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<一年以上前のことになりますが、私はチリを訪れ、ラゴス大統領にお会いした折、
「自国の経済的成功をどう解釈しておられますか?」と質問しました。ちなみに彼は経済学者です。彼は私にこう答えました、「チリが成功したのは、IMFの助言に従わなかったからです」と。彼らはワシントン・コンセンサスには従わなかったのです。もっと正確にいえば、東アジアがIMFの助言について取捨選択したように、彼らもやるべきこと、やるべきでないことを自ら選択し、実行したのです。
チリの経済は小規模ですから、成長のためには、貿易を相当程度自由化することは不可欠でした。しかし、資本市場については自由化しなかったのです。成長が最も急速に進んだ一九九〇年から九七年の間、チリ経済は平均で年率七%以上の成長を遂げましたが、その間も資本移動には制限をかけていました。
また、チリは国営企業の民営化計画も、IMFが望んでいたほどには強く推し進めませんでした。国営銅山企業のおよそ半分しか民営化していません。この国の銅山関連企業は民間企業と同じくらい効率的に経営されています。唯一つの違いは、国営企業は同規模の民間企業に比べ、約一〇倍の収益を政府に納付することにあります。政府はそれを教育や公共サービスに使うことができるのです。他方、民間企業の利益の大部分はアメリカに送金されてしまうため、アメリカ経済を富ますだけです。>
(注)ワシントン・コンセンサス
「政府介入をできるだけ排し、すべてを市場メカニズムに任せることによって経済はうまく機能するという、市場原理主義(market fundamentalism)である。世界のすべての国が市場原理主義に基づいて経済運営を行うことによって、アメリカ経済のように繁栄を享受することができるというのである。こうした考え方はあまりにも単純すぎるものであるが、ブッシュ大統領をはじめ、アメリカ政府やIMFなどの国際機関が共有する考え方である。
<アルゼンチン危機の原因の一つは、経済が後退期に入った際のIMFの介入そのものにあります。経済が低迷期に入ると、政府支出よりも税収の方が早く減少します。いや、ほとんどの場合、失業保険などの福祉給付で政府支出はむしろ増大します。いずれにせよ財政赤字が増えます。
ケインズがその独創的な著作を発表した折、ウォール街とケインズとの間でちょっとした論争が巻き起こりました。ウォール街側は、「景気後退に対しては、増税と支出削減によって財政赤字を減らすべきだ」と主張しました。彼らの誰もが、呪文のように唱えた言葉は、「信頼回復」でした。それに対して、ケインズは、「ばかげている」と反論しました。「やるべきことは、減税と支出増で経済を刺激することである」と主張したのです。まさに、真っ向から意見が対立したわけです。
過去七〇年の経験では、若干の例外がありましたが、ケインズの見方の方が基本的には正しかったということが明らかになっています。>
以上は、コロンビア大学教授、ジョセフ・E・スティグリッツ氏が早稲田大学で行った講義(2004/4/20)の講義録である「スティグリッツ早稲田大学講義録」(isbn:4334032729)よりの抜粋。IMFを「アメリカ政府」と読み換えれば、日本の現状にも適用できるのではないか。日本でも、小渕政権時代に「積極財政」路線をとって、国債を増発してまで政府支出を増やしたのだが。市場を活性化させ、景気浮揚を目論んだものの成功までには至らなかった。その背景には、日本の特殊事情があるのだろう。財政出動した分が特殊法人にまで流れ、吸い込まれて消えたなんてことはないだろうが。その資金の使途について調べる必要がある。