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2006年3月12日(日)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-03-12/2006031214_01_0.html
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農業用ビニールからおもちゃまで、幅広いプラスチック製品に混ぜて使われてきた、「フタル酸エステル」と呼ばれる化学物質が、ごく微量でも、アトピー性皮膚炎を悪化させるなど健康に影響を与えることが動物実験で分かりました。国立環境研究所などのグループが研究結果をまとめました。(神田康子)
フタル酸エステルは、プラスチックを加工しやすいよう柔らかくする可塑剤として使われています。使い捨ての食器などにも使われています。
国立環境研究所の高野裕久(ひろひさ)さん(環境健康研究領域長)たちは、フタル酸エステルとヒトのアレルギー性鼻炎の関連性を示す報告があることから、この物質が免疫系に作用しているかもしれないと考えました。
週1回の投与で
生まれつきアレルギー疾患を起こしやすい性質を持ったマウスに、アレルギーの原因となる物質(ダニからの抽出物)を注射して、アトピー性皮膚炎を起こさせ、そのときにフタル酸エステルがどのように影響を与えるか調べました。実験に使用したのはフタル酸エステルの一種のフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)です。
アレルギーの原因となる抽出物は耳に注射し、DEHPはオリーブ油に溶かして、腹腔内に注射しました。投与したDEHPの量は、0・8マイクログラム(マイクロは百万分の一)、4マイクログラム、20マイクログラム、100マイクログラムの4種類。週1回、計4回投与し、アトピー性皮膚炎の症状がどれくらい出るか、観察しました。
その結果、最も強く症状が表れたのは、20マイクログラム投与したマウスのグループでした。DEHPの量がより少ないグループでは、症状の強さは若干弱めでしたが、アレルギー原因物質と、DEHPを含まないオリーブ油を投与したグループよりは明らかに症状が強く表れました。(グラフ参照)
内分泌かく乱?
これまで、フタル酸エステルの健康影響としては、肝臓への毒性を指標として、摂取しても健康に影響が出ない最大量は、体重1キログラムあたり1日19ミリグラムとされていました。今回の実験での摂取量は、体重1キログラム1日当たりおおよそ0・0048ミリグラムから0・6ミリグラムに相当するといいます。高野さんは、「今まで影響が出るとされていた量より、ずっと微量で健康への影響が出る可能性のあることが示された」と話します。
DEHPを100マイクログラム投与したグループでは予想外の結果が得られました。このグループの症状の表れ方は、アレルギー原因物質とともにDEHPを20マイクログラム投与したグループよりも症状の表れ方が弱くなりました。
摂取量が多くなったとき、表れる影響が小さくなるという現象は、内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)でしばしば見られるといいます。高野さんは、フタル酸ジエチルヘキシルが皮膚炎を悪化させるとき、内分泌かく乱化学物質と類似したしくみで作用している可能性があると考えています。
高野さんたちは、マウスの胎児期に母体がDEHPを摂取した場合の影響や、乳児期に母乳を通じてDEHPを摂取したときの影響についても実験を進めています。
アトピー性皮膚炎
乳幼児期に始まることの多い皮膚炎で、かゆみを伴う湿疹が中心です。生まれつきアレルギーを起こしやすい体質の人が、原因となる物質を、食べたり吸い込むなどして症状が悪化します。原因物質には、ダニ、ハウスダスト(家庭内のほこり)、食物、カビ、花粉などがあります。
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