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Hotwired
佐々木俊尚の「ITジャーナル・インタビュー篇」 泉あい(「GripBlog」ブロガー) インタビュー
上司も先輩もいないので、導いてくれるのは、読者しかいない。
http://hotwired.goo.ne.jp/original/sasaki_it/050927/
Text:佐々木俊尚 / ITジャーナル
泉あいさんは、「GripBlog〜私が見た事実」を運営するブロガーである。このブログが注目を集めている最大の理由は、それが日本にはまだ数少ない「一次情報を取材するブログ」だからだ。新潟中越地震の現場ルポ、記者クラブ問題についての取材、中国人たちに反日意識について聞く連続インタビュー、そして今回の総選挙での政治家インタビューなど、ひたすら現場で取材し続けた記事がGrip Blogには並んでいる。
ここのところ、日本のブログシーンではジャーナリズム論が盛り上がり、「一次情報はマスメディアから流れるが、その一次情報を分析・論評する力を持っているのはブログではないか」といった議論がさかんに行われるようになってきている。それに対してマスメディアの側からは「ブログには取材力もなく、われわれの一次情報を勝手にコピーしているだけではないか」といった反論も少なくない。
実際に現場で取材し、一次情報にこだわり続けるGripBlogの試みは、こうした議論の何らかの突破口になる可能性がある。そのあたりを運営者の泉さんはどのように考えているのだろうか。それを聞きたくて、インタビューを申し込んだ。
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泉あいプロフィール
1966年生まれ。音楽短大を卒業後、OL生活に入った。1997年に結婚したが、2001年に乳ガンを宣告され、乳房の4分の1を摘出するという手術を受ける。さらに2003年には糖尿病にかかり、現在も食餌療法を続けている。2004年7月に離婚し、そして同年末には「ルポライターになりたい」と会社を退職。今年1月にGripBlogを開設し、ネット上でのルポライター稼業をスタートさせた。
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「ルポライターということしか私にはないからなんです」
佐々木 ブログで記事を書き、情報発信をしようと思ったきっかけは?
泉 ルポライターになろうと思ったのですが、この年になってフリーでライターをすると言っても何のスキルもないし、どこかの出版社に入るのも難しい。もともと病気をしたときからずっとネットで闘病記を書いていて、ブログを使っていたんです。ブログだったらお手軽に、しかも自分勝手に情報発信できて便利かなと思ったのがきっかけでした。別にブログにこだわっているわけではなく、もっと使いやすいツールがあれば、いつでも移行するつもりです。
佐々木 尊敬しているルポライターやジャーナリストはいますか?
泉 古居みずえさん。昨年夏、ちょうど谷亮子さんがオリンピックで金メダルを取った同じ時間帯に、教育テレビで裏番組として日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)の写真展を紹介していたんです。写真展を見に行って、ちょうどボランティアを募集していたので、それにも参加させてもらいました。古居さんの写真は戦争の悲惨さを直接的に表現しているのではないのですが、ごくふつうのお婆さんとか若い女性の姿を撮影した写真の向こうに、その女性のつらさや人生やさまざまなものが浮き上がってくるような感じがして……すごく感動しました。そして古居さんはリューマチという難病に苦しまれて、そこから奮起されて30歳代の終わりにジャーナリズムの世界に飛び込み、アフガニスタンなどで取材を続けていらっしゃるんです。30代後半というのが「私と同じだなあ」と思って。
佐々木 古居さんのようになれるかと思いますか
泉 本当は、こんな私が本当になれるのかなあとは内心は思ってるんですが、でももう仕事も辞めてしまったし、一歩踏み出しちゃってますから、「絶対になるんだ」という気持ちを持っています。
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■古居みずえ氏 アジアプレス・インターナショナル所属のジャーナリスト。1948年生まれ。難病による闘病生活のあとに、写真展でパレスチナに出会い、1988年、会社を退職して取材活動をスタート。パレスチナやイスラムの女性たちを撮り続けている。主な著書に「パレスチナ 瓦礫の中の女たち」(岩波書店)など。
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佐々木 それにしても、取材や原稿の書き方などの基礎訓練を積む機会もないまま、いきなりゼロから取材をはじめて、しかも政治家にまでインタビューするというのは緊張しませんか?
泉 それはもうたいへんですよ。私がいけいけどんどんのタイプだったらいいんですけれど、実は人見知りも激しくて、緊張しっぱなしです。GripBlogをはじめたばかりの今年1月、新潟中越地震を取材したんですが、取材旅行に出る前の日は、本当に恥ずかしいんですけれど、自宅でわんわん泣いちゃったんです。自分で行くって決めてて、だれかに強制されたわけじゃないのにね。
佐々木 どうして泣いちゃったんですか。
泉 被災地の人たちに話を聞く、ICレコーダーのマイクを向けるというのが、すごく無神経な行為なんじゃないかって思っちゃって……。でも今でもその緊張は変わらなくて、たとえば記者クラブ問題でマスコミに電話して、冷たい対応とかされると、3時間ぐらいわんわん泣いちゃうときがあります。
佐々木 そこまでつらい思いをして、それでもルポライターを目指すモチベーションは何なのでしょうか。
泉 それは、このルポライターということしか私にはないからなんです。OLももう辞めちゃったし。もしこれをやめてしまったら、就職しなければならないですよね。私は音楽短大なのですごい高学歴ではないし、何のスキルもないし、それでこの年でどこかで雇ってくださいっていうのは難しいですよね。もちろん子供も産んで育てるという選択肢もないわけではないのですが、でも現実としては私にはもう子供は無理かなと思っている気持ちがある。そうなると、そんなに大それたことじゃなくてもいいから、何かしらのかたちになるものをやっていって、そして自分がこれだけ一生懸命にやったんだということをどこかに残したいんです。私には、これしかないんですよ。
佐々木 厳しい心構えですね。
「人と会うの? いや、好きじゃないです。」
泉 でも一回、実はやめてしまいそうになったことがあるんですよ。今年3月末のことです。それまで約2か月間、ひとつのテーマを1週間で取材して執筆すると決めていて、毎日のように取材交渉し、取材をし、テープを起こして原稿を書くという作業をずっと続けていたんです。糖尿病を患っていることもあって、精神的だけでなく身体的にももういっぱいいっぱいでした。取材交渉もうまくいかないし……。そんな日々がいているうちに、「こんなことをやっていても、いったい何になるんだろう?」という気持ちがむくむくと沸いてきてしまったんですね。私が取材をしたって世の中が変わるわけじゃないし、そりゃ世の中を変えようと思ってやってるわけじゃないんですが、それでも何とも言えない無力感があって……。ブログを閉じて、1週間ぐらいはずっとひとりでベッドの中で泣いてました。
佐々木 その間、何を考えていたんですか。
泉 「ああ、とうとうやめちゃったんだ」と泣きながらいろんなことを考えてました。本当にこれでいいの?と自問自答したり。
佐々木 最終的にはでもやめなかったんですね。気持ちにどう決着をつけたんですか。
泉 1週間泣いて、もうブログもやめたし、そろそろ就職活動をしなければならないかなと思って、パソコンの電源を入れたんです。するとずっと習慣になっていたニュースサイトの閲覧をしちゃったり、テレビをつけてもドキュメンタリーを見てしまったりする自分がいたんですね。そうして以前だったら、そうした記事や番組に何の疑問も感じていなかったのが、気がついたら「私だったらもっとこんな風な切り口にするのに」とか「もっとこんな見方があるんじゃないか」といった気持ちでそうしたリソースを見ていた自分がいたんですね。
佐々木 以前の自分とは違っていた?
泉 そう、それを自覚したんです。本当に小さな変化でしかなかったんだけれど、でも自分にも何かができるんじゃないか、何かをしたいという気持ちが再び心の中からわき上がってきて、もう一度頑張ろうという気持ちになりました。本当は原稿を書くのだって好きじゃないんですけれど、でもまたやってみたいなって。
佐々木 書くのは好きじゃないんですか……。じゃあ人と会うのは好きですか?
泉 人と会うの? いや、好きじゃないです。
佐々木 ルポライターで食べていこうと思う人は、書くのが好きなのか、あるいは人と会うのが好きなのか、っていう人が多いようです。
泉 そうですよね。書くのが嫌いなら、止めた方がいいですよって言われたこともあるんですよ。
佐々木 スクープを取るのが好きだという人もいます。新聞社の社会部には「ネタ屋」「書き屋」なんていう隠語もあって、ネタを取ってくるのが得意な人と、文章を書くのが得意な人の二分類に分かれているようです。
泉 でも私は、何かを暴くというのがすごく苦手なんです。どちらかといえば、頑張っている人を探し出してきて、「こんなに頑張っている人がいるんですよ」ということを世の中に知らしめたいという思いの方が強いんです。でもそうした頑張りの中にもいろいろ問題が起きていたりしますよね。そうした問題も提起して、そこを良くしていきましょうということも書いていきたいと思っています。
佐々木 さまざまな問題の渦中にいる人が、どんな思いをして行動したり、悩んだりしているのかということを描いていきたい?
泉 そうですね。批判から入っていくほど私は強くないし、頭も良くないので。たとえば記者クラブ問題もそうなんです。記者クラブ問題を取材しているのは、「記者クラブはおかしいじゃないか」ということを声高に言いたいためじゃなくて、「記者クラブ精度には問題があると聞いたんですけれど、当事者の皆さんはどう考えていらっしゃるんですか」ということを聞こうと思ったからなんです。
佐々木 取材・執筆の能力は最初と比べてだいぶ上がったと思いますか?
泉 最初はボロボロでしたから、それに比べたらましにはなったかなとは思います。でも私には先輩も上司もいなくてひとりでやってて、間違った視点や取材手法、インタビュー内容を正してもらう方法がない。そんな私のフィルターを通して、記事を読者のかたがたにお伝えするというのはものすごく大きなプレッシャーなんです。文章の書き方なんかは読者のかたがたにも注意してもらったりしているんですけれど、でも文章だけでなく、どのような視点でその文章を書くのかということについては、すごく不安になります。「本当にこれでいいのだろうか」というのは、毎回毎回すごく感じます。
佐々木 だからこそブログ読者との間でキャッチボールを行って、記事を作っていくという手法をとっているということなんですね。
泉 そうです。インターネットの中にずっといると、分析力のある人がいっぱいいらっしゃることに驚かされるし、取材に行かなくても自分の専門知識で勝負できる方が数多くいるんです。だからその人たちに議論をしていただければいいかなと思っていて、その議論をするということが、日本における草の根ジャーナリズム、ネットジャーナリズムのようなものなのではないかと感じています。私も最初は自分で論評、分析をしてみようと思ったんですが、頭が悪いので、分析できないんですよ。
佐々木 それで一次情報に徹しようと?
泉 はい。もちろん一次情報を取りに行くことを完璧にできているわけではないのですが、でもがんばってできるようにいま努力しているところです。そうして、「泉あいの情報だったら、信用してその情報を土台に議論ができる」というようになればいいなと思っています。そういう状況に持って行くことが、いまの私の夢ですね。
もっと読者と対話をしながらの取材を目指す
佐々木 それはネットジャーナリズムのあり方としては、アメリカや韓国とはかなり異なっているように思えます。
泉 アメリカや韓国にはない、日本のネットジャーナリズムのあり方があるんじゃないかと思っています。韓国の市民記者のようなかたちで、日本のブロガーたちが仕事をもちながらいろんなところに取材に行くというのは難しいのではないかと思うんです。
佐々木 なぜ韓国のような市民記者ができないと思うのですか。
泉 日本人って、そんなに自己主張を韓国人ほどしないと思うし、オーマイニュースのオ・ヨンホさんの話を毎日新聞のシンポジウムで聞いたのですが、韓国人はマスコミに対する不信感があったという歴史的経緯なども考えると、韓国のネットジャーナリズムはなるべくしてなったという姿だとは思うんですよね。日本とはかなり状況が違うと思います。
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■ソウルに本拠地を置くオーマイニュースには、「市民記者」と呼ばれる書き手が数万人登録している。火事や泥棒、交通事故など地元の身近なニュースから、国家の根幹を揺るがす汚職事件まで、こうした市民記者が送ってくる記事でオーマイニュースは成り立っている。バナー広告で収益が上がっているほか、特定の記事へのドネーション(投げ銭)モデルも行われており、ビジネスとしても成立している貴重なネットメディアである。盧武鉉政権の成立を支えたネット世論は、オーマイニュースを核としてできあがったとされる。オ・ヨンホ氏は元月刊誌記者で、オーマイニュースの創設者。
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佐々木 たしかにいまの日本のブログの世界では、「マスコミが一次情報を採ってきて、それを分析するのがブログだ」という意見は少なくありません。でももし一次情報と論評・分析を分けるのであれば、その一次情報をわざわざ泉さんが取材に行く必要はないのでは? 朝日新聞に任せておけばいいという考え方もあるんじゃないですか?
泉 そうですよね……そうなんですよ。うーん……。だから私が目指しているのは、もっと読者の発言に耳を傾けて、もっと読者を対話をしていくというかたちでの取材なんです。私はフットワークは割に軽いし、何の思想もないので、できるだけ事実に忠実に取材をするように心がけています。読者から「もっとこういうことを調べてほしい」という要望があれば、それに応えながら取材をしていきたいと思ってるんです。そうじゃないと私に取材なんかできないんですよ。上司も先輩もいないので、「これ間違ってるぞ」といってくれるのは、読者しかいない。私が横道にそれないように、ぶれないように、読者が「それはあかんぞ」と言ってくれるんです。
佐々木 読者からのそうしたコメントやトラックバックで、役に立ったことは具体的にありましたか。
泉 いっぱいあります。私はあがり症なので、インタビューとかでもしっちゃかめっちゃかになっちゃうんです。おまけに頭が悪いので、インタビューをしていても、聞きながらかみくだいて次の質問をするというのが難しかったりするんです。そういうときにこうしたらいいですよといったことを、ライターのかたとかが読んでいてくださって、助言をいただいたりとか。
佐々木 とはいえ、私個人としては、本当に一次情報の取材と論評・分析を切り分けられるのかどうかについては、かなり疑問があります。完璧に客観的な取材なんていうものはあり得なくて、どのような質問をするのか、どのような会話のキャッチボールをするかによって、取材にも主観は必ず入るのではないかと思います。そうなると、「自分は一次情報だけ」とは割り切れなくなり、取材者としてのバックボーンが問われるようになるのではないでしょうか。
泉 最初はそこまでなくてもいいかなとは思うんですよね。たとえば記者クラブ問題を例に挙げてみると、記者クラブがどういうところなのかは、私も含めて読者の方のほとんどは知らないわけです。だから記者クラブはどのような場所であるのかという広いところから入っていくというのはあると思います。いちばん最初のところでは、その概要を知ることは必要だと思うんです。……ただおっしゃるように、いつまでもそこにとどまっていてはいけないですよね。そうした取材のやり方が二回、三回と続いてしまってはいけないというのは私も思っています。
佐々木 そうやって進んでいくと、より深い視点を持って取材をするようになるのではないでしょうか。そんなふうに自分の読みがだんだん深くなっていくと、今度は読者との関係性がねじれてくるような事態も考えられませんか? たとえば何らかの狙いを持って取材をしたら、それに対して「それは予断をもった取材じゃないか」と批判されることも出てくるかもしれない。
泉 ずれているってこと?
佐々木 ずれていると読者の側は思うでしょうし、あなたはそう思わない。そういう状況が出てくるのではないかということです。
泉 そうですね、それはいまでもありますよ。取材対象の選び方とは取材の具体的方法ではなく、私の見方がおかしいじゃないかと指摘される方もいらっしゃいます。たとえば記者クラブ問題の取材でも、私は記者クラブに加盟したいとか、記者クラブを止めさせたいと思ってるわけじゃないんです。ただ記者クラブが閉鎖的だと言われていることに対して、当事者の記者クラブの人たちがどう思っているのかを聞きたいだけなんです。それは何度もブログ上で説明しているんですが、でもやはり「いったい泉あいはどうしたいのか」と立場を鮮明にするように求められたりすることは少なくありません。
佐々木 それは本質的な意見のずれでは……。ジャーナリズムの意味は、客観的に時代を記録することなのか、それとも社会改良運動なのかという意見は、昔から対立していて、お互いに相容れない。
泉 すごく難しいですよね。読者の言葉は聞き入れるという姿勢は持っているけれど、そればかりじゃやはり……自分をちゃんと持って行かなければならないし、そのあたりは難しいと思います。
佐々木 そのあたりはいまも悩んでいるということ?
泉 そうですね……。読者のこの意見はこれは受け入れられるけど、これは受け入れられないとか、いろいろ考えます。ある程度は対応しようとは思っているけれど、伝わらないこともありますし。
佐々木 意見の土壌がそもそも異なっているのかもしれないし、難しいですね。
泉 はい、本当に難しいですね。
「今のところは、いまできることをするしかない」
佐々木 仕事のやり方についてのお話をお聞きしたいんですが、どうしてそもそもブログでやろうと思ったんですか? 通常、ルポライターやフリーライターを目指す人は、紙の雑誌媒体、もしくは最近であればネットの商業媒体から入ることが多いと思うのですが。
泉 雑誌はそもそもまったく考えていませんでした。雑誌は基本的には「こういう内容のを取材してきてください」と依頼があって仕事に取りかかるというスタイルだと思うのですが、私はやはり、自分がやりたいことをやりたいし、見たいことを見たい。でもそんな大げさなことではなく、ぶっちゃけて言えば、大前提として自分にスキルがないという気持ちが強いんです。それでお金をもらうわけにはいかないですよ。
佐々木 でもブログは儲からないですよね? それはどうしようと?
泉 これからどうしようかというのは、今も考えています。そりゃ今だって、とてもひもじいですよ(笑)。でもスキルがないのに、書かせてくださいというわけにはいかないから。今回だって、たまたま総選挙にからんでちょっと注目されたりはしてしまったんですが、そういう注目を集めたからといって、私の取材力や文章力がそれに伴ってアップするわけじゃないですよね。だから気持ちをいっそう引き締めて、そこをきちんと高めていかないといけない。選挙を境に、読者の目も厳しくなりましたし。
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■泉さんは総選挙を取材し、小泉首相を含む各政党の党首にインタビューを申し込んだ。公明党の遠山清彦参院議員や社民党の福島瑞穂党首、共産党の小池晃参院議員などへの単独インタビューに成功し、その模様はGripBlogでビデオでも配信されている。また小泉首相のインタビューはさすがに実現しなかったが、自民党が初めて開催したブロガー向けの懇談会に出席し、この懇談会を仕掛けた世耕弘成参院議員にも単独取材した。
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佐々木 選挙でどのように読者の目が厳しくなったんですか?
泉 最初は「がんばって!」という励ましが多かったんですが、だんだん期待感に変わってきた感じがしています。そして総選挙が近づいて選挙の記事を書くようになってからは、「プロだったらこうすべきではないか」といった厳しい意見も増えてきました。でもそれは私にとってはとてもありがたいことです。
佐々木 立ち入ったことを聞きますが、収入はどうされているんですか?
泉 ないです。貯金を取り崩しています。取材活動費については、私のやっていることを理解してくださっているかたが数人いらっしゃって、その方たちに面倒を見ていただいています。また掲示板とブログをつなぐGrip Forumというシステムも公開してるのですが、これも専門家のかたに協力をいただいています。何か一生懸命やっていると、協力してくれる人は意外といるんだなと感動しています。
佐々木 ブログで収入を上げるモデルを考えたことはないですか?
泉 広告とかですよね。取材に影響するとは思えないけれど、ブログ以外に新しいツールが見つかったら、そちらにすぐに移りたいと思うだろうし、そうなったときに広告とか入れると迷惑をかけちゃうし。
佐々木 でも貯金を取り崩していたら、いずれは生活が立ちゆかなくなるわけでしょう? いつごろまでに収益モデルを確立しなければ、という期限はあるんじゃないですか。
泉 今のところは、いまできることをするしかないかなと思ってるんです。でも確実にこれで食べていかなければならないし、これで食べていくんだという気持ちはあります。
佐々木 カネの話ばかりするのも気が引けるのですが、でもどうやって食っていくかというのは、ネットジャーナリズムが確立していくうえでは重要な視点だと思っているんです。
泉 そうですね。でも私は今のところ、仮にいくら注目されたとしても、中身がきちんと伴っていなければすぐに読者は逃げていくと思うんです。だからいまできることを、ちゃんと確実に実行し、取材も確実に行い、きちんと書いて、それで注目されるようになりたいと思っています。そうすれば今回の選挙でちょっと注目していただいたように、また何かの機会があったときに注目してもらえるといいかなと思うんですよね。その日に備えて、いまは日々確実にやっていかなければ。
佐々木 将来的には、まだどのようにして収益が成り立つのかは見えていない?
泉 いまはスキルアップなんですよね。実力もないのにね、食べることばっかりも言えないですから。
佐々木 声を大にしてそういうことは言いにくい?
泉 そうですね。