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私達の病める社会(Our Sick Society)
by ポール・クルーグマン:ニューヨークタイムズ紙2006年5月5日掲載
嘘つき大統領のデタラメ経済
嘘つき大統領のアブない最終目標
NYタイムズ紙に5月5日付で掲載された経済学者ポール・クルーグマンの連載コラムを以下に全文翻訳して掲載。(文中リンク・注は訳者による)
クルーグマンがコラムで嘆くように、米国の医療システムは党派に関係なく問題視されており、その改善政策案は2008年度大統領選挙の争点のひとつになると思われる。世論調査によれば、2004年度選挙でブッシュに投票した有権者の内62%が、大統領と議会が現在の医療危機に対応できていないと感じているという。
一方、戦争費用により膨れ上がった財政赤字の削減に取り組むことになったブッシュは、軍事関連では相変わらず太陽系最大の支出を目指しているが、国内医療向け予算については今よりもっと小さな政府を目指すことにしたらしい。ブッシュ政権の2007年度予算案では、国内貧困層向けの各種医療サービスや疾病対策支援予算---例えば、先住民族向け医療サービス、田舎向け医療器具補助、アルツハイマー対策啓蒙活動、さらにはスーパーマン役で名声を博したクリストファー・リーブ夫妻の設立したリーブ財団(クリストファー・アンド・ディナ・リーヴ麻痺資源センター)向け予算まで全額カットされている。(クリストファー・リーブ氏は2004年に死去し、妻のディナ・リーブさんも2006年3月6日に肺がんで亡くなった。ブッシュ大統領が予算案を公表したのは2006年2月6日で、ディナさんが死亡する一ヶ月前だった。)
アメリカ人であることは健康に悪いことだろうか?米国医師会学会誌に掲載された最新研究によれば、そういうことになる。
アメリカ国民の健康状態に何か重大な間違いがあることはもはやニュースでも何でもない。世界各国と比較してみれば、アメリカ合衆国が何らかの奇跡的偉業を達成したことは明らかだ。我が国では、国民1人当たりの医療費負担額が世界最高であるにも関わらず、カナダや日本、その他ヨーロッパの大半の国々よりも短い平均寿命と、高い乳児死亡率を誇っている。(訳注1)
しかし、この驚くべき悲惨な成績をもたらす正確な原因は判然としていない。富裕な国としては珍しいことに、我が国では国民全体への医療保険提供をやり損なっているが、それはアメリカ人の粗末な健康状態にどの程度影響しているのだろうか?人種と社会階級のもたらす影響は?アメリカ的生活の影響はどうか?
『合衆国と英国における疾病と不都合』という最新研究でも、これらの疑問の全てに回答されているわけではない。しかしこの研究報告には、国民を不健康にする原因が、アメリカ社会の何かにあるという有力な証拠が示されている。
同研究の著者は、55歳から64歳のアメリカ国民における糖尿病や高血圧などの有病率を、イギリスのそれと比較している。イギリスとの比較は、アメリカの問題を際立たせるために選択されたわけではない。イギリスでは、国民1人当たりの医療費負担は合衆国と比較して40%程度で、周辺各国、特にフランスと比べて、その医療サービスシステムは概して劣っている。さらに、イギリスは食生活や生活スタイルの健康度においても特筆すべきものがない。
それにも関わらず、同研究では、「アメリカ人はイギリス人よりもはるかに病的である」と結論づけられている。例えば、アメリカの中年層が糖尿病に苦しむ確率はイギリスの中年層に比較して2倍。これだけでも十分衝撃的な発見である。
さらに衝撃なのは、人種・社会階級を問わず、アメリカ人であるというだけで健康が損なわれていると思われる事実である。
社会階級が全く無関係であるということではない。(同研究では、非ラテン系白人への調査に限定したことで人種的要因が排除されている。)実際、どの国においても、健康と富裕には強い相関関係がみられる。しかし、アメリカ人の不健康ぶりは桁外れなので、アメリカの富裕な3分の1は、イギリスの下流な3分の1よりも不健康であるとのことだ。(訳注2)
どういうことだろう?医療保険に加入できないことの多いアメリカの低所得層にとって、それが不健康の要因となっているのは確実である。(訳注3)イギリスでは、全ての国民が政府の提供する医療保険に加入できるからだ。しかし、アメリカでも富裕層はほぼ全員が医療保険に入っている。
では、研究上「行動上の危険要因」と呼ばれる類の、悪い生活習慣についてはどうだろう?固定観念は正しい。イギリス人はアメリカ人よりもすこぶるアルコール好きで、アメリカ人はイギリス人よりも強烈に肥満に陥りやすい。しかし、統計に基づく解析によれば、悪い生活習慣がもたらす両国の格差は僅かである。
結局、研究を行った学者達は、相対的に富裕なアメリカ人でも不健康であるという事実に当惑している。だが私は、ここでいくつか可能性のある解釈を提示してみたい。
まず第一に、医療保険は優れた医療サービスを約束するわけではないということだ。例えば、糖尿病をめぐるニューヨークタイムズ紙の報道で指摘されているように、一般的に保険企業は病気を予防するための手当てについては支払いたがらないが、予防し損なった後で必要になる切断手術のような非常措置には支払う傾向にある。イギリスの全国民保険サービスは、民間の医療保険企業よりも広範且つ長期的視点に立って運営されており、限られた予算にも関わらず、実際にはアメリカ合衆国の医療システムよりも多方面に渡る医療サービスを提供できている可能性がある。
もうひとつの原因は、アメリカ人はあまりにもよく働くので、過剰なストレスを抱えているという可能性だ。フルタイムで働くアメリカ人の年間平均労働日数は46週。イギリス、フランス、ドイツの労働者の場合、フルタイム勤務でも年間平均労働日数はたったの41週にすぎない。過去にも指摘しているが、法的規制や組合の力により労働時間短縮が実現されているヨーロッパの経済よりも、我が国の仕事中毒経済は、国民が誇り高く主張する「家族の価値」に対してはるかに破壊的なのである。
働きすぎに加えて、最小限の社会的セーフティ・ネットしかない我が国の経済は、国民の健康を家族同様に損なっているのかもしれない。これは単なる提案である。確実に分かっていることは、アメリカ的人生は、2001年当時のホワイトハウス広報官アリ・フライシャーの有名な言葉を借りれば「恵まれている(a blessed one)」かもしれないが、国民の健康にとっては、深刻なほど悪い何かがあるということだ。
(以上)
http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2006/05/post_4a60.html
現政権のめざす社会はこれか!?場合によってはポストも?
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