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(2006.05.24号)
『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No67
ニュージーランドにおけるDTCA禁止を支持する意見書提出
2006年4月28日NPO法人医薬ビジランスセンターは、ニュージーランド保健省政策部門に対し、医療用医薬品の消費者直接宣伝(DTCA)の禁止を求める意見書を提出した。以下は、その日本語訳である。(原文はこちら)
2006年4月28日
ニュージーランド保健省政策部門御中
拝啓
特定非営利活動法人医薬ビジランスセンター(通称「薬のチェック」)は「薬のチェックは命のチェック」という医薬品情報誌を出版しているNPO法人です。この情報誌は、市民・患者と医師・薬剤師を対象とし、2001年からISDB(国際医薬品情報誌協会)の正式メンバーとして加盟している独立情報誌です。
「薬のチェック」はニュージーランドにおけるDTCA(医療用薬剤の消費者への直接広告)を廃止することを支持し、DTCAの継続に反対します。したがって、私たちはオプション3−すなわち、DTCAの廃止と疾病啓発広告の規制(医療用医薬品広告コード+DTCAと疾病啓発広告におけるオーストラリアの政策と調和させる)を支持します。
私たちは、ニュージーランドのDTCAの行方はたいへん大いに関心を持っています。その理由は、貴国のDTCAの状態は日本のDTCAに重大な影響があり、日本でも近い将来、このことが重要な問題になりかねないからです。
私たちがDTCAを重視するのは、私たちの最も重大な関心事である薬剤の適切な使用に大きく関係するからです。
真に治療効果の進歩と言える画期的な薬剤は、1970年台から1980年代に開発されました。1990年以降は、技術革新により多くの受容体に対する作動剤や拮抗剤などの、生物学的に極めて強力な作用を有する物質が続々と開発されているにもかかわらず、世界的に良い薬剤はあまり開発されていません。
製薬企業は、よい薬でもやや古いものの販売には熱心ではありません。彼らは効果や安全性の証明が乏しくとも新薬の販売に熱心です。新薬の方が高価で企業にとってはより大きい利益をもたらすからです。
ランダム化比較試験(RCT)やメタ分析の手法を用いたシステマティックレビュー、薬剤疫学的手法など、薬剤を評価する方法が十分に開発され、EBM(科学的証拠に基づく医療)が日常診療においても必須であることが、医療専門家の間にだんだんと認識が深まってきました。
製薬企業や特に米、欧、日の規制当局にとってあまり好ましくないこのような状況を克服するため、1961年のサリドマイド薬害事件後に実施され、企業が「過剰規制」と感じ始めた規制を緩和するための対策を講じはじめました。いわゆる「過剰規制」に対する規制緩和の方法は、以下のとおりです。
データ操作:うそにはならないが真実を隠すためにデータを操作する(サケットらのいういわゆる「HARLOT」:2003年BMJ)
対象患者の拡大(病人づくり)、
各界(官、学、メディア、患者)への資金提供、
情報の非公開、
市民・患者への医療用医薬品の直接宣伝
などです。
DTCAなしでも、病人づくりや適応の拡大の攻勢は極めて強くなってきています。たとえば、「高血圧ガイドライン」は、本来なら健康な人や薬剤が不要な人を患者として治療するように仕向けています(添付のパワーポイントスライド参照)。
また、いわゆる「高脂血症」に対するスタチン剤、「うつ病」に対するSSRI、日本で承認されているゲフィチニブ(イレッサ)のような抗がん剤なども同様の例です。
適切な薬剤の使用を促進するためには、市民・患者が薬剤使用による害を被らないように、また健康と安全最大にするために、評価が未確立な新薬の過剰使用を規制し、「適応の拡」「病人作り」を規制する必要があります。
なお、この意見書は、私たちの組織「科学的証拠に基づく適切な医薬品使用のための独立医薬品情報誌『薬のチェック』」の基本方針に則り、運営グループが作成したものです。
敬具
NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック) 代表 浜 六郎
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