★阿修羅♪ > 国家破産43 > 402.html
 ★阿修羅♪
ドラッカー氏を悼む――日本経済研究センター会長小島明氏    【日本経済新聞】 
http://www.asyura2.com/0510/hasan43/msg/402.html
投稿者 hou 日時 2005 年 11 月 13 日 12:21:21: HWYlsG4gs5FRk
 


 十一日死去した米経営学者ピーター・F・ドラッカー氏は驚きであり、感動である。時代と社会の洞察力は最後まで鋭かった。新鮮な視点と深い洞察力にあふれる多くの著作には共通点がある。

それは、経済、社会の潮流を抽象的な数字ではなく「人間」を通して見続けたことである。ある問題で「エコノミストとしてどう思うか」と問いかけ、ひどくしかられたことがある。「私をエコノミストというのは誤解もはなはだしい。エコノミストは数字ばかり見るが、私は数字より先に人を見る」と。

 一九七九年にカリフォルニアの自宅を訪ねた。七〇年代半ばに著した高齢社会への警鐘の書「見えざる革命」を読んだのがきっかけだった。だが、出版当初、この書は不評で、売れもしなかったという。当時、米国は圧倒的に若者社会だった。ベストセラーは「緑色(若者)革命」だった。しかし、二十余年、戦後ベビーブーマーたちは「グレー」になり、同書が突然読まれだした。

 八十歳のときの著作「新しい現実」は、人口動態分析をもとにしてソ連の崩壊を洞察した。日本の人口問題についても昔から観察を続けていた。日本は高齢化に伴い年金問題などで大騒ぎしているが、氏は十数年も前から「人口変化の影響を最も早く、最も強く受けるのは日本だ。世界でもっとも長寿の日本が、最も早い定年制を敷いていることが最大の皮肉である」と警告していた。

 氏をエコノミストと見るのは誤解であるが、ハウツー経営学者とみるのはいっそうひどい誤解である。彼が三十歳で出版(脱稿は二十六歳のとき)した処女作「経済人の終わり」は、いまだに世界で読まれ続けている。ナチズムへの強烈な批判の書であり、出版に数年を要したのは、ヒトラーが政権をとったなかで、出版社が尻込みしたためとみられる。

 日本とのかかわりは、二十五歳の時に接した日本画への感動からだという。欧州大陸が狂気のナチズムに抵抗するすべもなく蹂躙(じゅうりん)されていくのを目の当たりにした氏は日本画を介して「アイデンティティーも失わず、根本的な改革を行った明治維新」を発見し感動する。

 「明治維新は人類史上例のない偉業であり、この明治維新への探求が、私のライフワークになったもの、すなわち社会のきずなとしての組織体への関心へとつながった。したがって、日本は私の恩人だ」と言っていた。

 その日本が「失われた十年」で悲観主義にとらわれているときには「日本は明治維新、さらに第二次大戦後の復興・成長と、二つの奇跡を抜本的な構造改革によって達成した。そうした社会の資質、柔軟性に日本人はもっと自信を持っていいし、もってほしい」というのが氏の恩人・日本へのメッセージだった。

 いわば“押しかけ弟子”として、二十世紀有数の思索家ドラッカーの知と志、それと温かさに感謝をこめ、冥福を祈りたい。

 次へ  前へ

  拍手はせず、拍手一覧を見る

▲このページのTOPへ       HOME > 国家破産43掲示板



  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。