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− 日本外科学会定期学術集会 −
発表演題番号 SS2-5
演題名 日本の外科医は理不尽な評価に対し行動せよー海外との比較
セッション名 特別企画(2) 日本の医療制度についての諸問題 - 現在の保険制度の功罪と将来への展望 -
セッション日時 2006/3/31 09:00〜11:30
セッション会場 第01会場
筆頭演者氏名 ○○ 謙
筆頭演者所属機関名 ○○大学医療情報部
本文
日本の外科医は、世界の外科医に比して著しく貶められている。よく知られた格差の一例は虫垂切除術の治療費であろう。日本では約1週間入院で医療費総額は 30万円ないし40万円程度。対して米国では1泊2日程度の入院で約200万円。総額は数倍だが一日当たりに換算すると、何と約5万円対100万円と、20倍もの格差である。
安さにもかかわらず、日本の平均寿命や周産期死亡率は世界最高。WHOが出しているWorld Health Report 2000そして同Report2003などは日本の医療を激賞している。ただし、海外からも客観評価しやすいマクロ指標の大成功を支えているのは、医師達の献身的な奉仕であり、医療現場というミクロの犠牲である。その二重構造を医師は強く認識すべきだ。医師数はOECD平均の人口千人あたり2.9人に比して、日本では2.0人と少ない。
医療安全に直結するこの過労状態を改善するどころか、厚労省は平成11年以来「医療過誤での死亡は、医師法21 条により異状死体として直ちに警察に届け出る義務がある」と慣行を破り、諸外国の医療過誤に対する刑事免責姿勢や国内での第三者検討機関設置の動きを無視して、法務省からの通知を開始させた。さらには、年少者への再犯の多い性犯罪者さえ名前を公表されないこの国で、処分中の医師名をインターネットで公開する方向だ。このようなクレイジーな過剰労働と重責と人権侵害を外科医に強いる日本では、志望する若い世代が激減しているのはごく自然である。厚生労働省の喧伝してきた医師過剰どころか、今後外科医は間違いなく不足・激減の一途をたどる。現役の外科医が怒らぬのが不思議だ。
日本の国民皆保険制度の枠組み自体は世界の保健関係者が賞賛する良い制度である。皆保険制度の破綻が取りざたされるが、その真の原因は医療費の高騰ではない。医療保険料の安すぎる設定と、その保険料すら徴収漏れで放置している事態、そして老人医療費への負担金や社保庁などの放漫設備投資等が原因である。
政府と経済界は医療費総額の抑制のみをテーマに、GDPの伸びの範囲内に医療費増加を留めよというが根本的におかしい。目安としてGDPを言うならば、医療費のGDP比をこそまずは国際比較すべきだが、それは日本は先進国中最も低い6,7%である。実は日本の産業界が国際競争力を維持している理由の一つに、医療保険料が極めて安いことがある。米国の自動車業界は民間医療保険への支払いが最大のコストとしてあえいでいる。企業のカネ余りと政府の余剰財源の存在にもかかわらず、医療費の抑制しか主張しない日本は、優等生に劣等生のレッテルをはってバッシングするいじめそのものであり、医療関連の成長の期待される産業分野(医薬、ME機器、医療材料、等)の雇用と経済波及効果まで潰してしまう愚かな産業政策ですらある。
今こそ、勤務医と開業医が協力し合って、世にも不思議な医療費バッシングをやめさせ、医療費を合理的な金額に増額させるためにあらゆる行動を起こすべきである。その行動こそが日本の未来を守る。行動せよ、外科医諸兄。
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