界の非常識」と題するシンポジウム(主催:アジア記者クラブ)のパネラーとして記者クラブの実態を語った。
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◇「記者クラブは邪魔なだけ」
寺澤氏と舩川氏は今年7月から、雑誌・週刊現代の誌上で漆間巌(うるま・いわお)警察庁長官が愛知県警察本部長時代に「捜査費」で宴会を開いていたことを追求し、連載を始めた。
長官へも取材を申し込み、警察庁と再三に渡ってやりとりをした。しかし、同庁の結論は、記者クラブに所属していないメディアである『週刊現代』が、漆間長官の肉声を聞ける機会は未来永劫にない、という内容だった。しかも、記者クラブの記者達は、毎週行う長官の定例会見の場で、一言も捜査費について触れなかった。「記者クラブは邪魔なだけ」と舩川氏は語る。
そこで両氏は2005年7月9日、警察庁と記者クラブ加盟社15社を相手どり、警察庁庁舎内で行われる記者会見など出席し質問することを妨害してはならない、との仮処分命令を東京地方裁判所に申し立てた。
「これは韓国にならったもの」と寺澤氏は言う。記者クラブ制度は日本と韓国にしか存在しない。韓国では、日本の植民地時代に導入され、戦後も権力が情報操作をするのに便利なため存続したが、03年に遂にその韓国でも記者クラブが廃止された。
口火を切ったのはインターネット紙「オーマイニュース」だった。01年に同紙の記者が仁川国際空港の取材をしようとしたところ、記者クラブのメンバーではないとの理由で、会見場から追い出された。同紙はその光景を動画付で報道。そして仁川地裁に「取材に対する妨害禁止」を求めた仮処分を申請し、裁判長に申し立てを認められた。それ以降、燎原の火のように次々と各省庁や自治体の記者クラブが解放されていった。
◇日本は裁判所が記者クラブを追認
しかし、日本では全く逆だった。東京地裁の青木晋裁判長が11月8日に下した結果は、寺澤氏らの申し立てをいずれも却下する、というものだったのだ。「国の主張をなぞったものばかりだった。要するに、長官の好意でクラブの記者達に話してやっているだけで、話すも話さないも長官の腹一つ。それを、ましてや、クラブに所属もしていない雑誌記者に話す理由はない、という内容」(舩川氏)。
「憲法21条で『報道の自由』が認められているにもかかわらず、取材の権利は認められないという。しかし、取材しなければ報道できないのだから、その権利が認められないというのは、明らかにおかしい」と寺澤氏は訴える。
◇税金を使っているという意識がない
記者クラブの運営は税金で賄われているが、内部では税金を使っているということを軽く見ている、と寺澤氏は指摘する。東京の司法記者クラブでいくら税金がかかっているのかを調べるため、寺澤氏がクラブ内にいる受付やお茶汲みの人件費を地裁の総務課の職員に聞いたところ、その職員は受付やお茶汲みはクラブで雇っていると思っており、地裁で雇っている自分の部下であるということすら知らなかったという。
「税金を使っているという意識が全くない。全国の県庁、県警の記者クラブだけでも、使われている税金は年間、何十億円にもなるはず。これから全国の市民オンブズマンと共に調べようと思っている。これが明らかになれば記者クラブは早晩、潰れるだろう」と寺澤氏は語る。
◇記者クラブを通しての癒着の実態
記者クラブ内部の実態について、西日本新聞の宮崎昌治記者は次のように語る。「クラブの内部では、皆の想像以上に、ニュースを他社に先がけて報じるかどうかの『抜いた、抜かれた』が重要で、いつもそのプレッシャーにさらされている。記者たちにとって一番怖いのは、一斉に他社が報じているのに一社だけ後れをとる『特オチ』と呼ばれるもの。実にくだらないことかもしれないが、それが記者心理」と語る。
その心理を知り抜いている警察などの官庁は、記者会見で、まともな質問をする社には、必ず『特オチ』をさせる。そのため、本質を追及する記者はいないのだという。
「この微妙な関係、あうんの呼吸の中に、よそ者のフリーランスや雑誌記者が入り、まともな質問をされると、クラブ側としては困ることになる。後で必ずクラブの幹事が官庁に呼ばれて『これは、どういうことですか? そういうお付き合いを今後はしなければなりませんね』という話になる。要するに、特オチを避けて特ダネを取りたいから、よそ者は入れたくない。根源的に行政には逆らわない」(宮崎氏)
こうして記者クラブの中で鍛えられた記者には取材力があるのだろうか?宮崎氏は次のように語る。
「自分の体感で言うと、日本の記者クラブの9割以上の記者は、当局からいち早く情報を聞き出すという取材力を競っている。当局がこういう方針を固めたという、いわゆる『方針を固めた原稿』。そうした力を会社も要求している。しかし、当局が隠している情報を知るという意味での取材は、時間もかかるし、記者クラブにずっといると、そういう取材をしなければならないという意識すら、なくなる」。
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「記者クラブにずっといると、当局が隠している情報を取材しなければならないという、意識すら、なくなる」と内部の実態を語る西日本新聞記者の宮崎昌治氏。
「記者クラブ内部では、税金を使っているという意識が全くない」と語るフリーのジャーナリスト・寺澤有氏。