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水俣病50年 第4部 Minamataに学ぶ海外 水銀削減
水銀削減 (12)米環境保護庁リタ・ショーニー博士 情報共有化への貢献期待
http://kumanichi.com/feature/minamata/minamata_50nen/dai_4_bu/4_bu12.cfm
http://kumanichi.com/feature/minamata/
◇リタ・ショーニー 米シンシナティー大大学院医学部で微生物学博士。1986年EPA入り。水銀による健康被害とリスク評価、連邦議会への水銀報告書執筆、「メチル水銀環境水質基準」などを担当。EPA水質局シニアアドバイザー。ワシントンDC在住。
[日本より厳しい各国のメチル水銀摂取リスク評価]
対象は妊婦。単位=マイクログラム。1日体重1キログラム当たり
米国 0.1
EU 0.1
ドイツ 0.15
カナダ 0.2
WHO・国連0.22
日本 0.28
※EPA調べ。日本の値は食品安全委員会算出。
米国ワシントンDCの環境保護庁(EPA)で水質局シニアアドバイザーのリタ・ショーニー博士に、低濃度の水銀が人体に及ぼす影響などについて聞いた。(井芹道一)
―魚介類を多食しない米国で水銀に敏感なのはなぜか。
第一に米国は多民族国家だ。先住民には今でも近くの湖や川で捕獲した魚を食べる人も多い。日系人など日常から魚介類を多食する多くのアジア系民族もいる。第二に米国は世界でも指折りのダイエットに関心が強い国だ。体重減を願う女性や心臓に負担が少ない健康食を望む人が魚介類を多食している状況がある。米国など世界の多くの研究結果が、水銀含有量の多い魚介類摂食で子どもへの悪影響を示していることも大きい。
―妊婦の毛髪水銀のリスク評価は日本の一一ppmに対し、米国は一・一ppmとかなり厳しいが。
水銀が人体に及ぼす悪影響については一九五〇年代は、日本の水俣病のように直ちに死に結び付くような劇症型が中心だった。七〇年代には水銀中毒の症状がない母親から生まれた赤ん坊にひどい症状が現れるなど、微量水銀の影響が懸念され始めた。九〇年代には、赤ん坊に何の影響がないように見えても、学習能力に影響が現れることが、国際的な研究で分かってきた。いま最も懸念しているのは、水銀含有量の多い魚を食べることで人々が死ぬことでも、重度の障害を持った子どもが生まれることでもない。妊婦や子どもを微量水銀の悪影響からどうしたら守れるかだ。
―WHOの成人の毛髪水銀基準値は五〇ppmだが、母親の毛髪水銀値が一〇ppm以下の微量水銀が胎児に及ぼす影響について、フェロー諸島(デンマーク領)での研究は「影響あり」、セイシェル(英領)諸島では「影響なし」と逆の結果が出ている。
論争は続いている。問題はなぜセイシェルでは同じ結果が出ていないかという点だ。まず調査対象の民族も調査手法も違うことがある。フェローは白人中心でバイキング(北ゲルマン族)の子孫がほとんど。セイシェルは大部分がアフリカの黒人だ。アフリカの子どもは成長が早く、毛髪も民族によって遺伝子的に違いがある。こうした相違が結果に影響を与えている可能性がある。
これらの研究結果を評価する場合、大切なのは、国民の健康を守る上でどんな悪影響があるかというリスク評価の観点からどれを採用するかだ。研究結果に違いはあるが、白人と先住民の多民族国家であるニュージーランドを含めた三つの優れた研究のうち、度合いは異なるが、二つが影響ありとしている点は重い。少なくとも母親の魚介類摂取で胎児の水銀にさらされる可能性が大きいという点は認めるべきだろう。
―水俣病公式確認から五十年。日本に何を期待するか。
水俣病が水銀に対する世界の目を覚まさせた。微量水銀の人体への影響を含めて、世界のどんな専門家より、日本は知り得る立場にある。水俣病という不幸な出来事から得たあらゆる情報を、各国の専門家がもっと共有できるような形で情報提供していくことが日本に期待される最大の貢献だと思う。
熊本日日新聞2006年4月26日朝刊
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