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(回答先: Re: 例えば どこの外国銀行ですか? 投稿者 まとはずれのおせっかい 日時 2005 年 12 月 04 日 02:45:13)
スイス、ほころぶ終身雇用、「増益でも合理化」浸透。1996/05/23, 日経産業新聞, 7ページ, 有, 1399文字
欧州で相次ぐ巨大合併のかげで、スイスに雇用不安が高まっている。業務補完や戦略部門強化という前向きの狙いの一方で、再編には過剰人員削減が付きまとう。自国通貨高で競争力が鈍ってきたスイスでも合理化は避けられない。終身雇用が行き渡り、雇用の受け皿としての企業の社会的責任が強く意識される同国だが、国境を超えた競争が「特別な国」の存在を認めようとしないようだ。
今年のスイスのメーデーは例年にない荒れ模様となった。チューリヒでは路上の車が放火され、警官隊が催涙ガスで鎮圧する始末となった。背景には増え始めた失業への恐怖がある。
スイスは八〇年代までほとんど失業のない“雇用の優等生”だったが、九〇年以降の不動産不況に加え、スイスフラン高騰で輸出企業や観光産業が苦境に陥り、失業率は過去最高水準の四・六%に達している。
他の欧州主要国より低いとはいえ、スイスが誇ってきた完全雇用が音を立てて崩れ出した現実に、国民は戸惑いの色を隠せない。
四月下旬、年内合併を予定している大手医薬品会社、チバガイギーとサンドの株主総会が開かれた。会場の体育館を埋め尽くした従業員株主からは、雇用不安を訴える声が相次いだ。
具体的人数は未公表だが、合併を機に両社の本社があるスイス・バーゼル市では三千五百人が削減される、というのが従業員組合の見方だ。人口二十万人、就業人口の三分の一が医薬関連の企業城下町にとっては死活問題だ。
合併でチバ、サンドが見込む合理化効果は合計十八億スイスフラン(一スイスフラン=約八四円)。本来なら雇用削減は株主に歓迎される話だが、株主と従業員、企業と地域社会が一体のバーゼルでは、話はそう単純ではない。
サンドのマーク・モレ会長は総会で「米英のライバルに勝つため、しばらく辛抱が必要だ」と競争力強化の大切さを何度も訴えた。伝統的な地域社会に支えられ、持ちつ持たれつでやってきた両社だが、海外との競争によって、地域との関係を捨てても効率を選ばざるを得なくなっている。
スイスは安全な資金運用先としての魅力と、豊富な観光資源を背景に、世界中のカネと観光客を集めて発展してきた。だが、資金流入でスイスフランが高騰したことと、カルテル体質が合理化努力の遅れを招き世界一物価の高い国になったことが、企業の競争力を阻害し始めた。
合理化の必要性はスイス経済の屋台骨の金融にも及び始めた。クレディ・スイスを傘下に持つCH・ホールディングと、スイス・ユニオン銀行の合併交渉は、破談になったとはいえ、交渉の裏側で雇用が大きなテーマとなった。
両銀行の国内従業員合計は四万四千人。不動産不況で収益の上がらない国内店舗の整理は、両行にとって最大の懸案だ。合併で二万人近い削減が可能との見方も出て、政治家を巻き込んだ議論が巻き起こった。
UBSのニコラウス・セン会長(当時)は結局、「大幅な雇用削減は社会的に容認されない」と合併提案を断ったが、「銀行店舗過剰は解決すべき問題として残っており、将来の再編まで否定する気はない」と含みを残した。合併を決断したチバ、サンドと結果は逆だが、舞台裏は同じだ。
重要なのは両行やチバ、サンドの九五年度決算が増益だった点だ。増益でも合理化を続ける米国流経営が欧州でも市民権を得つつある。日本と同様、スイスの終身雇用は崩壊に向かって歩み始めているといえそうだ。 (チューリヒ=高見信三)