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日本の食料自給率40%
時代は地産地消を求めてる
http://www.bund.org/opinion/20051125-1.htm
地球温暖化の進行やオイルピークの顕在化など、問題は山積みなのに環境政策・資源エネルギー政策は遅々として進んでいない。その原因の一つは、私たちの生活がどれほど環境を破壊し、エネルギーを浪費しているかが、普段の生活の中ではなかなか実感できないことにある。ヨーロッパでは、エコロジカル・フットプリントやフード・マイレージなどの環境指標が使われている。
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米国いいなりで崩壊した日本農業
新田真治
最近、フード・マイレージ(food-mileage)という言葉を耳にしたことがあると思う。フード・マイレージとは、1994年にイギリスの消費運動家であるティム・ラング氏が提唱した。「人間はなるべく近くで収穫された食料を食べた方がよい。遠くで取れたものに頼れば輸送にかかわる燃料やCO2の排出量が多くなり環境により負荷を与える」という考え方である。計算方法は輸入相手国別に輸入数量をトン数で集計し、それに相手国からの距離を掛けたものだ。
フード・マイレージという考え方
例えば、1トンのものを1キロメートル運ぶと1トン・キロメートルとなる。2000年の日本のフード・マイレージは約5000億トン・キロメートルになり、アメリカの約3・7倍で世界第一位だ。国民一人当たりにすると約4000トン・キロメートルで、アメリカの約8倍になる。これは、今の日本が食料輸入大国であることを如実に示す数字だ。農作物の輸送という視点からみれば日本は環境に多大な負荷を与えているのだ。
食料自給率でみてみよう。2002年の段階では、カロリー自給率でみると食料自給率は40%しかない。穀物自給率はさらに低くなんと28%だ。食料自給率40%という数字は、先進30カ国のなかで29位だ。30位は、国土の80%が火山性山地のアイスランドである。それに対して日本は、緑豊かな国土を持つ。江戸時代には完全食料自給国であったことを考えると、現代日本の異常さがきわだってくる。
穀物自給率28%というのは、人口1億人以上の国のなかでは最下位だ。1960年時点でも、日本のカロリー自給率は79%だった。それが今や40%とほぼ半減した。どうしてこんなに減ってしまったのか。
行動派農民作家である山下惣一さんは『身土不二の探求』のなかで、次のような農業改良委員の言葉を紹介している。「百姓がなぜ貧しいかわかるか? もうからないものまで一緒に作っているから貧しいんだ。これからはもうかる作物だけを選択して拡大していかなければダメだ」「もうかる作物だけを選択して拡大する」。まさにこうした発想に基づいて1961年に制定されたのが「農業基本法」だ。高度経済成長期の日本は、対外的に儲かる工業製品の輸出に特化し、工業製品の主要輸出市場であるアメリカの要求に従い「儲からない」農産物については米国から輸入するという道を選択したのだ。日本農業は米国からの輸入農産物と競合しないものだけを生産するようになったのだ。
よみがえれ練馬大根
山下さんは、この時点で日本は食料の自給路線と政策を捨てたのだと批判している。しかも1980年代半ば以降、牛肉とオレンジなど米国から激しい輸入制限撤廃を求められ、輸入自由化品目を増やさざるを得なくなった。ところが当時ヨーロッパ諸国は、日本とは逆に自給率を上げていたのだ。ヨーロッパ諸国も第二次大戦直後は戦争による荒廃で深刻な食糧難となり、米国からの食料輸入に頼らなければならなかった。その後、農業振興につとめ、フランスは農産物輸出国へと復帰し、工業国ドイツの食料自給率も今や90%を超えている。
かつては日本にもフード・マイレージと同じような考え方があった。「地産地消」「身土不二」(しんどふじ)といった、地域で生産されたものを地域で消費しようという考え方だ。
身近な所でも、私が住んでいる東京の練馬区は 今でも都市農業が行われているが、練馬の野菜といえば練馬大根が有名で、江戸時代から作られていた。しかし1950年代からどんどん衰退してしまい、現在ではほとんど作られなくなってしまった。
最近になって、練馬区や地元農家は、練馬大根に象徴される伝統的な野菜作りを見直し、もう一度復活させる試みにチャレンジしている。私は農家から畑を借りて野菜を作っているが、練馬大根も作っている。現在はほとんど作られていない麦作を復活させる動きも始まっている。うどんやパスタなどに加工し地域活性化に役立てようというのだ。
もちろん地産地消といっても、地元でとれる農産物だけで生活するのには無理がある。練馬大根だけでなく、地元ではとれない魚や肉も必要だ。だが、日本のフード・マイレージは世界で一番高い。それが他国の環境に大きな負荷を与えている。少しでも食料自給率を高め、安心して食べられる食材をもっと提供できるよう日本の農業政策は転換される必要があるのだ。
(エコ・アクション21)
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世界中が米国人並に生活するには地球が5・3個も必要
天野 雀
地球の環境収容力をオーバー
人間の経済活動は拡大し過ぎてしまったと言われるが、では実際「どれぐらい」超えてしまったのか。それを具体的な数値で表わすのがエコロジカル・フットプリント(Ecological Footprint)だ。
エコロジカル・フットプリントは、1990年、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学のマティース・ワケナゲルが博士論文の中で初めて提唱した。国や地域あるいは家庭で消費する資源の量を、平均的な生産力をもつ「土地の面積」に換算して表示する。
ある国が穀物を消費することによるフットプリントは、その生産に必要な耕作地面積として表される。魚介類の消費の場合は漁場の面積(海水面の面積)、エネルギー源として石油などを燃焼させたフットプリントは、排出二酸化炭素の吸収に必要な森林面積として算出される。水力発電のフットプリントは、ダムや貯水池の占有面積で表す。エコロジカル・フットプリントとは、そのエリアの人々が生産・消費活動によって「自然環境を踏みつけている足跡(Footprint)」のことなのだ。
算出した表面積をエリア内の人口で割り、1人あたりのエコロジカル・フットプリント(ヘクタール/人)を指標化する。これによってそのエリアが、適正規模(環境収容力)をどれくらい超えた経済活動をしているか、一目でわかる。
ただし、複雑な現代社会において、ある地域のエコロジカル・フットプリントを正確に算出するのは難しい。指標(物事を判断したり評価したりするための目じるしとなるもの)になる程度の大まかな数値を概算するだけである。
エコロジカル・フットプリントは、人間が自然環境に与える影響(生態学的赤字)をどれくらい減らすべきかの指標にもなる。国連や各国・各地の自治体による環境調査や政策立案、ワールドウォッチ研究所など国際的なNGO・NPOで幅広く活用されている。今年発表された『成長の限界』の続々編『成長の限界―人類の選択』でも、エコロジカル・フットプリントは重要な環境指標として紹介されている。
必要な土地面積に換算する
算出されたエコロジカル・フットプリントがその地域の「環境収容力」を超えている時、その地域の人々の生活様式は持続可能性がないと判断できる。「環境収容力」とは生態学の用語で「ある特定の生息地が永続的に養うことのできる、ある特定の種の個体数」を表す言葉だ。
土地の再生可能資源の範囲内で養える生物の数は限られている。サバンナで草食動物の数が多すぎて、植物を食べるスピードが植物の成長よりも速ければ、いずれ草食動物は食糧不足に陥ってしまう。草食動物の数が減ると、それを餌にする肉食動物も食糧不足になる。サバンナの動物たちは絶滅の危機に瀕するのだ。
人間の経済生活にも同じことが言える。地球の環境収容力を上回るスピードで資源を浪費し、廃棄物を排出「オーバーシュート(行き過ぎ)」し続ければ人類も限界に直面する以外ない。エコロジカル・フットプリントを使うと、私たちの生活が、すでにどのくらい地球の環境収容力を超えているのか、具体的に知ることができるのだ。
WWF(世界自然保護基金)発表の『生きている地球レポートLiving Planet Report, LPR』2004年版は、現在の人類が地球の環境収容力の範囲内で活動するための平均エコロジカル・フットプリント(バイオキャパシティー)は、1・8ヘクタール/人と算出している。ところが実際の世界人口の平均エコロジカル・フットプリントは2・2ヘクタール/人だ。WWFの同レポートによると、すでに人類の生産活動は1980年代後半に地球の環境収容能力を超え、2001年の時点では21%も超過してているのだ。
日本人一人当たりのエコロジカル・フットプリントは4・3ヘクタール/人。バイオキャパシティーでの世界平均(1・8ヘクタール/人)のおよそ2・4倍に相当する。つまり世界中の人々が日本人並みに生活するようになったら、地球が2・4個必要となるのだ。アメリカ人のフットプリントはさらに大きくて9・5ヘクタール/人。世界がアメリカ人並みに生活するようになったら、地球は5・3個も必要なのだ。
すでに今の日本人や米国人の生活のあり方は、地球一個分をはるかに超えている。そのしわ寄せは他者へと向かわざるを得ない。世界平均のフットプリントが2・2ヘクタール/人なのに、日本4・3ヘクタール/人、米国9・5ヘクタール/人ということは、日本や米国は自国の生産物だけではなく、世界中から農作物や、海洋資源、あるいは石油を輸入して消費していることを表す。他国の環境に負荷をかけることによってアメリカン・ウェイ・オブ・ライフは維持されているのだ。
世界人口の20%の人々の消費が、個人消費支出の86%を占め、逆にもっとも貧しい20%の人々の支出は、わずか1・3%だ。アフリカ諸国など「南の国々」の貧困は、限られた自然の富の奪い合いの結果、生み出されている。
すでに地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の毎年の排出量は、地球の吸収力を上回っている。貧しい国々での人口爆発も続いている。2005年現在、64億6000万人と推計され、2050年には93億人に達する。年間約8000万人が地球上に新たに誕生する。これだけの人口を養うだけの資源もスペース(土地面積)も、もはや地球には存在しないのだ。
このままではサバンナの動物たちのように、人類もまた絶滅していく以外ないのだ。
(おおさかエコムーブ)
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自分のエコロジカル・フットプリントを試算してみる
本紙編集部
エコロジカル・フットプリントは、地球大の指標としてだけでなく、もっとローカルな指標としても使うことができる。
例えば、イギリス・ウェールズの首都カーディフ市では、エコロジカル・フットプリントの比較から、市内の小中高等学校の給食用の材料を、季節はずれの食材を使用した加工食品から有機栽培の旬の食材に置き換え、牛乳もすべて有機牛乳へと変更した。
アメリカ・サンタモニカ市は、1990年から2000年の間に、エコロジカル・フットプリントを5・7%縮小。西オーストラリア州政府は、「州持続可能性戦略」のなかで、「2020年までに資源効率を4倍にし(ファクター4)、エコロジカル・フットプリントを2分の1に削減する」という目標を明記している。
世界で最もエコロジカル・フットプリントの研究が進んでいる英国では、100以上の専門の調査研究が行われている。その中で最も規模の大きい研究が、英国政府が進めている「エコ・バジェット・プロジェクト」だ。イギリス国内のマテリアル・フロー(物質の流れ)分析とマテリアル・バランス(物質のバランス)分析をもとに、政策シナリオごとのフットプリントを容易に計算できるソフトが開発されている。イギリスでは、2002年にウェールズ議会政府が、世界で初めて政府としてエコロジカル・フットプリントを持続可能性指標の一つとして正式採用している。
イギリスでは、1997年に家庭内のエコロジカル・フットプリントを簡単に計算できるコンピュータ・プログラム「エコカル」が開発され、ネットで公開されている。英語のサイトだが誰でもアクセスできる(http://www.myfootprint.org/)。
企業の商品タグに、フットプリントを表示させるのは非常に有効だ。そうなれば、エコロジカル・フットプリントは、私たち一人一人に「環境負荷の大きい商品を買うのか、負荷の小さい商品を買うのか」を日常的に自覚させる。
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(2005年11月25日発行 『SENKI』 1196号4面から)
http://www.bund.org/opinion/20051125-1.htm