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『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No68
http://npojip.org/sokuho/060621.html
大阪C型肝炎訴訟判決に思う:感染の因果関係を認める判決は評価できる
しかし、85年以前の罹患の責任認めず
第9因子製剤の不適切な適応承認を容認したのは誤り
2006年6月21日
NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック) 代表(医師) 浜 六郎
本日(2006年6月21日)午後、大阪の薬害C型肝炎の裁判の判決が大阪地裁であった。
判決骨子の要旨は、
フィブリノゲン製剤につき、64年(承認時)や78年(米国で先天欠乏以外中止)時点で中止しなかった会社と国の損害賠償責任は認めない。
しかし、85年8月以降にフィブリノゲン製剤の投与を受けた原告ら9人については、輸血等併用事例を含め、フィブリノグン製剤投与とC型肝炎ウイルス感染との因果関係がすべて認められる。
被告会社は,85年8月以降の患者ら9人に対し賠償責任がある。
国は、87年4月以降の原告5人に対し賠償責任がある。
上記原告ら9人の損害は1320〜3630万円と遅延損害金。
84年以前にフィブリノゲン製剤を使用した3人と第9因子製剤を新生児出血に使用した1人の合計4人は、両被告の責任を認められない。 であった。
今回の判決について、NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)として、以下のように考える。
コメント(まとめ)
C型肝炎ウイルス感染との因果関係を認め、メーカーと国の責任の一部を明らかにしたことは評価できる。
しかし、84年以前でも、より有効な治療法があったのでフィブリノゲンは不要であった。84年以前のウイルス除去は不完全で感染の危険はあり裁判所の判断は誤り。クリスマシンも、後天性欠乏症を承認しているのは日本だけで誤りだ。全員救済されなければいけない。メーカーと国は、少なくとも今回責任ありとされた点は認め控訴してはならない。現にある薬剤についても見直し、承認を厳しくしなければいけない。
コメント(全文)
フィブリノゲン製剤とC型肝炎ウイルス感染との因果関係を、輸血の有無にかかわらず認めたことは、非常に評価できる。
また、少なくとも85年以降については、メーカーの責任を認めたこと、国についても87年以降については責任を認めたことは評価できる。
しかし、DIC(播種性血管内凝固症候群)の概念は1970年代には確立し、DICはヘパリンが特効薬であることは確立していた。産科についてもフィブリノゲンが無効であることは1978年には明瞭になっていた。
また、BPL(ベータ-プロピオラクトン)で不活化がなされたといっても、不完全であって、かなりの程度の肝炎罹患があった。
したがって、害と有効性のバランスからアメリカでは中止となった。このことについて、裁判所は判断を誤っている。
棄却された1984年以前の使用についても、責任は認められて当然である。
クリスマシン(第9因子製剤)についても、諸外国での適応症は血友病Bのみである。後天性の欠乏症は外国では適応とされていない。今だに、日本で後天性の欠乏症が認められていることは不可解である。極めて日本的な現象であり有効との裁判所の判断は間違いである。
新生児の脳内出血はビタミンK欠乏症のためであり、基本的にはビタミンKの補充でなければならない。ビタミンKが効果を発揮するまでに8時間程度必要であるので、それまでは最小限の血漿製剤を使用することで対処できる。
したがって、新生児へのクリスカシン投与を認めていた(現在でも認めている)こと自体、国の過失である。
今回の13人は全員救済されなければいけない。
メーカーと国は、少なくとも今回の判決で損害賠償責任があるとされた点については争わず、現に承認されている薬剤についても見直し、今後も薬剤承認を厳しくしなければいけない。
判決骨子原文
フィブリノゲン製剤につき、昭和39年(製造承認)時点,昭和53年時点における後天性低フィブリノゲン血症の適応除外をしなかった被告会社ら及び被告国の損害賠償責任を認めることはできない。
被告会社は,昭和60年8月以降にフィブリノゲシ製剤の投与を受けた患者ら9人に対する損害賠償責任がある。
被告国は、被告会社らと連帯して、昭和62年4月以降にフィブリノゲン製剤の投与を受けた原告ら5人に対する損害賠償責任がある。
昭和60年8月以降にフィブリノゲン製剤の投与を受けた原告ら9人については、輸血等併用事例を含め、フィブリノグン製剤投与とC型肝炎ウイルス感染との因果関係がすべて認められる。
上記原告ら9人の損害は、C型肝炎の罹患状態、治療経過、個別事例等を考慮して、1320万円から3630万円(弁護士費用を含む。合計2億5630万円)及び遅延損害金とする。
その余の原告ら4人(第IX因子複合体製剤の投与にかかる原告1人を含む)につき、被告会社らおよび被告国の損害賠償責任を認めることはできない。
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