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http://www.nikkei.co.jp/ks/desk/20051109b18b9000_09.html
アルフレッド・シャーマン翁の原理主義(11/9)
今から3年余り前の冬、アルフレッド・シャーマン氏という英国人にインタビューしたことがあります。当時82歳の老翁は、英国の衰退を止めたサッチャー革命の唱道者の一人。経済学者・ジャーナリストで、サッチャー首相の初期のブレーンとして「政府は小さければ小さいほどいい」という夜警国家論に近い市場原理主義を訴え続けた人でした。
すでに引退して長く、ロンドンの高級住宅街、ケンジントンのアパートに単身で住んでいました。80歳を超えていても、たまに英国の高級紙に依頼されて政策批評を寄稿するなど、マスコミにもときどき登場していました。サッチャー革命を支えた人たちに興味があって取材したのですが、老翁は昔を思い出しながら「市場原理の効用」を説いてくれました。シャーマン氏はかつては共産党員で、スペイン内戦に義勇兵として参加したこともあります。その後、東欧を研究するため詳しく視察し、その社会主義の実態をみて「不完全でも市場経済システムの方がましだ」と市場原理の熱心な信奉者になったという、極めて劇的な個人史をもっている人です。
お会いした当時の日本は、小泉政権が発足してまだ1年弱。郵政民営化など改革断行はまだこれからという状況でした。シャーマン翁は日本のこともウオッチしていて、改革の難しさについて「日本では欧米型の経済モデルと伝統的モデルの摩擦が起きている。既得権益を守ろうとする勢力は国益より強くなりがちなので、それを打破する改革には、日本なりの知恵が必要だ」と鋭く指摘していました。
前置きがかなり長くなりましたが、本日の1面は「東証売買高 最高の45億株」をテーマに、株式相場が1980年代後半のバブル期を彷彿とさせるような熱気を帯び、記録ずくめの売買になっている実態を点検したストーリーをトップで展開しました。郵政民営化選挙での自民党大勝のサプライズが、まだ株式市場の先行き期待感として相場をけん引しているように思います。詳しくは記事をお読みいただきたいと思いますが、市場では「マネーゲーム」が過熱する様相もみせています。しかし、金融システム危機とデフレが深刻化して以降、日本経済は市場のダイナミズムをしばらく忘れていたかのような感もあります。「不完全なシステムかもしれないが、市場経済システムが働く方がましだ」。大商いに沸く市場をリポートする紙面を編集しながら、シャーマン翁の語っていたことを改めて思い出しました。