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(回答先: Re: 大企業の法人税率 98年度水準に戻せば 増収は1兆5千億円(しんぶん赤旗) 投稿者 gataro 日時 2005 年 12 月 09 日 16:01:37)
論説副主幹 平田育夫
自民党税制調査会の長老に以前こんな話を聞いた。「増税は党としてはいやなんだが、個々の議員にとっては『みんなで渡れば怖くない』という面がある」。続けて「歳出削減は違う。支持者の目が気になるから簡単には譲れない」とも言った。
そんな事情も背景にあるのか政府・与党は本格的な増税路線に踏み出した。所得税、消費税などの増税案が今後、相次ぎ出てくる。だが折あしくというか、数年前には見えづらかった時代の潮流なのか、個人のふところは寒くなる一方。過去最高益を更新するトヨタ自動車の労働組合が今年もベースアップ要求を見送るのは象徴的である。
政府・与党がそれでも大幅な増税路線を貫くなら、それも一つの見識だ。しかし増税への反対に立ちすくみ財政赤字を放置する結果になれば最悪である。増税への逆風の強さに早く気づき、歳出削減重視に転ずるほうが現実的なのではないか。
財務省や総務省の幹部の話を総合すると、向こう十年間に国・地方で十六兆―十八兆円程度の増税を想定しているようだ。そのほとんどは消費税・地方消費税や所得税・個人住民税など個人向け課税の増税。これら四税の今の税収は約三十四兆円だからほぼ五割の増税となる。
まず二〇〇六年に所得税・住民税の定率減税を半減、翌年に廃止し、約三兆三千億円の増収を見込む。早ければ〇七年から配偶者控除の廃止や給与所得控除の圧縮により所得税・住民税で兆円単位の増税も始める。
また〇七年の国会で消費税・地方消費税の増税を決めてもらう。まず〇九年から三%引き上げ、同時にその二―三年後さらに二%上げて一〇%とすることも決める。一〇%になれば約十二兆円の増収である。
内閣府が先週公表した試算によれば、特段の改革をしなければ一二年度に二十三兆円の基礎的財政収支赤字が予想される。前提にある年金の国庫補助拡充のための三兆円増税を除いて考えれば二十六兆円の赤字。そのおよそ七割を増税で埋める考えとも読める。個人がこの大幅増税に堪えられるのだろうか。
毎月勤労統計によれば、正社員のほかパート、派遣などを含む定期給与の指数は二〇〇〇年をピークに低下、好景気だった去年も前年同月を一%近く下回る月もあるなど低迷している。中国などとの競争で正社員の給与が上がらず、しかも多くの企業が正社員からパートや派遣社員に切り替えているからだ。
さらに年金などの保険料引き上げも待ち受ける。現実問題として政府が想定するほどの増税はかなり難しそうだ。かといって世界大競争の中では法人税の増税はさらに困難といえる。
やはり歳出の削減を中心に据えざるをえまい。国内総生産(GDP)に対する国・地方の支出の比率からみた「政府の大きさ」は欧米と比べ格別高くないが、高齢化で今後、急上昇する。医療など社会保障の見直しは避けられない。しかし官僚や政治家が社会保障改革こそ最優先課題のように言うのはフェアでない。社会保障は防衛や治安、防災などと並び国民にとって重要性の高い分野だからだ。
「社会保障以外の政策経費で削れるのは一兆円程度」と財務省幹部は言うが果たしてそうか。農林水産土木には来年度一兆三千億円も使うが、その多くは必要性が薄れ建設業者らを養うのが主目的化している。五兆円弱の防衛費も重要とはいえ、戦車などの値段が欧米より著しく高いなど削減の余地はある。
また地方交付税は十六兆円と国の一般会計の二割を占めるが、自治体の支出を整理すればこんなには要らない。地方公務員三百八万人の給与、約二十三兆円は民間への業務委託などで数兆円単位で削れる。それを含めなくとも各種祝い金を含む過剰な行政サービスなどで地方財政計画は七兆―八兆円、過大計上だと財務省は昨年主張した。
さらに道路など特別会計の事業を縮小し、使途を特定した財源を一般財源にすれば、これまた兆円単位の資金が浮く。
整備新幹線着工を予算に盛り込むなど政治家は放漫財政のぬくもりを忘れられないようだ。実現性の薄い大幅増税にしがみつき、歳出改革を怠れば、金利上昇などを通じ市場が暴力的に解決するだろう。それを待つほど我々は愚かではないはずだ。