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埼玉発――武蔵野銀行、群馬へ進出、「路線転換？」地元は戸惑い（列島金融ファイル）2005/10/18
埼玉県を地盤とする武蔵野銀行が群馬県への進出に動き出した。十一日に法人専用の相談窓口を開設したほか、主幹事として同行初のシンジケートローン（協調融資）も実行、攻勢に出る。ただ、従来「埼玉県民の銀行」を標榜（ひょうぼう）してきただけに、県内企業からは不満の声も漏れている。
群馬県太田市。十一日、東武伊勢崎線太田駅から徒歩約四分のオフィスビルに真新しい「武蔵野銀行」の看板を掲げた店舗が出現した。太田市は利根川を挟んで埼玉県と隣接する。富士重工業の生産拠点など製造業が集積し、埼玉県北地域との経済的なつながりが強い地域だ。
同行は太田市内で約五十社の取引企業を抱える。従来、融資などの際には近隣の熊谷支店から行員が訪問するなどして対応してきたが、「熊谷地域など県北での融資を増やすために熊谷支店から独立した」（宮原重行執行役員）としており、軌道に乗れば支店への昇格も狙う。
群馬県での実績作りにも着手。九月、桐生市に本社がある中古住宅リフォーム・販売のやすらぎ向けに、同行初の主幹事となる協調融資（他行と合わせ総額三十億円）をまとめた。「（本社に近い）近隣の有力地銀の引受先を探していた」（やすらぎ舩田啓取締役）ため、過去の実績は問わず、白羽の矢が立った。
「お互いに顔を合わせる機会が増えれば信頼感が増す」（大泉町の自動車用金型製造、宮津製作所の宮村均二郎専務）。群馬県内の企業は、金融機関同士の低金利競争への期待もあって総じて歓迎ムードだ。
同行の県外拠点は東京支店と約二十年前に開設した五霞支店（茨城県五霞町）のみ。埼玉県内への融資が約九割を占める。バブル期に無理な融資や店舗拡大の影響が少なく「堅実な金融機関」というのが地元での一致した評価。二〇〇五年三月期の連結最終利益も約八十六億円と前の期比で四割弱増え、三期連続最高益と業績も好調だ。
ただ、県内での貸出金シェアは約一三％。メガバンクや近隣県の金融機関の進出が続き、埼玉県は「オーバーバンキング」（埼玉りそな銀行の利根忠博社長）。今後をにらみ、群馬県への多店舗展開の布石を打ったとの見方も強い。
同行は「埼玉県を地盤とする路線に全く変わりはない」と群馬への本格進出は否定する。それでも「事実上の路線転換ではないのか」（さいたま市のサービス業社長）などと埼玉県内の企業には戸惑いも広がる。
背景には、埼玉県内での店舗網の整備が完全とは言い難いことがある。さいたま市に次いで三番目に事業所数が多い八潮市もその一つ。つくばエクスプレス（ＴＸ）の駅が開業。企業の集積に期待が集まるが、店舗設置の予定はなく「優先順位が違う。理解に苦しむ」（八潮市内の建設会社社長）と不満の声がある。
窓口閉店時間の二時間延長やセキュリティー対策などではライバルの埼玉りそな銀行が一歩リード。「県民の銀行」を看板に掲げる以上、武蔵野銀行は県民への利用者サービスの充実を怠れば県内顧客の不満が強まりかねない。県内重視を継続するか、県外へ一挙に打って出るか。今後の武蔵野銀行の動きに注目が集まりそうだ。
（さいたま支局 大西智也）
【図・写真】群馬県初の拠点が入居するビル（太田市）
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。