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11月11日(ブルームバーグ):内閣府が11日発表した四半期別国民所得統計速報によると、05年7-9月期の国内総生産(GDP、季節調整値)は物価変動の影響を除いた実質で前期比0.4%増、年率換算でプラス1.7%成長となった。4−6月期の0.8%増から伸びが鈍化し、2四半期連続の減速となったものの、4期連続のプラス成長。内需の柱である個人消費、設備投資がプラスを維持した一方、住宅や公共投資も増加に転じ、景気が内需主導の緩やかな回復基調にあることを示した。
成長率の減速は、前2四半期に高い伸びとなった個人消費、設備投資が反動もあって伸びが鈍化したことが影響。また、輸出が伸びた一方で、輸入が高い伸びとなり、外需も成長率の押し下げに働いた。
ただ、成長率は事前のブルームバーグ調査(前期比0.3%増、年率換算プラス 1.1%成長)を上回り、個人消費、設備投資も事前予想(消費:前期比横ばい、設備投資:0.1%減)より強めだったことから、前2四半期の反動としては鈍化も小幅にとどまり、底堅さを示した。
与謝野馨経済財政政策・金融担当相は11日午前の閣議後の記者会見で、「景気が緩やかに回復していることを裏付ける」と述べ、回復は「企業部門から家計部門へ波及しており、民需中心の緩やかな回復が見られる」と指摘した。
野村証券金融経済研究所の木内登英シニアエコノミストは、年率1.7%成長は日本の潜在成長率より高く、健闘した」と評価。「設備投資、消費とも予想を上回り、住宅も良くこれからポテンシャルが出てくる。第4四半期には内需が盛り返し、成長も2%台に戻るとの展望が持てる」との見方を示した。
バークレイズ・キャピタル証券の会田卓司チーフエコノミストは、「前2四半期の高い成長から減速したように見えるが、その高成長の反動は小さく、堅調な景気拡大が続いていると判断可能。内需が成長を支える姿がより一段と鮮明となった」と指摘。また、「輸出が2期連続で3%程度の増加となり、政府・日銀が8月に示した踊り場脱却宣言が正しかった証拠となった」としている。
今回の発表で一部過去の数値も改定され、1−3月期の実質GDPは前期比 1.5%増、年率6.3%成長となった。4−6月は前期比0.8%増、年率3.3%成長で従来通り。
東京株式市場ではGDPが予想を上回ったことを受けて、日経平均株価は 一時取引時間中の年初来高値(1万4136円16銭)を更新した。
消費、設備投資は伸び鈍化:「基調は堅調」
個人消費が実質で前期比0.3%増と、前期4−6月(同0.7%増)から減速したほか、民需のもうひとつの柱である設備投資が同0.7%増と前期(同3.4%増)から伸びが鈍化した。消費、設備投資は年前半の高成長の反動、調整によるところが大きく、内閣府では消費、設備投資とも基調としては堅調に推移していると説明した。
同府によると、消費は薄型テレビ、家具が伸びたほか、愛知万博開催もありレクリエーションが好調だった。また、このところの個人投資家による株式取引の活発化で金融手数料も伸びたという。一方で、前期に伸びた自動車が反動で若干減少した。設備投資は、電気通信機器、各種機械が堅調だったのに対し、ビル、工場など建設関係は若干弱含んだという。
一方で、住宅投資は同1.5%増と3四半期ぶりにプラスとなった。同府では、借家、分譲の需要が増加し、住宅は堅調だと説明。また、公共投資(公的固定資本形成)が災害復旧事業もあり同1.0%増と6四半期ぶりにプラスとなった。
輸出入とも高い伸び
輸出は中国向けが持ち直し同2.7%増加。一方で、輸入も同3.9%増加し、外需の成長率への寄与度はマイナス0.1%となった。内需の寄与度はプラス0.5%だった。
内閣府によると、輸出は電気通信機器、金融手数料、仲介貿易手数料などが伸び、輸入は電気通信機器、原油、飛行機などが伸びた。内需が好調なことも輸入増につながったとみられる。
デフレーター下げ幅拡大
一般的な物価を示すGDPデフレーターは前年同期比1.1%下落と、前期の 0.9%下落(改定値)から下げ幅が拡大した。円安、原油高で輸入物価が上昇したが、価格転嫁が進んでいないことが影響した。下落は30期連続。より実感に近い名目GDPは前期比0.2%増、年率プラス0.7%成長となった。
デフレーターの下げ幅拡大について会田氏は、「原油価格高騰、円安による輸入物価上昇の国内価格への転嫁が遅れていることや、生鮮食品価格の下落を反映しており、デフレの悪化ではないと考える」と指摘。今後は、「国内価格への転嫁が徐々に進むことや、賃金上昇を背景に値上げがより容易な環境となるとみられ、GDPデフレーターの下げ幅も徐々に縮小していく」とみる。
与謝野経財相は、下げ幅が拡大した要因などを分析する必要があるとしたうえで、「トレンドから大幅に外れたとは思っていない」と述べ、デフレ収束の方向に変化はないとの見方を示した。
先行き:回復の「持続性」に注目
今回のGDP統計で、内需主導による緩やかな回復が確認されたことで、 2002年1月を谷とした現在の景気拡大が戦後3番目の長さとなる可能性が高まった。現在の景気拡大局面は、9月で44カ月となり、1993年10月を谷とした景気拡大期(第12循環、97年5月に山)の43カ月を超え、戦後3番目の長さとなる。
今後の注目点は、回復の持続性。民間エコノミストの間では、今後も緩やかな改善が続くとの見方が多い。
第一生命経済研究所の飯塚尚己・主席エコノミストは、「05年度下期に日本経済が失速するリスクは極めて小さくなっているといって良い」と指摘し、05年度の実質経済成長率予想をこれまでの2.2%から2.6%程度に上方修正した。06年度については、従来予想の1.8%で据え置く予定という。06年度を展望するうえでは、設備投資回復の持続性、増税に対する家計の耐久度、米国の金融政策の先行きの3点に注意する必要があるとしている。
大和総研の牧野潤一シニアエコノミストは、「消費が巡行速度に戻っているため、今後GDPの加速はないだろう。ただ、全体として景気の方向感は今四半期のように緩やかに上向きと思われる」とみる。同氏は現時点で、05年度実質成長率は2.7%を予想する。
政府の05年度実質成長見通しは1.6%。内閣府の試算では、残る10−12月期、06年1−3月期にそれぞれ前期比1.1%減少しても見通しの達成は可能。また、仮に残り2四半期がゼロ成長となっても、05年度は2.4%成長となる。
与謝野経財相は、よほど悪い条件が重ならない限り政府の見通しを若干上回るのではないか、と指摘。安倍晋三官房長官は11日午前の閣議後の記者会見で、「まさにわれわれの見通し通りになっている」と強調した。
10-12月期について、みずほ総合研究所の武田淳シニアエコノミストは、個人消費、設備投資といった民間最終需要の拡大により、プラス成長を維持するとみる。また日本経済はデフレ解消に向けた動きを続けると予想する。飯塚氏は、7- 9月と同様に、潜在成長率(1.5%程度)と同じくらいの伸びになるとみる。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、現段階で10-12月は年率2%台半ばの成長率を見込む。
JPモルガン証券では、10-12月期以降は、輸出に持ち直しの兆しが見えることから、内需と輸出の両輪がけん引する形で、年率2%強の成長が可能とみる。懸念材料は海外景気としたものの、米国景気も予想外に堅調に推移しており、当面は心配ないとの見方を示す。
リスクも
一方で、原油高が企業収益や家計に与える影響、増税議論の高まり、米国や中国など海外経済の動向といったリスク要因もある。
また牧野氏は、「IT(情報技術)、機械投資など景気の循環サイクルを形成する部分が成熟してきていることに注意が必要」と指摘する。同氏によると、米国IT需要がITバブル期に並ぶ水準にあり、来年にはストック調整の可能性もあるほか、国内設備投資も機械投資が対GDP比で高度成長期並みに高まっているという。
記事に関する記者への問い合わせ先:
東京 青柳仁美 Hitomi Aoyagi haoyagi@bloomberg.net
更新日時 : 2005/11/11 13:24 JST
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=aSNWO5.uLmlc&refer=jp_news_index