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http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20060403
2006-04-03 静かなる崩壊
日本でもメジャーな学会の一つ、日本外科学会が先週末に開催されました。私は小児科医ですし、開催場所も東京なので行けませんでしたが、医療関係者が密かに注目していた演題が発表されると言うので注目していました。会場の現場リポートは、実際にお聞きになられたザウエル先生のブログに詳しく書かれてますので、よろしければ目を通されれば雰囲気の一端が分かります。
注目の演題は期待とは別にサラッと流れたようですが、この演題が発表された「日本の医療制度についての諸問題−現在の保険制度の功罪と将来への展望」と言うセッションの中の特別発言に、現在の医療が直面している最大の危機が語られています。
今現在、また理不尽に医師たちが追いつめられている状況で、医師側が何らかの行動をおこさなければ、医療は崩壊する、正確に言えば、崩壊はとっくに始まっているのだと発言されました。また、かつてのインターン闘争を例にあげ、しかし、今の若い医師たちは、そういった闘い方を好まず、静かに辞めていくという方法をとっている、これでは、崩壊はとめられないのだ。
この発言の意味するところは医者ならすぐに理解できますし、その恐ろしさもまた即座にわかります。マスコミは嬉しそうに医者叩きをしています。それに煽られた世論も医者を叩く事は正義だと喜んでいます。司法も世論に乗っかって医者を断罪して狂喜乱舞しています。経済諮問会議も医療費は国の財政の厄介者だとして敵視しています。いくら叩いてもろくに反論されない医者叩きはすごく楽しかったと思います。
しかし医者の忍耐も無限ではありません。忍耐が限界に達したらどうするか、当然反発します。給与、待遇、勤務環境、訴訟問題などなど改善要求はヤマほどあります。これを団結して要求したなら初めて協議の場がもてます。これは医者だけではなくどんな職場でも当てはまる事です。ところが医者は表立って要求もせず協議をしないのです。サッサと辞めていくのです。
医者が辞めたらどうなるか、従来ならば病院は辞めた医者の補充を医局に要求し、補充人員が来れば何事もなく終わっていました。ところが新研修医制度と医局潰しに熱中したお蔭で、医局にも医者は乏しく、病院の要求には応えられなくなっています。医局に残っている医者も勤務条件の悪い病院への就職を拒みます。つまり医者に辞められた病院は欠員を埋める事が出来ず、診療科の縮小、病棟閉鎖、ついには閉院にもつながっていきます。
自治体病院などでは慌てて、議会で医療の充実の決議などをし、首長が医者の後釜を探すとか声明を出しますが、いったん医者に去られた病院には医者は寄り付きません。沖縄では困った挙句、小池北海道沖縄担当大臣にまで泣き込み、小池大臣も安請け合いしたのですが、大臣をもってしても後釜は見つからず立ち往生する始末です。
こういった医者の行動に医者仲間は非難も反発もする様子はありません。医者であるだけに職場環境の苛酷さは熟知しており、そんなところで働けとはとても言えないからです。もし言おうものなら「アンタが行け」と反論されますし、反論をなだめる術は無いからです。それぐらい現場の環境は厳しいと言う事です。
まさに静かなる崩壊です。誰も止める人も無く、止めようとする人も無い崩壊です。医者はどんなに叩き、締め上げても黙って仕事をすると、世間の人は無邪気に信じ込んでいるようですが、静かにかつ急速に崩壊しています。あなたの街の病院はまだ大丈夫ですか。もし診療科の一時閉鎖とか縮小なんてお知らせがあれば、もうその病院の崩壊はかなり進んでいると思ったら良いと思います。
医者の医療危機への対応は、静かに去って、崩壊させ、社会問題にすると考えたらよいかと思います。あれだけ団結力の無い医者が、申し合わせたように一致して行動する姿は不気味なほどです。そこまで医療危機は深刻化しているのですが、誰もまだ気がついていないようですから、これからもっともっと深刻化することだけは予言しておきます。
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# 都会の外科医 『まさにご指摘の通りです。国(厚生労働省)の既定方針に沿った医者潰し,病院潰しが急速に進行しており,彼らは予想外の崩壊ぶりに笑いが止まらないのではないでしょうか? これで削減された医療費の浮いた分は,またまた公共事業に投入することができます。』
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