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http://www.bund.org/opinion/20060525-1.htm
電磁波公害が叫ばれている
自宅は高圧電線の近く 電磁波の影響はあるか
測定した結果はいかに
栗林 等
新居の近くに高圧電線が
最近環境ホルモンや放射能汚染と並んで徐々に注目されるようになった電磁波被曝の問題に、引越しを機に直面せざるを得なくなった。新居に住み始めて少ししたころ、通勤途中の道に高圧電線の鉄塔らしきものが立っていることに気がついたのだ。鉄塔を見上げて電線を追っていくと、あたり一帯にかなりの数の鉄塔が建っている。しかも電線は我が家のすぐ近くまで通っているではないか。物件を探す時色々周囲の環境について考えたりしたが、電磁波の影響については気にもとめていなかった。新居は家賃の割にそこそこ住み心地がよく気に入っており、お金もないのですぐに引っ越すわけにもいかない。
居住空間全体で通常より電磁波の値が高くなる原因には、高圧電線が近くにある場合の他、携帯電話やPHSのアンテナから発せられる電磁波の場合もある。これらのアンテナはこの間爆発的に増えており、新たな基地局やアンテナ設置をめぐっては、全国で住民による反対運動も起きている。
どんな影響がどれくらいあるのか調べてみようと、レンタルで簡易型の電磁波計測器を取り寄せてみた。計測するにあたって、まずは電磁波について最低限の知識はおさえておかなければならない。
まず「電磁波」とは「電場と磁場が交互につくられながら伝播する電波」である。電気が流れると「電場」と「磁場」がセットで発生するということだ。電場の方はちまたで売られている「電磁波カット」を謳った商品などでもある程度防げるが、磁場はガンマ線と同じく非常に貫通力が高く、まず遮断することが出来ない(!)。
電磁波の中で特に人体への影響が問題となっているのは、
@極低周波(0〜100Hz〔ヘルツ〕)の交流電流から発生する交流磁場(ELF)
A携帯電話、電子レンジ等から放射されるマイクロ波(UHF)と呼ばれる極超短波(300MHz〔メガヘルツ〕〜3GHz〔ギガヘルツ〕)の2つである
レンタルしたのは@の磁界(磁場)測定器とAのマイクロ波測定器で、送料も含めて2週間5000円程度で借りられた。磁界測定器はデジタルで液晶画面に数値が表示されるタイプ。マイクロ波の方はアナログで針が左右に動くタイプだ。マイクロ波は密度の変動が激しいので、数字を見るより針の振れで変化を見た方が分かりやすいらしい。
高圧電線や家電製品が関係する@の磁場測定を中心に行ってみた。測定できる周波数は30Hz〜2000Hz。磁界の強さは0・1mG(ミリガウス)〜1999mGまで測れる。
ではそもそも、どれくらいの数値が出ると危険なのだろうか。
今年1月世界保健機関(WHO)が、電磁波対策の必要性や具体策を明記した「環境保健基準」の原案を取りまとめた。そこで引用されている日米の調査結果では、「3〜4mG以上の電磁波に常時さらされ続ける環境にいると、小児白血病の発症率が2倍になる」という。
日本では電磁波に対する規制はほどんどされていないが、スウェーデンでは規制値は2mGが採用されている。2〜3mGを超える値が出た地域は幼稚園・保育園・学校を閉鎖するという措置が取られているのだ。アメリカで出された勧告案でも、同様に2mGの規制が提唱されている。住宅・オフィスなども室内で2mG以上被曝しないよう設計、建築されなければならないという内容だ。電磁波環境研究所の荻野晃也さんなど、電磁波の危険性を指摘する研究者が主張する生活環境中の基準値はさらに厳しく0・1〜0・01mGだ。
冬はコタツに注意!?
以上をふまえていよいよ測定開始。説明書を読むと借りてきた測定器はコストを下げた簡易型で、測る際に測定器の向きを磁界の向きと合わせないと、きちんと測定されないらしい。色々な向きに変えながら測定してみた。
まずは自宅から。居間に立って胸の位置辺りで計測してみると、0・0〜0・1mG。いきなりすごい数値が出たらどうしようかと、ビクビクしていたがまずは一安心。だが隣の寝室に行くと1・0mG前後。なぜか若干高い。玄関から外に出て見ると、0・0mGで反応がない。家から高圧線までの距離は50mくらいだから、もっと影響があるかと思ったが、懸念していたほどではなかった。
電線の真下にも住宅が普通に立ち並んでいるので、そこでも測ってみたがやはり反応なし。高圧線と言っても送電網の末端に近い部分だからだろうか。鉄塔が立っているからといって、それで全て危険という訳ではないようだ。発電所から山を越えて都市に伸びているような高圧線の近くだと、かなり危険なのだろうと思うが。しかし電線の他にも、電磁波を出しているものは身の回りにたくさんある。再び家の中に戻り、今度は部屋の中の家電製品などを計測してみた。よく取り上げられるのは蛍光灯やテレビ、パソコン、電気カーペットや電子レンジなどだ。
まずは蛍光灯から。私の身長は170pちょっとだが、立った時の頭の位置では蛍光灯の真下でも反応はなかった。手を伸ばして蛍光灯から20pあたりまで近づけると、15〜25mG程度。電磁波は距離の2乗に比例して減衰するので、ちょっと距離をとるだけで急激に数値は下がる。普通に生活する分には影響はなさそうだ。
テレビとパソコン(ノート型)はともに液晶画面だが、直近まで近づけても2〜3mG程度しか計測されなかった。 言われているほど影響はないのか、計測の仕方が不十分なのかと考えながら、他のものも測ってみたところ、高い数値がいくつも出てきた。家の中で最も高い数値が出たのは電気コタツだった。電源を入れて出力を最弱にした状態で、コタツの台の真ん中に計測器を置いたところ、瞬時に120mGを超えてしまった! コタツの中に計測器を入れて、足が入る真下の位置で測ると30mG前後。座っている腰の位置あたりでも10mGを超えていた。まあ遠赤外線を照射しているのだからそれなりの数値が出るのは当然かもしれないが、小さいころよくコタツにもぐって遊んでいたことなどを思い出して、ゾッとした。コタツの中につっぷして、うたた寝などするのは最悪ということだ。
あとはドライヤーと掃除機が直近で50〜60mG。ドライヤーは手に持って頭の近くにあてるから被曝は避けがたい。掃除機は本体を持ち上げて掃除していると腰の位置あたりでかなり被曝しそうな感じだが、床に置いて転がす分には問題なさそうだ。その他にも電源のアダプターなど、数十mGという値はごろごろ出てきたが、いずれも直近で測った値。右に挙げたもの以外は、だいたい普通は体から数十p離れたところにあり、その距離から測っても0・1mG以上にはならなかった。
結局電磁波を出すものは家じゅうにゴロゴロしているわけだが、1m程度距離が取れていれば普通は問題ないということだろう。むやみに恐れる必要はない。ただ使う時直接体の近くに触れるものに関しては注意して、なるべく体から離したり使用時間を短くしたりする他ないということだろう。
そのあとマイクロ波の測定器で、電子レンジと携帯電話も測ってみた。電子レンジは温め始めるとすぐに針がレッドゾーンまで振り切れてしまった。1mくらいはなれてもまだ針は振り切れたまま。2mほど離れるとようやく反応しなくなった。携帯電話は通話中やメールの送信中に瞬間的にビビッと針が振り切れる感じだった。
家の中の状況は大体分かったが、電磁波というともう一つ気になることがある。最近危険性を訴える本が多く出回るようになったIHクッキングヒーターだ。これは家電製品の中ではずば抜けて最強の電磁波を放射する。むき出しの電子レンジのようなものらしい。我が家はガスコンロなので調べられないが、せっかくなので休日に大宮にある東京電力のPR館に行って直接測ってみることにした。
話題のIHはどうか
測定当日。PR館に向かう途中、ついでにJRの駅の中でも測定してみた。測定器は割りと大きめで持っていると目立つので、不審者に見られないように注意。駅のホームでは反応がなかったが、電車に乗り込んだ瞬間、腰の位置辺りで2〜10mGほどの値が出た。モーターの振動が強い車両へ移動してみると、場所によっては20〜30mGになった。足元に測定器を置くとさらに若干数値が上がる。駅について改札を出る際、思いつきでスイカSuicaの上に測定器を載せてタッチしてみた。電磁波は瞬間的に出るので、数値が出たところで画面をホールドする。ふむふむ、34・1mG…と思いきや、よく見ると小数点の位置が1桁違う。341mG! 瞬間的とはいえ意外なところで高い数値が出たので驚いた。タッチする度に手が強い電磁波を浴びているということか…。
そしてPR館に到着。休日ということもあって子どもを連れた家族で賑わっていた。原発のPR館同様、子どもが遊びながら電気について学べるコーナーがある一方で、電気を使った温水器やお目当てのIHクッキングヒーターなどが、メーカーごとにズラリと並べられている。係の人にIHクッキングヒーターを使った料理の実演コーナーがあると聞いたので、使っている横でこっそり測ってみることにした。
IHに関しては、電力会社がさかんにPRしているような光熱費削減にはならないとか、発火の危険性がないわけではないとか電磁波以外にも様々な問題点が指摘されている。特にガス関連の業界団体がIHを目の敵にしてキャンペーンを張っている。
実演が始まると、私の他10人くらいの人が集まって来た。ほとんどは家族連れだ。2つついているコンロのうち1つを使って炒め物をしたり、揚げ物をしたりしている最中、よかったら近くに来て見てみてくださいというので、他の人に混じってコンロの前方20pあたりのところでしばらく計測してみた。
結果は25mG前後。思ったほど高くはない。後で確認のため1人でもう1度お湯を温めて測ってみたが、やっぱり同じだった。どういうことだろうか?
閉館が思ったより早くこの日はそれ以上の測定が出来なかったが、後から他の人が行った計測結果を詳しく調べてみた。2003年に家電製品協会が出した『家電製品から発せられる電磁波(低周波磁界)測定調査』によると、コンロを2つつけた場合は、同じ距離では電磁波は倍になり、前面ではなくコンロの真上で測った場合、メーカーによって10倍近い値が出る。そこではコンロの真上に測定器を置いた場合、1280〜3470mGを記録したという!
また今回測定出来たのは周波数2000Hzまでの帯域だが、家電製品協会の測定では3200Hzまでと幅が広い。IHクッキングヒーターの場合、メーカーによっては32000Hz以上の周波数電波が出るものもあるということが分かった。今回の測定では周波数が2000Hzまでに限られていたため、他の家電製品に比べて非常に高い数値にはならなかったということだ。
メーカーのお客様相談センターに問い合わせると聞ける数値でも、メーカーによってバラつきはあるものの「前面20pで200mG」と回答をしていた。測定でははっきりと示せなかったが、安全だなどと楽観的な結論は出せないだろう。
電磁波は「内分泌をかく乱」
計測結果を紹介してきたが、では電磁波被曝は具体的に身体にどんな影響を与えるのか。
電磁波被曝による症状は非常に多岐にわたるが、大きくは2つに分けられる。 1つは放射線被曝と同じく、電磁波の高エネルギーの振動がDNAを傷つけ、ガンや白血病を引き起こす「発がん性」である。
もう1つはいわゆる「電磁波過敏症」といわれるもので、頭痛や胸痛などのからだの痛み、疲労、不眠、吐き気、視覚障害、てんかん発作など様々な症状がある。これは最近化学物質過敏症と並んで患者数が増大傾向にある。
人間が人工的に発電所などで作り出す「交流電流」から発生する「交流磁場」は、地球上にある「静磁場」(コンパスが反応するように、S極とN極が変化しない)と違い、毎秒50〜60回S極とN極が変化する。この「交流磁場」が生き物の体内の情報伝達やホルモン分泌に重要な微弱電流(生体電流)と「共鳴」してしまうことが、様々な健康被害を引き起こすメカニズムのひとつと考えられるのである。
@カルシウムイオンなどの細胞からの流出。生体の細胞膜では、ナトリウムイオンを細胞から排出し、カルシウムイオンを細胞内に取り込むといった「イオンポンプ」と呼ばれる反応が繰り返され、電気的環境が保たれている。この生体に重要なカルシウムイオンやナトリウム、カリウム、リン、リチウムなどのイオンが、電磁波のエネルギーを吸収して螺旋運動し、細胞膜から流出してしまうことで、様々な悪影響が起こるということである。
A脳内でつくられるメラトニンの分泌抑制。交流磁場によって生体電流がかく乱され、内分泌が誤作動を起こす。そのため脳内の松果体でつくられるメラトニンというホルモンが十分分泌されなくなってしまう。これにより睡眠障害、集中力・記憶力の低下、免疫力の低下など自律神経系の障害が起こる。またメラトニンはアドレナリンやセロトニンといった他の脳内の重要なホルモンの分泌を司っているので、これらの分泌異常による障害も起こる。
電磁波被曝は、環境ホルモンと同様の「内分泌かく乱」作用を持つということだ。今や「化学物質過敏症」と「電磁波過敏症」を併発する人も増えてきているという。電車に乗っていると人が多くなくても疲れを感じることがあるが、それも少なからず電磁波の影響があるためかもしれない。
これだけ電化が進んでしまった現在の生活の中で、電磁波そのものを完全に避けて生活することは不可能だ。電磁波とうまく付き合うには、身の周りのレベルでは何がどれくらいの距離にあると危険なのかという基本的な知識を身につけ、被曝を最小限に抑えることに尽きる。
また自助努力ではどうとも出来ない高圧電線や、携帯基地局の問題に関しては、予防原則に基づいて他国並みに規制を設けるよう国に対して働きかけを行っていくことも必要だ。電磁波問題は環境ホルモンなどと同様、因果関係がはっきり証明されずとも「予防原則」に基づいて規制していかなければならないことなのだ。
【注】電磁波の強度を示す単位にはμT(マイクロテスラ)もあるが、分かりやすさを優先して文章中の計測単位はmG(ミリガウス)に統一した。
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(2006年5月25日発行 『SENKI』 1213号3面から)
http://www.bund.org/opinion/20060525-1.htm
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